| そう考えれば964世代カレラRSの速さは異常 |
Sport Autoがニュルブルクリンクにて、最新の911である992型911カレラS、そして空冷時代の964型911カレラRSとでタイムの比較を行う動画を公開。
これはなかなかに面白い企画だと言え、両者ともニュルブルクリンク・スペシャリストであるクリスチャン・ゲッバート氏がドライブしています。
結論から言うと、911カレラS(992)は7:30,41、911カレラRS(964)のタイムは8:23,12となり、つまり53秒ほどの差がある、ということになりますね。
ポルシェのRSモデルはいつまで経っても色褪せない
ちなみに992の記録した7:30.41というのは、発表されたばかりの718ケイマンGT4(7:32.00)、アウディR8 V10 plus(7:30)と同等のタイムであり、正直「かなり速い」数字。
そのわずか53秒遅れにとどまった964は「さすが」としか言いようがなく、やはりポルシェの”RS”モデルはいつまで経っても色褪せない(だからこそ高い価値を誇る)ということがわかります。
ポルシェの「RS」はドイツ語でレン・シュポルト、英語だとレーシングスポーツとなりますが、「レーシング」と「スポーツ」が並ぶだけあって超絶スパルタンなクルマ。
1992年に登場した964世代の911カレラRSは、1989年に発売されるやいなやスポーツカーの常識をひっくり返してしまった日産R32 GT-Rへの(ポルシェからの)回答だとも言われています(GT-R対抗のためだけに発売したわけではないのですが)。
GT-Rがシーケンシャルツインターボエンジンやトルクスプリット4WDを搭載する「ハイテク」マシンであったのに対し、カレラRSは「重量を削り、ボディを補強し、足回りを固め、パワーアップを与えた」という、昔ながらのシンプルな手法を用いたことが特徴。
軽量化については後部座席の除去にはじまりエアコン、集中ドアロック、オーディオ、パワステを「レス」。
さらには内装パネルやシート、ボディパネルの一部、ホイールを軽量素材へと変更しています。
重量は1,450キロから1,330キロへ、そしてエンジン出力は250馬力から260馬力へ。
なお、ここで興味深いのは、当時のRSモデルは「パーツを取り外して軽くしていた」ためにパーツ代がかからず、よって通常も911カレラに比較して価格が安く販売されていたこと。
現在のRSモデルはベースに比較して大きく価格が上昇していますが、これは「多少のプレミアム」に加え、むしろGT系、RS系にしか装備されないデバイスやパーツが使用されているため。
つまり、空冷時代のRSモデルは「外す」であったのに対し、水冷時代、とくに最近のRS」モデルは「足す」という考え方が加わっていることが特徴です。
そして今回、911カレラRSが記録したタイム「8:23,12」は、2006年のボクスターS(987)が記録した8:23とほぼ同じ。
ただ、タイム的には先々代ボクスターSと変わらず、現行911カレラSの1分遅れといえど、そこに存在する「楽しさ」は格別のようで、今回運転を担当したクリスチャン・ゲッバート氏も964のほうが気に入ったようですね。
ちなみに964のトランスミッションは5速マニュアル、992は8速PDK。
もし964に6速マニュアルや8速PDKが搭載されていたならば、タイム差がもっと短縮されていたということは間違いなさそう。
なお、911カレラRSの足回りは異常に硬いと見え、動画で見る限りその衝撃は半端なく、問答無用でドライバーに襲いかかるようです。
反面、911カレラSは姿勢が安定しており、ピッチやロールも少なく、ドライバーに対する攻撃性もぐっと低い模様。
もしぼくが両者を運転したとなると、おそらく1分差どころか2分以上も差が開くんじゃないかと思えるほど911カレラRSの運転は困難を極めるように見え、そのぶん「クルマをコントロールする」楽しさが感じられるのかもしれません。
現代のスポーツカーにおいては、誰でも簡単に速く走れるようになった反面、「テクノロジーが楽しさを奪ってしまった」とも言われ、このあたりで「軽量シンプルなスポーツカー」が見直される時代が来るかもしれない、とも考えています。
VIA: sport auto