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【英国自動車産業が危機】イギリスの車両生産、70年ぶりの最低水準に転落。その背景と今後の見通しとは?

アストンマーティン

| イギリスといえば自動車業界、そして自動車史においても「もっとも重要な国のひとつ」ではあるが |

今の状況は「自分たちでは解決できない外的要素」が多すぎる

イギリスというと、ミニやロータス、アストンマーティン、ロールス・ロイスにベントレー、ジャガーにランドローバーなど世界に誇る自動車ブランドを擁する国ではありますが、2024年4月、なんとイギリスの自動車生産台数が70年ぶりの最低水準を記録したことが明らかに。

これは、1952年以来の低水準となり、パンデミック中の一部ロックダウン月を除けば最悪の数字となるそうで、英業界団体SMMT(英国自動車製造販売協会)によると、4月の生産台数はわずか59,203台にとどまった、とのこと。

なぜここまで落ち込んだ?主な原因は3つ

英国の自動車生産がここまで落ち込んだ背景には、以下の複数の要因が重なっています。

① 遅いイースター休暇

2025年のイースター(復活祭)は4月に集中し、多くの生産工場が長期休暇に入ったことで生産日数が大幅に減少。

② モデルチェンジによる生産ライン停止

各メーカーが新型モデル導入のため生産ラインを一時停止していたことも影響。

③ 米国向け関税の不確実性

アメリカ向けの自動車輸出には最大10%の関税が最大10万台まで課されており、これがメーカーの戦略を迷わせているとの指摘もあります(これまで通りに生産していたのでは「在庫過剰」となる可能性がある)。

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数字で見る英国自動車生産「落ち込み」の実態

  • 総生産台数:59,203台(前年比▲15.8%)
  • 乗用車生産:56,534台(▲8.6%)
  • 商用車生産:2,669台(▲68.6%)

特に商用車の減少が顕著で、工場閉鎖とコロナ後の需要減少(正常化=需要が落ち着いた)が主因とされています。

輸出先の変化:ヨーロッパ減、中国・トルコ

関税不安があるとはいえ、英国の自動車主要輸出先は依然として欧州大陸で、それを考慮するならば、上で挙げた「関税」の影響はさほど大きくはない可能性があり、根本的に欧州での需要が減少している可能性も。

反面、アジア新興国向けの輸出増加が明るい兆しとされており、今後欧州市場の落ち込みをどこまでこれら新興国でカバーできるかがカギとなりそうですね。

  • EU向け輸出:▲19.1%(輸出全体の過半数を占める)
  • アメリカ向け輸出:▲2.7%
  • 中国向け輸出:+44%
  • トルコ(トゥルキエ)向け輸出:+31.2%
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🗣 SMMTの警鐘と提言:「長期的な産業戦略が必要」

そしてSMMT(英国自動車製造販売協会)のマイク・ハウズCEOは次のようにコメント。

「2009年の金融危機以来、最も厳しいスタートを切っている。国内需要の刺激と国際競争力の強化が急務だ」

さらに政府が米国、EU、インドとの貿易条件を改善したことには一定の評価を示しつつも、

「この好機を活かすには、包括的かつ革新的な産業戦略を通じた追加投資が不可欠だ」

と訴えています。

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まとめ:イギリス車産業の再生には“戦略と投資”がカギ

英国の自動車業界は構造転換と国際貿易の変化との狭間で苦境に立たされていますが、輸出先の多様化や国際交渉の進展が新たな希望の兆しでもあり、しかし今後どのように動いてゆくのかは気になるところ。

このまま状況が改善しなければ「倒産」「(中国企業への)身売り」となるブランドが出てくるかもしれませんが、自動車ファンとしてはその血統を絶やすことなく活動して欲しいと願わんばかりです。

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参照:Motor1

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JUN

2013年より当ブログを運営中。 国産スポーツカー、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ等を乗り継ぎ現在に至ります。 単なる情報の記載にとどまらず、なにかしら自分の意見を添え、加えてクルマにまつわる関連情報(保険やメンテナンスなど)を提供するなど「カーライフを豊かにする」情報発信を心がけています。 いくつかのカーメディアにも寄稿中。

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