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アウディも「理想から現実」へ。わずか3年で完全電動化計画を撤回、2035年以降も内燃エンジンを継続させる可能性を示す

2025/06/18

アウディ

| これで「EV完全移行」を目指す自動車メーカーはほぼ消滅 |

アウディ、EV専売の計画を再考──内燃エンジンは2035年以降も生き残る?

2025年に最後のガソリン車を発表、2026年からEV専売に移行予定──だったはずのアウディが、その計画を大幅に見直すことが明らかに。

2023年9月にアウディCEOに就任したゲルノート・デールナー氏が英Autocar誌に語った内容によると、内燃エンジン(ICE)搭載車の生産は「2035年、あるいはそれ以降」まで継続される可能性が高いとしており、これは文字通り「非常に大きな方針の転換」です。

2021年の電動化宣言からわずか3年で戦略転換

かつてアウディが掲げていた「完全電動化計画」はわずか3年という短い期間で終わりを告げ、これはもともと2021年6月、前CEOのマルクス・ドゥースマン氏が以下のように宣言していたもの。

  • 2025年:最後のICE(内燃機関)車を発表
  • 2026年:新型車はすべてEVに限定
  • 2033年:内燃エンジン車の生産を完全終了(※中国は例外)

しかし、現在ではその「終焉の年」は10年以上先送りされる可能性が出ています。

CEOの発言:「市場の動向次第で柔軟に対応」

そして今回、ゲルノート・デールナーCEOはこう語り、「完全電動化計画の撤回」はほか自動車メーカーと同様に「市場動向」に対応したものだということになりそうですね。

「私たちは、過去に伝えた終息時期を超えて内燃エンジン車の生産を延長することを決定しました。今後の市場動向に応じ、さらに7~10年は販売を続ける可能性があります。」

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EV販売の現状:成長はしているが他社に遅れ

参考までに、アウディのEV販売は好調ながらも、BMWの半分程度にとどまっているというのが現実で、つい先日発表された新型Q3については「完全電動モデルの追加は(今のところ)ない」としている状況からも「完全電動化から距離を置く」というアウディの姿勢が伝わってこようというもの(以前のアウディであれば、内燃機関バージョンのQ3を廃止し、完全電動モデルに切り替えていたであろう)。

  • 2025年第1四半期のアウディEV販売台数46,371台(前年比+30.1%)
  • BMWの同期間EV販売台数86,449台
  • メルセデス40,706台
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アウディはICE車のラインナップを拡充へ

そして直近のアウディではQ3のほか、おそらくは「計画外」であったと思われる内燃機関搭載車を発表しており、さらには電動化を見据えて導入すると発表した「新しい命名法則」ですら撤回しているため、今回の完全電動化撤回が”本気の決意”であることもわかりますね。

  • 新型A5 / A6 / Q3など、ICEを搭載するモデルが続々登場
  • S / RSなどの高性能グレードも継続
アウディ
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Image:Audi

EUの規制とその影響

EUは2035年以降、ガソリン・ディーゼル車の新車販売を禁止する方針を掲げていますが、アウディは2035年以降もEU外(南米・アジアなど)向けとしてICE車を継続して販売する可能性を想定しており、そしてこの「禁止」そのものが覆る(撤回される)可能性を視野に入れているのかもしれません。

この例に限らず、近年の自動車業界は「規制」に多くが左右され、そしてその規制自体もチョコチョコと変更されることが多いため、各自動車メーカーにとっては「(以前には重要視された)確固たる戦略」よりも、「どういった変化が起きようとも、柔軟に対応できる多様な選択肢の確保」がなによりも要求されるのかもしれません。

他社の戦略は?

ブランドICE終了計画
アウディ2035年以降も継続可能性あり(今回の発言)
メルセデス2030年のEV専売目標を撤回、ICE継続へ
BMW段階的なEV移行を採用、ICE終了時期は未定(最も柔軟な戦略)
ベントレーEV移行スケジュールを延期し、ハイブリッドに注力
ロータスEV移行スケジュールを延期し、ハイブリッドに注力
ポルシェEV移行スケジュールを延期し、ハイブリッドに注力
フェラーリEV第二弾の発表を延期
ランボルギーニEV発表スケジュールを1年延期

参考までに、BMWは当初から「顧客の選択肢を尊重する」という立場を崩さず、完全電動化への移行時期を明言せずにインフラの整備が進むまでの現実的なアプローチを取り続けていますが、そのほかの多くの自動車メーカーは方針を変更し「EVへのラインアップ移行を先送り」。

一方でロールス・ロイスは完全電動化への移行スケジュールに「変化なし」、ジャガーもまた「EVオンリーの車種構成へ移行する」という姿勢を崩しておらず、メーカーごとにその対応が異なるようですね。

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Image:Jaguar

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まとめ:アウディの「完全EV化」は一時停止中

  • 2033年にICE終了の予定 → 2035年以降に延期の可能性
  • ゲルノット・デールナーCEOは「柔軟性重視」と明言
  • 販売動向や各国の政策を見ながらケースバイケースの対応
  • 新型A5やQ3などのICE車は2030年代以降も継続
  • BMW・メルセデス同様に、アウディも理想から現実路線へシフト中

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参照:Autocar

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