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ポルシェが開発拠点ヴァイザッハに新設した「ロード・シミュレーション・テストベンチ」とは?“走りの本質”を再現、AIと実走データが融合した次世代開発手法を取り入れる

ポルシェが開発拠点ヴァイザッハに新設した「ロード・シミュレーション・テストベンチ」とは?“走りの本質”を再現、AIと実走データが融合した次世代開発手法を取り入れる

Image:Porsche

| ポルシェ、ヴァイザッハに最新型「ロード・シミュレーション・テストベンチ」を導入 |

ポルシェでは走行中の不快なノイズや振動を極限まで抑えることを開発哲学のひとつとしている

ポルシェが実際の道路環境を正確に再現できる新型テストベンチ「FaSiP(ロード・シミュレーション・テストベンチ)」をヴァイザッハ開発センターに導入したと発表。

この装置によって車両の走行特性を開発初期段階で最適化・検証することが可能となり、ポルシェのスポーツカーはもちろん、他メーカーの車両開発にも活用される予定であるとアナウンスがなされています。

「耳に感じるハミング音」も見逃さない高精度再現

たとえばテスト中、エンジニアがタブレットを操作して前後の軸ごとに振動を制御すると「どの部分が共鳴しているか」が即座にわかるといい、実際、あるテストではリアハッチの共振が原因であることが判明したのだそう。

 「この場合、専用設計のダンパーを追加することで振動を抑制できます」

ポルシェAG ドクター・セバスチャン・イヤーレ(NVH検証マネージャー) 

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Porsche

NVH特性(騒音・振動・ハーシュネス)を「ブランドDNA」として管理

ポルシェでは走行中の不快なノイズや振動を極限まで抑えることを開発哲学のひとつとしていますが、 こうした「走行中の感覚」は、ポルシェ各モデルがもつ“動的な指紋=Dynamic Fingerprint”として定義されています。

 「スポーティなモデルでは“路面からの適度なフィードバック”が求められますが、快適性重視のモデルではその逆です」

ドライビングコンフォート・シニアエキスパート ライナー・ゲプハルト

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開発初期から実走条件を再現、設計変更コストを削減

従来だとNVHテストは完成車両が走行可能な段階でしか行えなかったものの、しかしこのFaSiPの導入によって開発初期のプロトタイプや個別ユニット(サスペンションやアクスルなど)単位でも試験が可能に。

これによって基本設計段階での振動特性改善が容易になり、大規模な再設計を防ぐことができますが、前出のイヤーレ氏は「これで私たちは“より早く製品を路上に送り出す”ことができる」と語っています。

0.4mmスチールベルト上で250km/hを再現、±40mmの上下動にも対応

このFaSiPでは車両4輪を独立したスチールベルト上に設置し、各ベルトを電動モーターで制御。

縦方向・上下方向の振動を同時に発生させることで凹凸のある路面やマンホール、舗装変化などを忠実に再現することが可能です。

また、最大250km/hの速度域と±40mmの縦動作、0〜50Hzの周波数帯に対応しており、スポーツカー開発に不可欠な高周波振動まで網羅できる、とも説明されています。

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問題解決のための“ファイアファイティング”にも対応

FaSiPは、量産直前の車両で発生した予期せぬノイズの原因究明にも用いられ、 「世界中どこで発生した振動でも、FaSiPで完全に再現・分析・最適化が可能です」とはゲプハルト氏。

実際のテスト路を仮想的に“再生”できるため、迅速かつ精密な原因特定が行えるようですね。

実試験×AIシミュレーションの「ハイブリッド開発」が主流に

ポルシェでは現在、実車データとシミュレーションを融合させた「ハイブリッド開発手法」を推進しており、FaSiPで得られたデータをもとにAIが快適性を自動解析し、最適なサスペンション設定を学習する仕組みを構築しています。

「複雑な車両構造や非線形材料(エラストマーなど)は、実験による検証が不可欠。シミュレーションと実試験の融合こそが未来です」

ポルシェAG ドクター・セバスチャン・イヤーレ(NVH検証マネージャー) 

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開発スピードと品質の両立を実現する新世代テスト技術

このFaSiPによって、ポルシェは車両開発初期の段階からNVH特性を正確に把握し、設計の精度と効率を高めることができるようになりますが、現代では「開発期間の短縮」はマーケティング上、そしてもちろんコスト上の観点からも非常に重要で、今回の新しい設備導入はある意味での「革命」だといえるのかも(ただ、その革命はぼくらユーザーにとって、目に見える形で示されるわけではないのだけれど)。

AIによる自動解析とリアルテストの融合により、「より短期間で、より快適な走り」を実現する未来が見えてきたというのが今回のニュースではありますが、クルマの開発手法は今後「加速度的に」進化するのかもしれませんね。

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