
| ポルシェの持つ価値の一つは「独自開発によるプラットフォーム」ではあったが |
利益91%減の衝撃。ポルシェが直面する「持たざる経営」への転換
ポルシェAGの2025年度純利益は米国関税や市場の混乱によって前年の36億ユーロから3億1,000万ユーロ(約91%減)へと急落。
そしてこの危機的状況を受け、1月に就任したばかりのマイケル・ライターズCEOは「組織のスリム化と開発プロセスの抜本的な見直し」を宣言することに。
なお、同氏はカイエン、そしてフェラーリ時代にはプロサングエの開発を手動した技術畑出身の人物であり、最初に打ち出した今回の改革案が「技術寄り」であることはいかにも同氏らしい、と思います(そして、販売やその他経費削減というよりも、このプランのほうがずっと健全でポルシェらしい)。
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この記事の要約(ハイライト)
- 共有の加速: VWグループの「モジュール・ツールキット(Baukasten)」をより広範囲に活用
- 成功体験の再編: カイエンやマカンで成功した「グループ共用プラットフォーム」の手法を全車種に拡大
- スピード重視: 官僚主義を排除し、意思決定の迅速化と開発期間(Time to Market)の短縮を図る
- 驚きの予測: 911を超えるハイパーカー開発にランボルギーニのコンポーネントが使用される可能性も

なぜ「プラットフォーム共有」が必要なのか?
今回言及されたのが「グループ内でのプラットフォーム共同開発」。
現在ポルシェはフォルクスワーゲングループに属していますが、現時点でポルシェが独自に開発したクルマが178ケイマン・ボクスターに911、そして共同開発車両はタイカンにマカン、カイエン、パナメーラ。
参考までに、リコールの数でいうとポルシェ独自に開発した車種のほうが「圧倒的に少なく」、グループ内で開発した車種のリコールは比較的多いという結果になっています(もちろんポルシェもこれを認識しているはずである)。

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ただ、これは共同開発がどうこうというわけではなく、「共同開発を行うと、自身でコントロールしがたい部分がどうしても出てきて、それが品質面の問題として現れることがある」という事実を示しているのだと理解しています(車に限らず、どんなものでも共同開発は難しい)。
そして今回、マイケル・ライターズCEOは「ポルシェは現在、困難な局面に立たされている」と率直に認め、従来の開発手法を根本から考え直す時期に来ていると強調し、つまりもうポルシェは「のっぴきならぬ状況」に追い込まれていると解釈することも可能です。
これまでポルシェは、911を筆頭とする独自のエンジニアリングを誇りとしてきましたが、巨額の投資が必要なEV開発、そして世界的な市場減退(と、それによる利益の減少)が重なり、単独での開発維持が困難になっている、というわけですね。
1. 「成功の方程式」への回帰
すでにマカンはアウディQ5と、そしてカイエンはランボルギーニ・ウルスやベントレー・ベンテイガとプラットフォームを共有していますが、今後はこの手法をさらに深化させ、デジタル技術やソフトウェア領域でもグループのリソースを徹底的に活用することについて言及がなされています。

2. ランボルギーニとの相乗効果(シナジー)
注目すべきは、ライターズCEOが「911を超えるハイパーカー」につき、ランボルギーニとのシナジー効果を否定していない点。
つまるところ、ポルシェの次世代ハイパーカーにはランボルギーニの技術やコンポーネントが盛り込まれる可能性がある、ということを示唆しています。
- メリット: 開発コストの分散。
- 懸念点: ポルシェ特有の乗り味や「DNA」の維持。しかし、CEOは「最終製品の差別化はポルシェが最も得意とするところ」と自信を見せる
ただ、CEOのいう自信とはこれまでの「フォルクスワーゲンやアウディ、ベントレーとの差別化」に基づくもので、これらは大衆車ブランド、あるいはプレミアムブランドでもあるため、ポルシェのようなハイパフォーマンスブランドとは「全く性質が異なり」、よって差別化は”当たり前”。

一方でランボルギーニはポルシェと同じスポーツカーブランドなので、その差別化は今までとは異なっtえ、やや困難かつ曖昧なものとなるかもしれません。
参考までに、ポルシェとランボルギーニは「似たような技術を別々に」開発することも少なくはなく、実際に「合成燃料に関する研究」「走行中にキャンバー角を変更できる技術」についても、”効果は同じなのに”個別に開発しており、今後はこういった「グループ内の複数ブランドが、それぞれに同じ目的のものを開発する」という事例がなくなってくるのかも。※トヨタ自動車が豊田章男体制になった際、複数部署で同じことを行うという事例が廃止された
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3. ポルシェの主要モデルと共有プラットフォームの現状
なお、すでにポルシェとVWグループ内のほかブランドとの協業はさらに範囲を拡大して推し進められていて、アウディ「コンセプトC」市販モデルと次期ポルシェ 718ケイマン / ボクスターはプラットフォームを共にすることも明らかになっています(ただし最近はちょっと事情が変わってきている)。
| モデル | 採用(予定)プラットフォーム | 共有する主なブランド |
| マカン (EV) | PPE (Premium Platform Electric) | アウディ |
| カイエン | MLB Evo | アウディ, ベントレー, ランボルギーニ |
| 718 (次期EV) | 専用設計 + グループコンポーネント | (アウディとの協力は不透明) |
| 新型ハイパーカー | 未定 (次世代モジュール) | ランボルギーニの可能性浮上 |

Image:Audi
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- 管理職の削減: 階層を減らし、官僚的な手続きを削減して意思決定を高速化
- 人員整理: 2029年までに最大3,000人規模の雇用削減が行われる可能性も
- バッテリー戦略の変更: ドイツ国内での大規模な自社電池生産計画を(需要減退を受けて)縮小し、これにより31億ユーロの一時的な損失を計上
結論:ポルシェは「賢い共有」で生き残れるか
ライターズCEOが描く「戦略2035」のロードマップは、この秋に詳細が発表されますが(今回は”触り”だけの公表)、その核心は「中身はグループで効率化し、外見と走りの味付け(エモーション)でポルシェを際立たせる」という、極めて現実的な戦略です。
ファンにとっては「ポルシェの純血性」が薄れる懸念もあり、しかし企業として生き残り、今後さらに魅力的な製品(ハイパーカーなど)を世に送り出すためには、この「プラットフォーム共有」こそが不可欠な、そして「現実的な最適解」というわけですね。
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参照:Porsche











