
Image:Bovensiepen
| 「元アルピナ」のチームは「ボーベンジーペン」として活動を継続 |
おそらくは今後も様々なモデルが登場するであろう
BMWファン、そしてラグジュアリースポーツカーを愛するエンスージアストにとって、2022年に発表された「BMWによるアルピナ(ALPINA)の買収」は大きなニュースであり、しかしここには自動車業界におけるひとつの「誤解」が存在します。
実はBMWが買収したのは「ALPINA」というブランドの商標使用権のみであり、ドイツ・ブローエにある開発拠点や、60年にわたり最高峰のBMWコンプリートカーを作り続けてきた創業者一族「ボーベンジーペン家」の会社そのものを買収したわけではないということで、ブランド名をBMWに譲渡した彼らは社名を「ボーベンジーペン(Bovensiepen)」へと変更し、自分たちの手で最高の自動車を作るという情熱をそのまま保ち続けています。
今回発表された「ボーベンジーペン 05 GT」は最新のBMW M5ツーリングをベースとし、かつて初代X5やMINIをデザインした伝説のデザイナー、フランク・ステファンソン氏を迎えて開発された究極のラグジュアリーワゴン。
ここでは、この「アルピナの魂を宿しながら、アルピナを名乗れない」至高の1台が持つ魅力とスペック、そして背景にある物語を見てみましょう。
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記事の要点
- 伝説の一族による新プロジェクト: BMWに商標を売却した「アルピナ(ALPINA)」の創業者一族(ボーベンジーペン家)がBMW M5ツーリングをベースにしたコンプリートカー「05 GT」を発表
- 名匠フランク・ステファンソン氏の参画: 初代BMW X5や現代のMINI、マクラーレンP1などを手がけた世界的デザイナーがM5の攻撃的な外観を気品あふれる大人のグランドツアラーへとリデザイン
- 驚異の790馬力ハイブリッド: 専用の吸気系チューン、アクラポヴィッチ製チタンマフラー、ECU書き換えにより、システム最高出力はノーマルを大幅に凌駕する790馬力、最大トルク1,100Nmを発生
- アルピナを名乗れない理由: 2022年の「BMWによるアルピナ買収」はブランド名のみ。職人集団であるブローエの拠点は一族の手元に残り、法的にアルピナの名を使えない中で「最高の”裏”アルピナ」として再誕

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「本物のアルピナ」の血統が紡ぐ、新たなグランドツアラーの形
ボーベンジーペン 05 GT最大のハイライトはその開発チームの豪華さにあり、それはアルピナの創業者である故ブルカルト・ボーベンジーペン氏の息子、アンドレアスとフロリアンの両氏が、66歳になった今もなお天才的な手腕を発揮するフランク・ステファンソン氏とタッグを組んだから。
フランク・ステファンソン氏はBMWグループでの実績だけでなく、フェラーリF430やマクラーレンのデザインテーマを確立したことでも知られており、自動車デザイン界の巨匠ともいうべき人物ではりますが、今回彼が手がけたエクステリアはノーマルのM5ツーリングが持つアグレッシブ(攻撃的)な印象を和らげ、かつてのアルピナB5ツーリングを彷彿とさせる、控えめでありながら強烈な気品を放つスタイリングへと変貌を遂げています。
フロントにはレーザーカットされたステンレススチール製のグリルが奢られ、リヤには上品に分割されたスポイラーが装着されるほか、足元には繊細な20スポーク(10本ツインデザイン)を持つ21インチ軽量鍛造ホイールが収まり、ピレリと共同開発した専用の「BOV」マーク付きタイヤが組み合わされることに。

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さらにアクラポヴィッチ(Akrapovič)製のチタン製クワッドエキゾーストシステムを搭載することでノーマル比で7.8kgの軽量化を達成したと説明され、欧州仕様で2,555kgという重量級のPHEVワゴンにおいて、この軽量化と排気効率の向上は大きな意味を持つものと思われます。
なお、この「20スポーク」、そしてフロントバンパー下部にブランド名を入れるという手法は「アルピナ」から継承されたものであり、往年のファンにとっては感涙のディティールかもしれませんね。
ボーベンジーペン 05 GT:車種概要
■ 贅を尽くしたインテリアと洗練された足回り
ドアを開けると標準のM5ツーリングのレイアウトを維持しつつ、アルピナの伝統であった「ラヴァリーナ(Lavalina)レザー」がセンターコンソールやダッシュボードに至るまでふんだんに使用され、これによって別次元の高級感が演出されているように思いますが、顧客はボディカラーだけでなく、インテリアのレザーやステッチの色を無限に近い選択肢からオーダーすることが可能なのだそう。
さらには走りの方向性もサーキット志向のM5とは異なり、ロングドライブを快適にこなす「ファインドライビング(Fine Driving)」をコンセプトとして掲げていて、アイバッハ(Eibach)製スプリングや専用のサポートベアリング、ストラットタワーバーを組み合わせることによりアダプティブダンパーをボーベンジーペン独自にチューニング。後席の乗員までもがファーストクラスの乗り心地を味わえる味付けとなっています。

