
| 今の時代、「売るとき」のことを考えねば新車を購入できない時代にさしかかっている |
買う前から売るときのことを考えるのも「アレ」ではあるが
新車を購入する際、誰もが気になるのが「数年後の資産価値(リセールバリュー)」。
一般的に自動車は登録した瞬間から価値が下がり始め、5年も経てば新車価格の半分近く(アメリカだと平均で約41.8%減)にまで目減りするのが常識とされています。
そして現在、新車の価格がどんどん上がっており、次に新車に乗り換えることを考えるならば「より高く、いま乗っているクルマを高く売る」必要があり、よってぼくらは(よほどのお金持ちでもない限り)常に売却価格を考えねばならないわけですね。
この記事の要約(3つのポイント)
- 全米No.1の残価率: 718ケイマンの5年後減価率はわずか9.6%(約6,988ドルの値落ち)。911の11.1%を抑え、アメリカで最も値落ちしないクルマとなる
- かつての酷評から大逆転: 2016年の「4気筒ターボ化」の際にはファンから猛反発を受けるも、高度なエンジニアリングと卓越した走りで評価が一変
- 真のピュアスポーツとしての再評価: 911の価格高騰や次世代モデルの電動化(EV化)へのカウントダウンに伴い、最後の「ピュアなガソリン・ミッドシップ」として需要が爆発

データが証明する718ケイマンの圧倒的資産価値
しかし「クルマはどんどん新車購入時から価値が下がってゆくもの」という常識を完全に覆し、「アメリカで最も価値を維持するクルマ」として驚異のランキング1位に輝いたスポーツカーが存在し、それはなんとポルシェの象徴である「911」ではなく、かつてファンから「ピュアじゃない」「パワー不足」と揶揄されたミッドシップスポーツ、ポルシェ 718ケイマン(718 Cayman)です。
米自動車リサーチ企業「iSeeCars」の2026年最新調査データによると、718ケイマンの5年落ち時点での平均値落ち率はわずか9.6%だといい、フラッグシップである911(11.1%減)すら上回る圧倒的な残価率を記録していることがわかっていて、ここでは、かつて「負け犬(アンダードッグ)」「本物のポルシェではない」とまで呼ばれたこのミッドシップポルシェが、なぜ今これほどまでに市場で評価され、資産価値を高めているのか、その理由を考えてみましょう。

ちなみにですが、ぼくがもっとも高く評価するポルシェは「ボクスター」と「ケイマン」であり、実際に(初代に始まり)3台を乗り継いでいます。
そしてボクスター当時はさんざんポルシェファナティックからバカにされたものの、今ようやくその素晴らしさが評価されたということになり、「やはり自分の感覚は間違ってはいなかったのだ」と感無量というわけですね。
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そこでケイマンの残価率について見てみると、自動車市場において、スポーツカーは趣味性が高く値動きが激しい傾向にあるものの、ポルシェ 718ケイマンの数字は突出していて、iSeeCarsの2026年価値維持ランキングにおいては一般的な自動車の5年平均減価率が41.8%であるのに対し、718ケイマンは9.6%へと留まることになり、これは北米における新車時のメーカー希望小売価格(MSRP)からの下落額に換算すると、5年間でわずか6,988ドル(約100万円前後)しか下がっていない計算になるのだそう。
この驚異的なリセールバリューの背景には、「需要が供給を遥かに上回っている」という市場原理だけでなく、ポルシェの歴史が生んだ歪みと、オーナーたちが手放そうとしない「クルマとしての高い完成度」がある、と分析されています。

