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その耐久性は内燃機関に匹敵。ポルシェが挑む「EVに搭載するバッテリーの寿命30万km」を実現する設計思想とは

耐久性は内燃機関に匹敵。ポルシェが挑む「EVバッテリー寿命30万km」を実現する設計思想

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| ポルシェのEVは「15年・30万キロ」を走れる設計を持っている |

耐久性を高めるバッテリーセル研究の裏側とは

電動化時代のポルシェにとって、高性能ドライブ用バッテリーは車両の心臓部であり、その寿命と信頼性はブランドの威信そのもの。

ポルシェは、EVのハイボルテージシステムについて、内燃機関と同等の耐久性、すなわち「最低15年、または300,000km」の寿命を目標に設計しています。

ここでは、ポルシェがいかにしてこの驚異的な耐久性を実現しようとしているのか、バッテリーの劣化を科学的に抑え込む設計思想、インテリジェントな充電管理技術、そして極限の安全性を確保するためのテストプロセスについて、ポルシェの専門家の知見を交えて見てみましょう。

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この記事の要約

  • ポルシェ製EVバッテリーの耐久目標:「最低15年または300,000km」
  • バッテリー劣化の初期現象である「イニシャルドロップ」を考慮した生産時の設計工夫
  • ポルシェのエンジニアが語る、バッテリー劣化のメカニズムを「レストラン」に例えた画期的な解説
  • タイカンの改良で実現した充電時間の短縮(21.5分→18分)と最大出力の向上

耐久性をデザインするポルシェの知恵

劣化を前提とした「設計上の工夫」

リチウムイオンバッテリーの経年劣化はその性質上どうしても避けられませんが、その速度をコントロールすることは可能です。

バッテリーは通常、生産から最初の2~12ヶ月で容量の1~5%を失うとされ、専門家はこれを「イニシャルドロップ(初期ドロップ)」と呼んでおり、まずポルシェは、この物理的現象を織り込み済みとして設計を行っています。

  • 生産時の容量調整: 新たに生産されたバッテリーは、この初期の容量減少分をあらかじめ見越したエネルギー量を持たせている
  • 効果: これにより、バッテリーの実際の健全度(SoH: State of Health)の低下をはるかに緩やかにし、ユーザーが感じる劣化を最小限に抑える
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「バッテリーの気持ち」を理解した管理術

ポルシェは、バッテリーを長持ちさせるための鍵は、温度と充電レベルの最適化にあることを突き止めており、「バッテリーがもっとも気持ちよく仕事ができる」のは以下の条件なのだそう。

  • 理想的な駐車状態:
    • 温度: 30℃以下
    • 充電レベル: 90%未満
  • 急速充電技術: ポルシェは、温度や充電残量、バッテリーの経年状態、充電電流を監視・制御する特許取得済みの急速充電技術を電動スポーツカーに採用している

バッテリー充電の科学を「レストラン」の例によって解説

ポルシェのバッテリーセル開発担当者、カルロス・アルベルト・コルドバ・ティネオ氏は、「バッテリーは本来放電したいものであり、充電には無理強いが必要だ」とコメント。

充電プロセスを理解するため、彼はバッテリーの状態を「レストランの営業」に例えて解説します(よりたくさんの客を招き、より多くの座席を提供するという意味合いにおいて)。

バッテリー特性レストランの例え説明
温度営業開始時間/ドアの大きさ温度が高いほど「ドア」が開き、イオンがスムーズに入る(充電しやすい)。温度が下がると充電が難しくなる。
経年劣化座席数の減少バッテリーの寿命により容量(座席数)が減ると、一度に充電できるイオン(客)の数が制限される。
充電残量占有済みの座席充電レベルが高いほど、イオンが格納される「座席」が少なくなり、充電効率が落ちる。

この例えは、急激な充電や満充電の維持が、リチウムイオンが金属リチウムとして析出する「リチウムめっき(Lithium Plating)」を引き起こし、これが容量低下の主要因となることを分かりやすく説明しているわけですね。

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タイカンが証明する「耐久性と性能の両立」

ポルシェは、顧客が急速充電を選択するのは約15%のケースであることを把握していますが、耐久テストでは全サイクルの50%で急速充電を行うなど、実際の使用環境を遥かに超えるストレス負荷をかけており、この集中的な開発作業により、現行タイカンの性能は劇的に向上しています。

項目初代タイカン現行タイカン改善点
急速充電時間(10%→80%)21.5分18分3.5分の短縮
最大充電電力270 kW最大320 kW高出力化
最大放電電流860 A1,100 A走行性能向上
グロスバッテリー容量93.4 kWh105 kWh容量増加
バッテリー重量634 kg625 kg軽量化

そしてこの表を見るに、新しいタイカンでは高性能化と軽量化を両立し、放電電流の大幅な増加(860Aから1,100Aへ)によって「より速く、より力強い加速」を実現していることもわかります。

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安全性への妥協なき追求:クラッシュテストの基準

ポルシェは最高の性能と耐久性に加え、安全性にも妥協しておらず、同社は一般的な基準よりも厳しい独自の内部クラッシュ要件をEVとハイブリッド車に課しており・・・。

  • バッテリー保護の最優先: ハイボルテージコンポーネントは損傷リスクが最小限に抑えられるエリアに配置されている
  • 耐火・耐水テスト: バッテリーパック全体を衝突が検知されると、電気モーターと補機類は高電圧バッテリーから自動的に切断され、残留エネルギーが動的に放電される仕組みを採用し、これによって感電のリスクを防止
  • さらなる安全対策:1メートル水中に沈める浸水テストや、塩水溶液にさらす腐食テスト、そして部品レベルで実際の衝突以上の負荷をかけるテストにおいても、発火しないことが厳しく求められている

こういった検証・テスト内容を見るに、ポルシェのEVに搭載されるバッテリーは「車両の寿命中に経験するであろういかなる負荷よりも厳格」に設計されていることがわかり、これによってポルシェはファンが期待する性能、安全性、そして信頼性のすべてにおいて、妥協のないEVを提供し続けることが可能となっているわけですね。

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