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ポルシェGT部門のボス「ニュルのタイムはどうでもいい。問題は楽しいかどうか」

2017/04/28

ポルシェGT部門のボスによると「ニュルブルクリンクのラップタイムは気にしない」とのこと。
これは新型911GT3についてMTを復活させたことに関連しAutoGuideに語った内容ですが、興味深いコメントではありますね。
「多くの人はストップウォッチの針を気にするのではなく、ドライバーズカーを欲しがっている」との言ですが、これは今後のポルシェにおけるGT部門の路線を表すものかもしれません。

GT部門のボスが過去にどれだけ変わったのかは把握していませんが、しばらく前には「MTはなくさない。だってドーナツターンができないと面白くないだろ?」という発言が報道され、その後には「もはやMTに存在する理由がない」とも。
その発言のとおり実際に911GT3/GT3RSではPDKのみとなったわけですが、今回のフェイスリフトではMTが復活。

これは「シンプルでマニュアル・トランスミッション装備の」911Rが大ヒットしたことによる変化かもしれませんが、「かなり大きな変化」ではないか、と考えています。

というのもポルシェは御存知の通りレース活動を通じてその性能を向上させてきており、レースと市販車(とくにGT系は)切っても切れない関係。
よってGT系は「ストイックに速さを追求する」という至上命題があったように思われ、そこに「楽しいかどうか」は介在する余地がなかった、と思うのですね。

ただ、現在は電子制御の進歩やハードの進歩で「ほぼ誰にでも」速いタイムが安全に出せるようになってきており、加えてポルシェ内でも「ターボエンジン」の普及が進み、GT3/GT3RSの絶対的優位性が揺らぎつつあるのは間違いのないところ。
加えてライバルたちは「ミドシップ」というレイアウト的優位があり、かつシリンダー数も増やすことができるという環境にあるのに対し、911は「6気筒が限界」。

この状況でストイックに速さを追求するのは無理があるかもしれず(加えてGT3系は自然吸気エンジンなので排気量が大きくならないとパワーも大きく上がらない)、であれば「操る」という方向性に活路を見出すのはひとつの「生き残る道」かもしれないと思うのですね。
実際にレースカーの911Rは「ターボ+ミドシップ」に移行しており、これはすなわち「NA+RRの限界」を同時に意味するとも考えられます。

なお、現代において「運転を楽しむ」というのは一つの新しい方向性なのかもしれません。
かつては「スピード」がスポーツカーにおける大命題であり、そのために性能を向上させ、ドライバーもそれを操ろうとスキルを磨いてきたわけですね。
ですが上述のように「誰でも」ある程度速く走れるようになってきたので、今度は違う「何か」が求められているのではないかと考えるのです。

そのひとつのソリューションがフォード・フォーカスにはじめて搭載された「ドリフトモード」で、今ではメルセデスAMG、マクラーレン720Sにも装着。
今までは一部のスキルが高い人しか楽しめなかった「ドリフト」が身近なものになってきているということですが、こういった「スポーツカーの楽しみ方の多様性」は現代に象徴される事象の一つではないかとぼくは考えています。

たとえばアストンマーティンは数字だけ見るとけっこう「遅く」で、それはちょっと驚くほど。
0-100キロ加速だとランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテが2.9秒、フェラーリ488GTBが3.0秒、マクラーレン720Sが2.9秒、ポルシェ911ターボSが2.9秒、ホンダNSXが2.9秒。
対してアストンマーティンはヴァンキッシュSで3.5秒、最新モデルのDB11で3.9秒。
おいおいパワーの割に遅くないか?と思うのですが、実際に試乗してみてその疑問も氷解。

コントロールできないまでの速さではなくコントロールできる速さに収め、しかしアクセルを踏み込むと簡単にテールがスライドする設定となっており、文句なしに「楽しい」といえる設定。
「車を自分の支配下に置く」というのがこれほど重要だったのかと思い知らされることになった試乗でしたが、その意味でも「タイムより楽しさ」というポルシェGT部門の新路線には深く共感できる部分があるのです(といいつつもポルシェのGT部門は”最速”を目指すのは間違いないと思いますが)。

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