| 911GT3 RSRプログラムは昨年に終了しており、今後911GT3 RSRが製造されることはない |
いずれの世代の911RSRも高い価値を持ち、コレクションとしては非常に望ましい
さて、ポルシェは市販車とレーシングカーとの境界線がほかの自動車メーカーほど明確ではなく、どういうことかというと「市販車であってもレーシングカーと同様の基本構造を持っており、市販車とレーシングカーとがイコールに近い」という特殊な自動車メーカーです。
とくに耐久レースにおいてその力を発揮することが多く、ポルシェ911のデビューのわずか2年後にはジャック・デュースとジャン・ケルゲンが911Sを駆ってル・マン24時間レースのの2リッターGTクラスを制することとなっており、市販バージョンの911であっても高い戦闘力を持つことがたびたび立証されています。
「RSR」はポルシェ市販車ベース最強のレーシングカー
そして時は流れて1999年、ポルシェ911は996世代のGT3をベースにした911Rでル・マンに24時間レースに参戦するやいなやクラスを制し、さらにはアメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)を席巻することになりますが、その後継モデルであるGT3 RSはスパ・フランコルシャンやデイトナで総合優勝を飾るなど、さらなる飛躍を遂げています。
そして2004年なると996世代「最強」のレーシングカーである911 GT3 RSRが誕生し、2006年には997型ポルシェ911をベースとした911 GT3 RSRへとバージョンアップ。
2008年にはさらなる進化を遂げることになりフロントエプロンの "フリック "スポイラーや最適化されたエアダクトなど、フロントエンドを中心にエアロダイナミクスの改良が施されることになりますが、これによってダウンフォースの増大と空気抵抗の低減を実現しています。
そして足回りだと、改良されたサスペンションよってメカニカルグリップを著しく向上し、心臓部たるエンジンは従来のユニットよりも軽量化され、内部フリクションが大幅に低減することで485馬力にまでパワーアップ(トランスミッションは6速シーケンシャル)。
このポルシェ911GT3 RSRは「未走行」
この997世代の911 GT3 RSRは、今回出品されているシャシーナンバー799943を含むわずか35台が生産されたそうですが、この個体は2008年4月24日に出品元のウィドベルク・モータースポーツへと納車され、納車されてからは未走行(納車前にポルシェによって20kmほどの実走テストが行われている)、もちろんレースに出場したこともなく、新車コンディションを保ったままで保管されています。
もちろんシャシー、エンジン、ギアボックスはマッチングナンバーのままであり、オートモビル・クラブ・ド・ルエストLM GT2テクニカルパスポート、DMSBロールケージ証明書、2007年発行のFIA GT2ホモロゲーションフォーム、ポルシェ・モータースポーツ・データシートなど、FIA公式競技に参戦するためのドキュメントも付属するのだそう。
997型ポルシェ911 GT3 RSRは、耐久レースのトップレベルにおいて数々の勝利を収めており、同世代で最も優れたレーシングカーの1台ですが、レースに出場したことがない新車同様の個体を購入できる機会は非常に稀。
さらに「GT3 RSR」プログラムは(963ハイパーカーをもってル・マンに集中するため)昨年終了しており、911GT3プラットフォームにてこれ以上RSRレーシングカーが製造されることはなく、つまりこの車両は世代に関係なく非常にレアということに。
よって、購入してそのままコレクションとして飾っておくもよし、主要なヒストリック・モーターレースのイベントやシリーズに参戦するのもよしといったところですが、さすがにその予想落札金額は安くはなく、最高で750,000スイスフラン(現在の為替レートで約1億2500万円)という高額エスティメイトが出ています。
この2008年型911 GT3 RSRは、ひとつの時代の終わりを告げる存在でもあり、その新たな人生がサーキットに向かうものであれ、どこかのプライベート・コレクションに収められるものであれ、その高額な予想落札価格に見合う価値があることは間違いなさそうですね。
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参照:RM Sotheby's