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ポルシェ、次期「718」に内燃機関モデルを緊急追加。EV専用プラットフォームを逆設計し「ICE対応」とする衝撃の戦略

ポルシェ、次期「718」に内燃機関モデルを緊急追加。EV専用プラットフォームを逆設計し「ICE対応」とする衝撃の戦略

| EVシフトに待った。ポルシェが下した「英断」の裏側 |

政策そして環境の変化によって各社とも戦略の転換を余儀なくされる

かつてポルシェは「2030年までに販売の80%をEVにする」という野心的な電動化計画を掲げ、その一環として、エントリースポーツカーである「718ボクスター/ケイマン」の次期モデルを完全EV化するという方針を掲げています。

しかし、ここにきてその計画が大きく見直されており、最新の報道によると、ポルシェは次期型718の「トップモデル」だけでなく、通常グレードにも内燃機関(ガソリンエンジン)モデルを新たに開発・投入する準備を進めているとのこと。※直前の報道では、「トップレンジのみに」ガソリンエンジンが追加されるという話であった

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これは単なる「つなぎ」や「特別モデル」ではなく、定番モデルとしての投入であり、EV専用に設計されたプラットフォームを「わざわざガソリンエンジンを搭載するために逆設計」するという、自動車業界では前例のないポルシェの決意ともいえる戦略です。

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ここでは、ポルシェがなぜこの大転換に踏み切ったのか、そしてこの決定がスポーツカーの未来にどのような影響を与えるのかを考えてみたいと思います。

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要約:次期718の内燃機関復活が衝撃的な理由

  • EV計画の現実路線化: ポルシェは「2030年までに80%EV化」の目標を事実上見直し。市場のEV需要の伸び悩みを受け、マルチ・パワートレイン戦略(ICE/PHEV/EVの併売)を強化
  • プラットフォームの逆設計: 次期718(第5世代)はEV専用プラットフォーム「PPE」をベースに開発されていたが、これを内燃機関とミッドシップレイアウトに対応させるため、大規模な再設計(逆設計)に着手
  • エンジン搭載の難題: PPEプラットフォームはEV前提のため、ガソリンタンク、燃料配管、排気システム、そしてミッドシップレイアウトに必要なセンタートンネルの設計がない。これらをゼロから組み込むのは、極めて困難なエンジニアリング課題となる
  • 復活の可能性: 新しい内燃機関モデルに搭載されるエンジンは未定だが、「ユーロ7」規制をクリアした改良型「4.0L水平対向6気筒エンジン」が有力候補として浮上
  • 発売時期: EV版の発売(2027年初頭に延期)の後に内燃機関版の第5世代モデルが「2020年年代の終りまで」に登場する見込み
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ポルシェがEV専用プラットフォーム「PPE」を逆設計する狂気の沙汰

次期718は、ポルシェとアウディが共同開発した高性能EV用の「PPE(Premium Platform Electric)」をベースに開発が進められていましたが、しかし内燃機関モデルを導入するということは、このEV専用の土台に対しガソリンエンジンを組み込むことを意味します。

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ポルシェ、次期718ボクスター&ケイマンにガソリン版を継続投入するもよう。「電動戦略の再編」で718EVに「ガソリンエンジンをオプション設定」?

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1. 困難を極める「ミッドシップ」再設計

EVプラットフォームはバッテリーを床下に敷き詰めることで超低重心化を実現しており、しかしその構造には内燃機関に必要な「トランスミッションやエンジン、エキゾーストシステム」などを配置するスペースがありません。

特に、次期718が堅持せねばならない「ミッドシップ(エンジンを座席後方に配置)」レイアウトをPPE上で実現するには、以下の根本的な問題をクリアする必要が生じます。

