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新車時にはポルシェ純正のレース用オプションてんこ盛りにて納車され、輝かしい戦績をあげた911Sが競売に!軽量オプションにパワフルなエンジンを搭載

新車時にはポルシェ純正のレース用オプションてんこ盛りにて納車され、輝かしい戦績をあげた911Sが競売に!軽量オプションにパワフルなエンジンを搭載

| さすがポルシェはモータースポーツに対する理解が深く、車両そのものがレース対応として作られている |

さらに驚くのはその素晴らしい耐久性である

さて、ポルシェは古くからモータースポーツに(自ら)参戦し、またカスタマーカーとして多くの車両を提供していますが、今回は「新車時からモータースポーツへの参戦履歴があり、1977年にはCASCチャンピオンシップを獲得したこともある」リッチな歴史を持つ個体がオークションに登場します。

このポルシェ911Sは「911R」仕様にアップグレードされた2.0リッター901/02ツインプラグエンジンを持ち、ポルシェ純正の(数々の)レース用オプションを備えるほか、1990年代と2020年にレストアが施されており、固有のレースへの参戦履歴と相まって「非常に理想的な」コレクターズアイテムだと目されているようですね。

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当時からポルシェはモータースポーツ用パーツを多数販売していた

今から遡ること1967年、FIAはモータースポーツに関する規定を変更し、これによってポルシェはGT2/GT3クラスのホモロゲーション体制を変更することになりますが、1968年から911T/911Sにて同じエンジンレンジを適用することが可能となったため、ポルシェはこれに対応すべく、60ページにもおよぶ「スポーツ・パーパス・ハンドブック」を発表したといいます。

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これはつまるところ「ポルシェ純正競技用パーツのオプションリスト」であり、以前から提供されていたオプション、そして新しく設定されたオプションなどが一冊にまとめられ、すべてのパーツがFIAの承認を受けていたので、これらを装着した場合であっても、公式レースに問題なく参戦することが可能であったわけですね(さすがポルシェ)。

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そしてこのスポーツ・パーパス・ハンドブックに記載されたパーツは「新車時に装着することも、すでに納車された個体にディーラーにて装着することも」可能であったといい、こういった対応もやはりポルシェならでは。

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スポーツ・パーパス・ハンドブックはその後4年にわたり更新され続けることになりますますが、その間には多くの911T、911Sが(スポーツ・パーパス・ハンドブック記載のパーツによって)アップグレードされることになり、今回オークションに出品される911Sもその一台。

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このポルシェ911Sはこんな仕様を持っている

今回オークションに出品されるポルシェ911S(シャシー11800988)は、モントリオールを拠点とするレース愛好家であり、SCCAにも参戦していたクロード・ハンバートによって1968年6月7日に地元の(ポルシェ正規ディーラーである)オート・ハマー・ポルシェ経由にて納車されています。

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新車時からレース参戦を見据えて様々なオプションパーツが選択されていたことが特徴で、レカロ製シングルスポーツシート(ハーネス付き)、フロントスタビライザーバー、エクステンドレンジフューエルタンク、リミテッドスリップデフ、タルボミラー、ダンロップ製タイヤ、競技対応5速マニュアルミッション(取り外し可能な2速ギアクラスタ付き)を装備していた、とのこと。

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こういったロールケージ、ハーネスバーはシンガー・ヴィークル・デザインが参考にした部分なのかもしれませんね。

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そしてフロントウインドウや・・・。

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リアウインドウには脱落防止パーツも。

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なお、これら以外にも様々な純正(レース用)オプションが装着されており、その中でも興味深いのは「軽量化オプション」。

これはコード9541と9542にて提供されており、このオプションによってキャビンの防音材とシャシーのアンダーコートが取り除かれ、車両に付属する保証書には、アンダーコート削除によって新車保証が無効になったと記されている、とのこと。

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クロード・ハンバートはこのポルシェ911Sを1968年から1970年にかけて耐久レース参戦のために使用し、その間(信じられないことに)35,000マイルを超える距離を走破することになりますが、同氏の最高成績は1969年9月14日、CASCケベック・リージョナル・モルソン・トロワ-リヴィエール・グランプリでの3位だったと紹介されています。

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その後にこのポルシェ911Sを手に入れたのはカナダ屈指の耐久レースドライバー、ビアンヴェニューで、彼はブルモス、ヘイムラス・レーシング、ジョージ・ダイアー、ビツェック・オートモーティブといった有名チームからトップレベルの耐久イベントに参戦し、世界中のモータースポーツでの”常連”として活躍することに。

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その後9年にわたり、ビアンヴェニューはカナダの地方および国内外のGT2イベントへと参戦を続け、1973年と1977年には、ビエンヴェニューのホームサーキットであるモントランブランで開催された市長杯で勝利を収めたこともあるのだそう。

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さらに1977年、ビエンヴェニューはCASC国内選手権のタイトルを獲得していますが、この際には新聞のコラムニストに対して「ケベックの人から3,000ドルで買った古い1968年製のポルシェで優勝した」とだけ語っており、ポルシェの驚くべき耐久性、そしてパフォーマンスが改めて世に知らしめられたと考えて良さそうです。

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1980年にはビアンヴェニューはこのポルシェ911Sを引退させることに決め、1981年6月に新進気鋭のレーサー、アンドレ・ティボーにこのマシンを売却し、アンドレ・ティボーはその後4年間、地方の耐久イベントでマシンを使用したという記録が残ります。

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1989年、レースを引退した911 Sは同じくレーシングドライバーのジャック・リヴァールの手に渡り、(初代オーナーである)クロード・ハンバートの意見を取り入れながら、4年の歳月をかけて新車にて納車された当時の仕様へとレストアされることになりますが、現在搭載されるエンジンは、マグネシウムケースを持つタイプ901/02「ツインプラグ」で、ジャック・リヴァールの行ったレストア中に911R仕様にアップグレードされたもの。

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なお、カラーリングは新車当時ではなく、もっともこの911Sが輝かしい成果をあげた時代の「1977年のチャンピオンシップ獲得カラー」へとペイントされ、そのほかマグネシウム製のミニライトレーシングホイールやハーネスバー付きのロールケージなども1977年仕様。

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加えて、モータースポーツ参戦中はずっと「シングルシーター」であったものの、現在は実用的な「2シーター」へとコンバートされているようですね。

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その後20年にわたりジャック・リヴァールのコレクションルームにて保管され、2007年にはロサンゼルス在住の現在のコレクターがこの車両を購入することになりますが、このコレクターの所有時代にはカリフォルニア州トーランス近郊にあるスペシャリスト、カラス・レンスポーツによってメカニズム面におけるメンテナンスが施され、請求書の内容によると、2.0リッター911R仕様”レース用エンジン”の完全リビルド、トランスミッションなどドライブトレーンのレストアが施されている、とのこと。

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レース仕様として誕生し、ポルシェ純正のモータースポーツ用パーツにて武装され、数々のモータースポーツにおいて輝かしい戦績をあげてきたということを考慮すると、このポルシェ911Sの歴史的価値は非常に高く、かつ丁寧なレストア作業のおかげにより良好なコンディションを保っており、この911Sはこれ以上無いほどのコレクション価値を持っていると考えていいのかもしれません。

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参照:RM Sotheby's

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