ポルシェ・ケイマン:車種概要
1. 宿命のアンダードッグ(負け犬)として生まれた歴史
718シリーズの原点は、1996年に登場した初代「ボクスター」に遡りますが、当時、ポルシェは深刻な財政難に陥っており、911よりも低価格で、かつ効率的に製造できる量産モデルを必要としていたというのが「誕生の背景」。
当初、伝統的な空冷フラット6(水平対向6気筒)をリアに積む911を信奉するハードコアなファンからは、「水冷エンジンを中央に積んだ、ポルシェに乗れない人のためのクルマ」「本物のポルシェではない」などと不当な洗礼を受け(ぼくもその連例を通過したうちの一人である)、しかし、このボクスターの大ヒットによってポルシェは息を吹き返し、後の大ヒットSUV「カイエン」を市場に送り出す資金を得ることができたというのもまた事実。
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つまり、ボクスターこそが、ポルシェを倒産(あるいは他社への買収)の危機から救った真の功労者であるとも考えています(ボクスターなくしては今のポルシェはない)。

Image:Porsche
参考までにですが、ポルシェは欧州車ブランドに常としてヒエラルキー(上下関係)に非常に厳しく、よって「オフィシャルフォトでは、下位モデルや下位グレードが、上位互換の前に出てはならない」「下位グレードやモデルが、上位グレードやモデルよりも優れた加速や最高速、より速いサーキットでのラップタイムを実現してはならない」という不文律がまかり通っていた時代があり(つまり「素」モデルは「S」の前に出たり速く走ることが許されない)、よってケイマンも性能を緻密に制御されることで911の「下」に”抑えられて”いたのですが、それが覆ったのが981世代の後期であり、ここではじめて981ケイマンSが「素の911の」パフォーマンスを超えることが許されることになったと記憶しています。※今ではケイマンやボクスターのハードコアモデルが911のエントリーグレードのパフォーマンスを超えることは常識となっている。ポルシェも変わったものである
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2. 「気筒数削減」という聖域への挑戦と技術的勝利
そして2016年、ポルシェは再びファンの逆鱗に触れる大きな変革を行います。
環境規制(燃費基準)に対応するため、伝統の自然吸気6気筒を廃止し2.0リッターおよび2.5リッターの「4気筒ダウンサイジングターボ」へと舵を切っていて、この際に「批判をかわすため」にポルシェが取った行動が「往年の4気筒ミドシップレーシングカーにである718」のコードネームを冠するということ。
当然ながら、それでも「4気筒のポルシェなんて認めない」という感情的な批判が渦巻くことになり、しかしポルシェのエンジニアリングは完璧で、911の3.0リッター6気筒ターボエンジンをベースに開発されたこの4気筒ユニットは最高7,500rpmまで官能的に吹け上がり、従来の6気筒を凌ぐ低回転からの強烈なトルクを実現したわけですね(当時、自然吸気6気筒エンジンを懐かしむ声もあったが、テクノロジーとパフォーマンス志向のぼくとしては、この4気筒ターボを強く支持している)。

さらには(”S"以上の4気筒モデルにおいて)911ターボ譲りの「可変タービンジオメトリー(VTG)」を採用し、アクセルをオフにした際にもスロットルを開いて点火時期を遅らせることでターボの回転を維持する「アンチラグ的制御」を導入し、これによってターボラグを極限まで排除することに成功しています(素の4気筒ではVTGがなくとも「アクセルオフでも回転落ちしない」というポルシェらしからぬ制御が与えられている)。
そしてこの制御の副産物として生まれたエキゾーストのポップ音(バブリング)は、4気筒特有のレーシーなキャラクターを決定付けることとなり、これもぼくが「4気筒の718シリーズ」を高く評価する理由のひとつです。
718ボクスター / ケイマン 主要スペック
| 718ベースモデル | 718 Sモデル | |
| エンジン | 2.0L 水平対向4気筒 ターボ(ICE) | 2.5L 水平対向4気筒 ターボ(ICE) |
| 駆動方式 | ミッドシップ・リアドライブ(MR) | ミッドシップ・リアドライブ(MR) |
| トランスミッション | 6速MT / 7速PDK | 6速MT / 7速PDK |
| 最高出力 | 300 hp @ 6,500 rpm | 350 hp @ 6,500 rpm |
| 最大トルク | 380 Nm @ 1,950 rpm | 420 Nm @ 1,900 rpm |
| 新車価格(米国目安) | $75,400〜(ケイマン) / $77,600〜(ボクスター) | $90,000〜(ケイマンS) / $87,900〜(ボクスターS) |