  • 燃料・排気システムのスペース: ガソリンタンク、燃料パイプ、そして高温になる排気システムを搭載するスペースの確保
  • 冷却システムの再配置: エンジンと補機類のための大規模な冷却システムをバッテリー冷却とは別に配置する必要がある
  • トランスミッションの統合: ミッションをエンジンと組み合わせるための物理的な構造変更
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さらにポルシェはEVモデルと同等レベルの動的性能(運動性能)を内燃機関モデルでも達成することを目指しており、これはPPEの低重心という強みをエンジン車で再現するという非常に高いハードルを意味します。

2. 期待高まる「4.0L水平対向6気筒」の行方

内燃機関の継続が決まったことで、エンスージアストの関心は「どのエンジンが載るのか」に集中しているのが現状で、現行718の高性能モデル(GT4など)に搭載されている4.0L自然吸気水平対向6気筒エンジンは、そのエモーショナルなサウンドとフィーリングで絶大な人気を誇ります。

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このエンジンが、最新の排出ガス規制「ユーロ7」をクリアする形でアップデートされつつも次期型に引き継がれる可能性が指摘され、もしこれが実現すれば、EVが主流となる時代においてもポルシェの伝統的な「魂」が生き残るという、ファンにとって最高のニュースとなるわけですね。

もちろん、高い経済性を誇る4気筒エンジンの復活も多くの人に望まれており、今後の情報が待たれるといったところです。

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EV市場の鈍化とポルシェの戦略転換:なぜ今なのか?

ポルシェがこの困難なエンジニアリングに踏み切った背景には、EV市場の急速な変化があり・・・。

  • EV需要の伸び悩み: 世界的にEVの普及スピードが鈍化し、特に高価格帯のセグメントでガソリンエンジンの魅力を求める顧客が予想以上に多いことが判明した
  • ハイブリッドの必要性: 一部の市場や車種では、完全EVではなく、内燃機関やハイブリッドが依然として主流の選択肢であり続け、ポルシェは、フラッグシップの「911」でプラグインハイブリッドを導入しない方針を堅持しているものの、その他のモデルではマルチパワートレイン戦略に柔軟に対応する必要が出てきた
  • 未来のラインナップ: 718以外にも、ポルシェは大型3列SUV(コードネーム「K1」)の計画で、当初の完全EVから内燃機関/ハイブリッドモデルを追加する方向へ転換するなど、全モデルで現実路線への回帰を進めている

この戦略転換は、ポルシェが「最高のスポーツカー」を提供し続けるという哲学のもと、市場のニーズに機敏に対応する「柔軟性」を示した結果と言えそうです。

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最新の統計では「スポーツカーの価値が最も下がりにくく」ポルシェ911や718ケイマンが価値残存率上位に。ちょっと前では考えられない様相である

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結論:ポルシェの挑戦はスポーツカーの「魂」を繋ぐか

ポルシェがEV専用プラットフォームを内燃機関向けに再設計するという異例の決断は、EV一辺倒の流れに対する一つの大きな「アンチテーゼ」。

エレクトリックモーターの生み出す瞬時のトルクや静粛性も魅力的ですが、エンジン音、振動、そしてガソリンエンジンのリニアなレスポンスを愛する根強いファン層は世界中に存在します。

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ポルシェはEVに関する優先順位を変更し、電動版718ケイマン・ボクスターの発売を「カイエンEVの後」に。これによってポルシェのスポーツカーは一時的に「911のみ」へ

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ポルシェがこの「スポーツカーの”魂”ともいうべき要素をEV時代になっても手放さない」という意思を明確に示したことが明確になったのが今回の報道というわけですが、次期718の「EV版」と「内燃機関版」が並行して提供される未来は、ぼくらドライバーにとって「静かな高性能」と「エモーショナルな体験」という、究極の選択肢が今後も提供され続けることを意味します。

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ポルシェのこの困難な挑戦が成功すれば、スポーツカーの伝統と電動化の未来が共存し得るという新たな道筋を世界に示す事例となり、これによってスポーツカーの新たな未来が開かれることとなりそうですね。

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参照:Autocar

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