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アウディのデザイナー「今後はもう、怒った顔のクルマをデザインすることはないでしょう。路線を180度転換し、ソフトで柔らかく、フレンドリーになってゆきます」

アウディのデザイナー「今後はもう、怒った顔のクルマをデザインすることはないでしょう。路線を180度転換し、ソフトで柔らかく、フレンドリーになってゆきます」

| アウディのデザイナーは実のところ、アグレッシブでダイナミックなデザインが好きではなかったらしい |

しかしアウディらしさを捨てることで、アウディは新しい「アウディらしさ」を考えねばならない

さて、アウディのデザイナーであるマーク・リヒト氏が語ったところによると、「未来のアウディはよりソフトでフレンドリーになる」。

アウディというとシャープでエッジー、そして攻撃的なルックスを持つことで多くのファンを獲得しているものの、つまりそのデザイン路線が180度転換するということになりそうです。

さらに同氏は、今後自動運転(自律運転)化が進んでゆくと、インテリアデザインが(エクステリアデザインよりも)優先されるようになるだろうとも述べ、クルマのデザインに対する考え方が大きく変わるであろうことを示唆しています。

アウディRS3

自動運転、エレクトリック化はクルマのデザインプロセスを大きく変える

ちなみにフォード、そしてそのほかの自動車メーカーからも同様の声が聞かれ、「まずはキャビンをデザインし、それにあわせたエクステリアがデザインされるようになるだろう。つまり、デザインプロセスがひっくり返ることになるだろうね」とも。

なお、こういった「インテリアを先に考え、後に車体デザインを考えることができる」というのは、(多くの場合でスケートボード型シャシーに載っている)EVならでは、つまりガソリン車にはないデザイン的自由度の高さを持っているからだと考えられ、今後はガソリン車ではとうてい考えられないようなデザインが多数登場するのかもしれません。

そして、そういった「今までにない」クルマをデザインするには既成概念を捨て去る必要があり、もしかすると日米欧の自動車メーカーのデザイナーよりも、まだ自動車普及の歴史が浅い中国のデザイナーのほうが”既存の価値観にとらわれない”面白いクルマを作れるのかもしれません。

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今後、アウディのデザインは「スフィア」系に

話をアウディに戻すと、マーク・リヒト氏は「アクティブスフィア・コンセプトが良い例かもしれませんね。このクルマは、アグレッシブではなく、その逆だと思うんです。とてもソフトで、とても親しみやすく、とても・・・そうですね、エクステリアデザインにエッジが効いていないんです」。

なお、このアクティブスフィアは「スフィアシリーズの4番目」ではあるものの、スフィアシリーズ2番めであった「アーバンスフィア」もまったくアウディらしくないクルマであり、エッジを排除してグリルを小さく取り、ボディ表面はフラッシュサーフェスという、現代のアウディとは全く逆のデザインを持っています。

Audi-Grand-Sphere-Concept (11)

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さらにマーク・リヒト氏が言及したのは「親しみやすい外観を持つクルマは、そこから運動性能やスポーツ性を連想させないかもしれませんが、別の目的もあります。親しみやすいということは、車内で過ごす時間を増やし、これからのアウディ車のハイライトとなるであろう(社内エンターテイメントを中心とした)時間を楽しんでもらえる可能性が出てくるのです。同様の目的にて、一般的にクルマのデザインは、より親しみやすくなっていくでしょう。より柔らかく、より親しみやすくなるでしょうね」。

この20年間、アウディのデザインは、大胆なスタイリングや「アングリー」スタイルのフロントマスクなど、よりアグレッシブで大胆、かつ攻撃的なものへと変化していますが、ちょっと気になるのが「なぜアウディは急激に方向性を転換するのか」。

アウディ

アウディはこの問いに対する答えも用意しており、それは現在進行中のウクライナ戦争がその理由のひとつなのだそう。

アウディ本社のあるドイツでは、このウクライナ戦争の影響を様々な形で(企業だけではなく一般の人々までもが)受けており、その状況の中で「攻撃的な」デザインを採用することは難しく、より明るく柔らかい未来を人々が求めているからだとコメントしています。

そしてもう一つの理由は、上述の通り「電気自動車専用アーキテクチャ」の登場であり、ガソリン車のようにエンジンや排気系、トランスミッションの配置が「固定」されていない電気自動車において、”デザイナーがある意味で自由に、これまで見たこともないようなスタイルでクルマを作ることができるようになったから”だとも。

そして何より、マーク・リヒト氏は「正直なところ、私はこのアグレッシブなスタイリングが好きではありません。もっとたくさんのチャンスがあるはずです。だから、一般的なデザイナーは、このアグレッシブなデザインに目を向けないのだと思います。それが私の解釈です」とコメントしており、そろそろ別の可能性を探ってみたくなったということなのかもしれませんね。

Audi-Grand-Sphere-Concept (8)

アウディは2026年以降、ガソリンエンジンの開発を中止し、2033年までにガソリンエンジン搭載車の販売を停止すると発表していますが、これは逆に「多くのEVがその穴を埋めるために登場する」ということを意味しており、もう間もなく、より親しみやすいスタイリングをテーマにしたモデルの登場が期待できると考えて良さそう。

ただ、もちろんアウディの考え方も理解できるのですが、多くの自動車メーカーのデザインが「フレンドリーに」なってしまうとその差はどこで出せばいいのかという問題に行き当たり、それを考慮すると、アウディはシングルフレームグリルを捨てるべきではないのかもしれません(EV時代になっても、BMWはキドニーグリルを、レクサスはスピンドルグリルを維持してそのアイデンティティを保持することを考えるとなおさらだと思う)。

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参照:TopGear

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