|BMWはコンコルソ・デレガンツァで発表したモデルの多くを実際に市販している |
そしてBMWが上級マーケットを目指す今、こういった富裕層向けのモデルは大きな意味を持っている
さて、今週初めにBMWのチーフデザイナー、エイドリアン・ヴァン・ホーイドンク氏が予告していた新型コンセプトモデル「BMW コンセプト ツーリング クーペ(BMW Concept Touring Coupe)」がコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステにて正式発表。
これはZ3時代に設定されていたシューティングブレーク「Z3クーペ」の再来とも言えるもので、そしてBMWはこれまでコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステにて発表したクルマの多くを実際に発売しているため、このコンセプト ツーリング クーペについても市場投入される可能性が大きいのでは、と考えています。
BMW Z3クーペはこんなクルマだった
まず、Z3クーペ(もしくはそのMモデルであるMクーペ)は、もともとオープンモデルとして登場したZ3をクーペ化(というかシューティングブレーク化)したもので、しかしロングノーズ・ショートデッキという古典的かつ典型的なFRスポーツカーをそのままワゴン化したためにちょっと寸詰りなルックスに。
よってこのスタイルをして「走るスリッパ」「ピエロの靴(クラウン・シュー)」と呼ばれることになり、しかしBMW自身も当時「愛するか、さもなくば立ち去れ(Love it, or leave it)」というキャッチコピーを使用していたので、このクルマが万人受けしないであろうことは重々承知していたのだと思われます。
参考までに、BMWは現在採用するジャンボキドニーグリルについても「あえて好き嫌いが分かれ、むしろ嫌いな人のほうが7割以上」と自身で分析しており、しかしあえてこれを取り入れることで人々の注意を喚起し、さらに興味を惹くことを狙っているとコメントしていますが、これらを鑑みるに、同様の考え方は1990年代にはすでにBMW内部に存在していたということになりそうですね。
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そして実際のところ、はたしてこのZ3クーペそしてMクーペはほとんど売れず、しかし現代になってその希少性や先見性が評価されて中古市場は「非常に」高騰。
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さらには多くのアーティストがこれにインスパイアされ「Z4クーペ」のレンダリングを作成し公開するといった状況となっています。
そしてついにBMW内部に本家から「Z4のワゴンボディ」が登場
そして今回BMWが「本当に」公開したのがG29世代のZ4をベースにしたBMW コンセプト ツーリング クーペ。
ヴィラ・デステには世界中から高名なコレクターが集まり、そのためそこで公開・展示するクルマにはパフォーマンスのみならず高い芸術異性が求められることになるのですが、BMWはそういったコレクターの要求を満たすために新しいペイント「スパークリング・ラリオ」を開発。
これは塗料の中にガラスフレークを混入させることで(グレーとブラウンとの中間の)塗装に深みと輝きを与えることとなっています(この色味は、コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステの会場となるコモ湖にインスピレーションを得ている)。
このほか、専用デザインを持つキドニーグリル、マットゴールドが美しいグリルフレームはじめ、アクセントカラー、新解釈によって表現されるホフマイスターキンクなど見どころが非常に多いクルマに仕上がっています。
ホイールはフロント20、リア21インチという異径サイズですが、ホイールのデザインはアルピナを連想させ、もしかするとこのBMW コンセプト ツーリング クーペはアルピナから発売されることになるのかもしれません。
ちなみに現在アルピナはBMWに吸収されており、「BMWの会社規模では採算が取れないが、アルピナの規模であれば採算が取れる」ニッチな製品展開を行う部署としても機能していて、今後は「少量生産の高品質モデル」を専門的にリリースしてゆく可能性も考えられます。
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BMW コンセプト ツーリング クーペの内装は「時代を超えたラグジュアリー」
実際のところ、アルピナは「BMWとロールス・ロイスとの間を埋める」存在になるとも言われていますが、そのウワサの信憑性を高めるのがBMW コンセプト ツーリング クーペのインテリア。
内装のレザーはイタリアの名門、ポルトローナ・フラウ(フェラーリの内装などを手掛けている)が担当するもので、インテリア上部はダークブラウン、下半分はライトサドルブラウン(ダークブラウンは集中力を高め、ライトサドルブラウンは快適さと暖かさを表現しているのだそう)。
シートやアームレストには編み込みレザーストラップが用いられ、これはアウディTTに採用される「ベースボールミット・インテリア」を連想させ、しかしこちらはもっと繊細な仕上げを持つようですね。
そしてこれらラゲッジは(やはりフェラーリとの関係が深い)、モデナに本拠を置くスケドーニによってデザインされ、2つの大型ウィークエンダーバッグと小型のバッグ、そしてガーメントバッグにて構成されています。
ラゲッジスペース内にもレザーが貼られ、リアのカーゴスペースは「日常的な用途」ではなく「特別な用途」における使用を想定していることがわかりますね。
Z3クーペはけして成功したモデルではありませんでしたが、今回のBMW コンセプト ツーリング クーペは当時のZ3クーペとは異なるユーザーを想定しており、それはつまり「上流階級」。
そういった階級に属する人々の中には、「他の人が持っていない優雅なクーペやシューティングブレークに対し、高額の費用を支払ってもいい」と考える愛好家も少なくはないものと考えられ、BMWがそういった要望に答える可能性もゼロではない、と思います。
そしてなによりも、BMWがZ3クーペをまだ記憶の隅にでもとどめていたこと、そして少ないにもかかわらず確実に存在する要望に答える姿勢を見せたことは非常に嬉しいことだと考えています。
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