| ただ、ボクはアストンマーティンは吉利汽車が買収したほうが長期的に見ていいんじゃないかと考えている |
そして吉利汽車が本気になったならば、なんとしてでもアストンマーティンを手に入れるだろう
さて、アストンマーティンを巡る動きが「穏やかではない」との報道。
これは自動車業界、そして金融筋両方から囁かれているもので、中国の吉利汽車がアストンマーティンを買収する計画を持っているのではないかという話、そしてそれを阻止すべく現在の最大株主であるローレンス・ストロール氏が株式を買い増ししているという内容です。
実際のところ、ローレンス・ストロール氏は、自身と自身が関係する投資グループであるユー・ツリー(Yew Tree)軽油にて、直近で最大で5000万ポンド(約80億5000万円)のアストンマーティン株の取得を行っており、現在のところ出資比率が28.29%に達していると報じられています。
ここでちょっと経緯をおさらい
ここでアストンマーティンとそれを取り巻く環境についておさらいしてみたいと思いますが、まずアストンマーティンは2019年に急速に業績が悪化し、その後出資者を求め、2020年1月に中国の吉利汽車へ「身売り」の話を持ちかけたと言われます。
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しかし前年末より、ローレンス・ストロール氏(投資家そして大富豪、さらに当時のレーシング・ポイントのオーナー)との話も進んでいたようで、2020年2月にはローレンス・ストロール氏の出資を受け入れ、事実上同氏が買収した形となり、これにあわせてローレンス・ストロール氏はアストンマーティンの会長に就任し、その後レーシング・ポイントをアストンマーティンF1へと改名することに。
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そして今度は(もともとアストンマーティンへと出資していた)メルセデス・ベンツがアストンマーティンへの出資比率を上げて関与を強め、これによってアストンマーティンは進行中であった自社開発のV6エンジンを捨て、メルセデスAMGからの供給による4リッターV8ツインターボを核とした(市販車)戦略にスイッチしたわけですね(同時にアストンマーティンのCEOもメルセデスAMGの元CEOへと置き換えられる)。
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この頃には期待のSUV「DBX」も発売され、なんとか持ち直すんじゃないかと思われたものの、ちょっと事態がややこしくなり始めたのは2022年10月あたりで、一旦交渉を打ち切ったはずの吉利汽車がアストンマーティン株を買い占めるという行動が明らかになっています。
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中国の吉利がアストンマーティンの株式を9.7%し4番目の株主に!おそらくこのまま株式を買い進めて経営権を取得するんじゃないかと予想
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なお、これだけで終わらないのがこの話であり、この吉利汽車の経営者である李書福氏は現在メルセデス・ベンツの筆頭株主であり、現在ボルボやロータスも傘下に収めます。
中国の自動車メーカーとしては珍しく、日米欧の自動車メーカーとの合弁を行わず、「買収」によって会社を大きくしていることが特徴として挙げられ、しかしメルセデス・ベンツに提携を持ちかけるも無下にあしらわれてしまい、それと気づかれぬようにあの手この手でメルセデス・ベンツの株式を買い集めて現在筆頭株主へと躍り出た人物です。
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まさかのまさか。中国・吉利汽車のオーナー、李書福氏がダイムラー筆頭株主に。一体何者?
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李書福氏はアストンマーティン買収を目論む?
そして現在に話は戻りますが、今回のローレンス・ストロール氏の追加出資はこの李書福氏のアストンマーティン買収を阻止するためだと言われていて、同氏率いる吉利汽車は現在アストンマーティンの株式を7.6%取得しており、しかし実際にはメルセデス・ベンツの株式取得時のように「それと知られない方法にて」もっと多くの株式を集めている可能性も否定できません。
そしてなんといっても李書福氏はメルセデス・ベンツの筆頭株主なので、現在メルセデス・ベンツが持っている「アストンマーティンの株式20%」に対してもなんらかの影響力を持つ可能性が高く、もしメルセデス・ベンツを味方につけるとしたら最低でも29.7%の議決権を持っていると考えることもでき、これはローレンス・ストロール氏の28.29%を上回るもの。
ちなみにですが、吉利汽車はアストンマーティンを買収したいと考えている可能性が非常に高く、かつてアストンマーティンが負債返済のために約6億5400万ポンドの株式を発行した際にも(吉利汽車が)出資を申し出ており、しかしローレンス・ストロール氏はこれを断っています。
これについて、同氏は「吉利汽車は、アストンマーティンを安く手に入れようとしている」と不快感をあらわにし、「吉利汽車は、正面玄関から入って正当な対価を支払うのではなく、裏口から入ってきて、安く会社を買おうという提案をしようとしたのです。これは偽装されたアプローチにほかならない」とも。
よって吉利汽車がここから敵対的買収を仕掛ける可能性がないとも言えず、とうぶんアストンマーティンから目を離すことができないかもしれません(ただ、ぼくは、アストンマーティンは吉利汽車に買収されたほうが発展するだろうと考えている)。
なお、ローレンス・ストロール氏も一歩も譲る気は無いようで、「投資家グループとしての立場から見て、我々はアストンマーティンが過小評価されており、最近のサプライチェーンの課題にもかかわらず、超高級高性能自動車事業における成長軌道を継続するための準備が整っているという確固たる信念を共有しています。私たちは、中長期的な事業の成功に自信を持っていますが、それは、受注残高の強さ、市場に投入される新製品のエキサイティングなポートフォリオ、そしてアストンマーティンの世界的なブランド認知度の高さによるものです」ともコメントしています。
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