| ボクはむしろ、吉利汽車がアストンマーティンを買収したほうがいいんじゃないかと考えている |
現在吉利汽車はボルボ、ロータス、ポールスター、Lynk&Co、Zeekr、LEVCを所有
さて、中国の吉利汽車の持株会社、ジーリー・ホールディング(Geely Holding Group)がアストンマーティンの株式を7.6%取得したと発表。
現時点でアストンマーティンからのコメントはありませんが、見たところでは(メルセデス・ベンツ株取得時のような)敵対的な株式買付ではなく、双方の合意によるものだと考えて良さそう。
現在アストンマーティンはカナダの投資家、ローレンス・ストロール(ランス・ストロールの父親)が18.3%を所有し、ついでサウジアラビア公共投資基金(PIF)が16.7%、メルセデス・ベンツが9.7%を所有していて、今回の吉利の株式取得によってアストンマーティンはさらなる資金を得ることができ、復活に向けてまた一歩進むことができるようになるわけですね。
アストンマーティンは過去に7回も倒産している
なお、アストンマーティンは過去に7回の倒産を喫しており、しかしその強力なブランドバリューのためにその都度出資者を得て不死鳥のごとく復活を果たしています。
そしてコロナ前までは調子よく物事が進んでいたように見えたものの、コロナ禍によって一気に経営状態が悪化してしまい、8度目の倒産の危機にさらされることになりますが、ここで手を差し伸べたのがローレンス・ストロールで、アストンマーティンへの出資を行うとともに事実上の支配権を握り、自身が所有していたレーシングポイントF1チームを「アストンマーティン フォーミュラ1」へと変更しています。
なお、これにあわせ、それまで提携を行っていたメルセデスAMGも出資比率を高めることになり、その結果アストンマーティンにおける「メルセデスAMG濃度」が濃くなり、アストン・マーティンが独自に開発していたV6ツインターボエンジンが(日の目を見る前に)廃止され、かわりにメルセデスAMGのV8エンジンが採用されることになった、という現状も。
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そして今回の吉利の出資によってさらなる協力者を得たということになりますが、現時点で吉利の目論むところは不明であり、しかしロータス、ボルボ(とポールスター)を買収し、スマートの株式の過半数を手中に収めて新しい展開を行っているところを見るに、ゆくゆくはアストンマーティンを参加に収めたいのだろう、と思われます。
ただ、「中国企業が」「伝統あるブランドを」「買収」というとネガティブなイメージがあるものの、おかげでロータスは自活できる道が拓けることになり、エレトレの発表に加え様々な未来に向けた展開も。
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なお、ボルボの躍進も知っての通りで、さらにはスマートも新コンセプトを採用したニューモデルを発表し、吉利傘下にあるブランドはいずれも飛躍する傾向にあるようですね。
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なお、現在中国では、現地生産を行う場合は、最大で二社の中国企業と提携することが必須となっていて(条件付きで緩和されている)、多くの中国の自動車メーカーが技術の移転・取得を目的として外国の自動車メーカー(GMやフォード、BMW、メルセデス・ベンツやトヨタなど)と提携していますが、吉利汽車はそういった提携を行わず、買収によって技術を取得し、それをグループ内の各ブランドに転用することで相互発展を図るという方針を貫いています。※利益を最大化しようとすると、最終的には合弁による「量」ではなく、ブランドの先鋭化による「質」に落ち着くが、吉利は最初からそれを見越していたようだ
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加えて、各ブランドの個性や歴史を尊重する傾向にあり、自身でもLynk&Coといったブランドを立ち上げるなど「ブランドの重要性」に着目している数少ない中国自動車メーカーのひとつであり、けして「自分の思い通りにしたい、自分が思ったクルマを作りたい」と思って自動車メーカーを買収しているわけではないもよう。
よって、仮に吉利汽車が最終的にアストンマーティンを買収したとしても、それはマイナス要因とならず、むしろ状況を好転させ、アストンマーティンは潤沢な資金を得て、永続的な発展を行うことになるだろうとも考えています。
吉利汽車はアストンマーティン買収に際してこう語る
そして今回の買収につき、吉利汽車側は、「私たちは、アストンマーティンへの出資を発表できることを嬉しく思っています。アストンマーティンが長期的かつ持続可能な成長と収益性の向上を達成するための戦略を実行し続ける中で、私たちはアストンマーティンと関わり、協力する潜在的な機会を探ることを楽しみにしています」とコメント。
ちなみにコロナ禍によってアストンマーティンが危機に陥り、8度目の倒産の可能性が示唆された際、吉利汽車はその買収に乗り出したと言われ、しかしその際には買収や出資が行われず、しかし「今になって」というのはちょっとナゾでもありますね。
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