これほどすべてを高い要件で満たしているクルマもほかにない
さて、アウディA6アバントに試乗。
正確に言うならば、ランボルギーニ・ウラカンを12ヶ月点検に出した際に(ランボルギーニ大阪さんから)貸していただいた代車なので「試乗」とはちょっとニュアンスが異なることに。
ただ、そのぶん1週間ほど乗ることができたため、その印象をここで述べてみたいと思います。
アウディA6アバントってどんなクルマ?
現行のアウディA6アバント(C6)はセダンが2011年に登場し、翌2012年にワゴンボディの「アバント」が追加。
そしてA6アバントにはハイパフォーマンスモデルとして「RS6アバント」が存在しますが、こちらは605馬力を発生する超速ワゴンとしても知られます。
そして「A6アバント」ですが、こちらは190馬力の1.8TFSI(672万円)、252馬力の2.0TFSI quattro(725万円)、333馬力の3.0 TFSI quattro(935万円)とがラインナップ。
ボディサイズは4933ミリ、全幅1874ミリ、全高1455ミリというボディサイズを持ち、つまりはけっこう大きなクルマ。
登場時期は2011年ではあるものの、A6アバントは最新のアウディ各車に近いデザインを持っており、全く古臭さを感じさせないのは特筆すべき点。
アウディらしくライティングにはLEDがふんだんに使用されていて、そこが「最新モデルと同等の斬新さ」を感じさせるところかもしれません。
さっそくアウディA6アバントに乗ってみよう
ここでアウディA6アバントを走らせてみようと思いますが、比較的車高の高いクルマでもあり、乗降が非常に楽。
当然ですがスポーツカーのように低い位置まで腰を落とさなくてもシートに座ることができ、日常的に乗るにはもってこい。
なお、ドアを閉める時の音は気密性の高さ、そして立て付けの良さを感じさせるもの。
ドア開閉音はそのクルマのランクを示す一つの指標ですが、A6アバントはそのクラスにふさわしい、もしくはそれ以上の「音」を持っています(毎回この素晴らしい音を聞くことができるオーナーは幸せだと思う)。
メーターはフルデジタルではなく「アナログとメーターとのコンビ」。
これは最新のアウディが持つ「バーチャルコクピット」が登場する直前の世代ではありますが、センターに配置された大きなディスプレイ、白色LEDを使用した表示などが先進性を感じさせます。
このアウディA6アバントは「Sライン」装着車なのでシートはスポーツタイプ。
もちろん表皮は本革で、質感の高いステッチが入っていますね。
その他内装のパネルなども非常に質感の高い仕上がりを持っていて、このあたりは「さすがアウディ」。
エンジンのスタートはシフトレバー左側のスターターボタンを押して行いますが、始動時のサウンド、そして振動は最小限。
ここはアウディらしさを感じさせられる部分で、走る前からノイズ、バイブレーション、ハーシュネスをかなり抑え込んでいるんだろうな、と期待させてくれるところです。
そして実際に走り出すとその「期待」はいい意味で裏切られ、というのも想像した以上の快適性を持つため。
アウディはメルセデス・ベンツ、BMWとともにジャーマンスリーの一角を成しますが、ライバルに比較して「高品質」がその自慢であり、それは以前からアウディがライバルに勝つために取り組んできた部分。
「チリの小ささ」という見た目の品質はもちろん、ドライバビリティという体感上の品質の高さもアウディの特徴である、とぼくは考えています。
一般に快適性を向上させようとすると「フワフワ」した乗り心地になり、安定性やコーナリング時の安心感を欠くのが常で、しかし安定感を出そうとするとゴツゴツした乗り心地になることも。
そして静粛性を高めると「音や振動」がまったく感じられずに運転しているという間隔が希薄になり、しかしエンジン音や振動を車内に伝えるようにするとガサツな印象をドライバーに与える可能性もあって、このあたりは各社ともかなり苦労している部分なのかもしれません。
ですがアウディの場合は高い静粛性と快適性を持ちながらもエンジンの鼓動が感じられるセッティングを持ち、突き上げを感じさせない快適な足回りを持ちながらもカーブやレーンチェンジでは微塵たりとも不安を感じさせない、という特性を持っているわけですね。
なお、ぼくが思うのは、アウディの安定性はサスペンションのセッティングだけではなく、その4WDシステム「クワトロ」と連動しているのだろう、ということ。
というのも同じアウディのモデル(たとえばTT)でもFFとクワトロだと大きく乗り味が異なるためで、安定性を「足回りを固くすることではなく」駆動力の分配によって実現しているのだろう、と考えています。
現在はメルセデス・ベンツ、BMWともに上位モデルでは4WDを採用することが多くなっていますが、両社がアウディと異なるのは「後輪の駆動力を100%にできる」こと。
これによって「ドリフト」といった芸当ができるようになるのですが、一方でアウディは「同じクルマで、駆動力をそこまで変化させるべきではない」と語っており、つまり「後輪へ100%振り分け」というセッティングは行わないと発言しています。
これこそが「アウディの安定性は駆動力に(一部を)依存している」とぼくが考える部分ですが、これ(必ず4輪に駆動力を振り分けること)によってアウディは様々な異なる要素をバランスさせることができるようになったのだろう、とも思うのですね。
そしてぼくは「どんな条件であっても、最も安全に、最も快適に、最も楽しく」目的地にたどり着けるクルマはアウディをおいて他にないと考えていますが、A6はまさにそれを地でゆくクルマ。
乗り心地に優れ、しかし挙動が安定していて、静粛性に優れながらもエンジンの鼓動が伝わり、立て付けがよくきしみ音ひとつ建てない内装、ナーバスでないのにダイレクトなハンドリング、そしてきっちりと合ったパネルのチリ、先進的なライティングにインフォテイメントシステム。
これらは現代のアウディらしさを表すものばかりで、その意味においてA6は「最もアウディらしい」クルマなのかもしれません。