競合比較と市場での位置付け
911との比較:どちらが「純粋なスポーツカー」か?
ポルシェと言えば誰もが「911」を思い浮かべますが、純粋なパッケージングの観点で見れば、718シリーズの方がより理にかなった「ピュアスポーツ」と言えます。
1964年の誕生以来、リアエンド(後ろ車軸のさらに後方)にエンジンをハングアップさせ、それを長い年月をかけて少しずつ前方に移動させることでバランスを取ってきた911に対し、718(ボクスター/ケイマン)は最初から「エンジンを車体中央に置く」という、レーシングカーと同じ理想的なミッドシップレイアウトで設計されているのがその理由であり、911には(ほとんどのオーナーが使わない)狭い後部座席(2+2)、あるいはラゲッジスペースが存在しますが、718は潔く2シーターだと割り切ることに。
これによって実用的な前後2つのトランクスペースを確保しつつ、一切の無駄を削ぎ落としたハンドリングマシンへと仕上がっていて、これもまたぼくが「ボクスターとケイマン」を愛する一つの理由にもなっています。
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中古車市場における「スイートスポット」に
近年、911の新車・中古車価格はあまりにも高騰して一般の車好きが手の届かない領域へと行ってしまい、さらには718シリーズ自体も新車価格が上昇したことで、結果として「状態の良い中古の718」に需要が集中しているというのが現在の状況。
さらに、ニュルブルクリンクでは次世代718の「完全電動プロトタイプ」が目撃されており、現行のガソリン(ICE)モデルが「最後の内燃機関ミッドシップポルシェになる」というタイムリミットが迫っていて、これが、中古車市場での価値をさらに押し上げる強力な燃料となっていることも否定できないかもしれません(ガソリンエンジンも残るとされるが、ハイブリッド化される可能性も高く、そうなると非常に高価なクルマとなってしまう)。
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結論:賢いスポーツカー選びの最終回答
ポルシェの歴史は、「ファンからの猛反発」と「その後の大成功」の繰り返し。
水冷エンジンへの移行、SUV(カイエン)の発売、そしてこの718の4気筒ターボ化も当初は激しい批判に晒されていて、しかし時間が証明した通り、718ケイマン/ボクスターは単なる「911の廉価版」ではなく、独自の地位を築いた傑作であると認識されています。
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そして今、全米で最も値落ちしない車という称号を手にしたことで、その実力が資産価値としても完全に証明されており、オプション費用が高額なポルシェにおいて、5年落ち・走行数千~数万キロ程度の個体を、オプション代を考慮すれば実質的に数百万円も安い価格で手に入れ(iSeeCarsの統計ではオプション込みの購入金額を考慮していない)、さらにそこから乗ってもほとんど値落ちしないという事実は、賢くプレミアムスポーツカーを楽しみたいエンスージアストにとって、これ以上ない「最適解」と言えるのかもしれません。

クルマ好きのための+α関連情報:ポルシェが仕掛けた「EV化へのカウントダウン」と市場の反応
ポルシェはその速度を緩めたといえど、親会社であるフォルクスワーゲングループの意向に従って電動化を継続しているという状況ではありますが、その中で次期718シリーズ(ケイマン/ボクスター)がなんらかの電動化処置を受けるのは間違いのない既定路線。
これに対する中古車市場の反応は極めて敏感で、過去の「空冷から水冷への移行(993型から996型へ)」の際、空冷最終モデルの価格が爆発的に高騰したように、今回の「ガソリンから電気へ」の移行も、現行のガソリンエンジンモデル(特に4.0L 6気筒を積むGTS 4.0やGT4、そして完成極まった4気筒ターボモデル)の希少価値をさらに高める要因として機能していて、「音がしない、軽いミッドシップの挙動が得られない」EVとなる前に、最後のガソリン、そしてミドシップポルシェを所有しておきたい」というドライバーたちの心理が、現在の718の異常なまでの残価率を支える裏の主役というわけですね。
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参照:CARBUZZ, iSeeCars