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■ 「ボーベンジーペン 05 GT」主要諸元・スペック
- ベース車両: BMW M5ツーリング(G99型)
- パワートレイン: 4.4リッターV型8気筒ツインターボ + 電気モーター(PHEV)
- 最高出力: 790 hp(800 PS) [ベース車:717 hp]
- 最大トルク: 1,100 Nm [ベース車:1,000 Nm]
- トランスミッション: 8速Mステップトロニック(AT)
- 駆動方式: 4輪駆動(xDriveベース)
- 0-100km/h加速: 3.6秒未満
- 最高速度: 305 km/h(190 mph)
- 車両重量: 2,555 kg
- 欧州ベース価格: 198,900ユーロ(ドイツ国内、約3,350万円※1ユーロ168円換算)
■ 市場での位置付けと価格:量産モデルとは一線を画すプレミアム
ドイツ国内での価格は198,900ユーロからに設定され、ベースとなる標準のBMW M5ツーリングよりも51,700ユーロ(約870万円)高価というプライシング。
この価格差はフランク・ステファンソンによる専用デザイン&ボディキット、熟練の職人によるハンドメイドのレザーインテリア、そして欧州の厳しい環境規制(Euro 7)をクリアしつつも独自のソフト解析と吸気カスタムでベース車を73馬力も上回る790馬力を叩き出した妥協なきエンジニアリングに対する対価です。
なお、デリバリーは2026年第4四半期(10〜12月)からを予定しているといいますが、日本での販売体制などは現時点ではナゾのまま。
More tomorrow. Stay ready.#FineDriving #BornAndMadeInBuchloe pic.twitter.com/FOu44kepDi
— Bovensiepen Automobile (@BovensiepenGmbH) June 13, 2026
「元アルピナ」ボーベンジーペンの今後の戦略と一族の未来
① BMWが展開する「これからのALPINA」はどうなる?
商標を買い取ったBMWは、今後アルピナブランドをこれまでの「3シリーズや5シリーズベースの中核モデル」から、より上位のラグジュアリーセグメント(超高級車領域)へとシフトさせる計画です。
実際に次期型「7シリーズ」のフェイスリフトモデルをベースにした、V8エンジンおよびピュアEV(電気自動車)パワートレインを持つハイエンドな「BMW ALPINA」が開発中だといい、近いうちに披露されるというウワサも。
こういった流れを見るに、これまでファンが愛してきた「身近でスポーティな3/5シリーズのアルピナ」のポジションは空席になる可能性が高いと見られています。
② 空いた心の隙間を埋める「ボーベンジーペン」の役割
ここで今回の「ボーベンジーペン 05 GT」の価値が際立つこととなり、BMWが手を出さない(あるいは上のセグメントへ移行する)領域において、ブローエの職人たちと創業者一族が昔ながらの「手の届く、しかし至高の5シリーズ・カスタム」を継続して提供してくれるという事実は「古くからのアルピナファンにとっての救い」であり、彼らのブランドが形を変えて生き残り続けることの証明でもあるとも考えられます。
ちょっと気になるのは、今後のボーベンジーペンが、かつてのアルピナのようにBMWからホワイトボディやコンポーネントの供給を受けて車両の製造を自分たちで行うのか、あるいはBMWがそれを許さず、よってボーベンジーペンが「完成車を購入し、一旦分解して」この05 GTを製造するのかどうかということ。
さらにいえば、アルピナが保有していた「自動車メーカー」としての認可は、アルピナの「商標」に付随するのか、それともアルピナの車両を製造していた「工場」にとどまるのかもちょっとナゾ。
結論
いずれにせよ、「ボーベンジーペン 05 GT」は単なるM5ツーリングのカスタムカーではなく、それは、自動車の電動化や激変するブランドビジネスの荒波の中で、60年間培われた「本物の職人魂」が意地を見せた「美しき反逆の1台」です。
一部では「PHEVシステムをすべて取り払い、純粋なV8ツインターボだけで作られていれば、かつてのB5の完全なる後継車になれたのではないか」という意見が出ているものの(元アルピナのメンバーであれば不可能ではないだろう)、ボーベンジーペンのコンセプトは「サーキット」ではなく「ツーリング」であり、そして重厚なハイブリッドシステムを搭載した現代のモンスターワゴンをここまでエレガントに、そして乗り心地に優れたグランドツアラーへと調律し直す技術力は、さすが”元アルピナ”であるボーベンジーペンと言うよりほかありません。
法的な大人の事情で「アルピナ」という魔法の言葉は使えなくとも、このクルマから放たれるオーラは”ぼくらがよく知るあの赤と青のエンブレム”を掲げた名車たちのイメージそのもの。
真のラグジュアリーと走りの本質を知るコレクターたちにとって、2026年の冬にデリバリーが始まるこの05 GTは、”何物にも代えがたい特別な選択肢”となるに違いない、とも考えています。
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参照:Bovensiepen











