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空冷・水冷ポルシェ論争に終止符?ポルシェが「新世代の”空水冷”ハイブリッドエンジン」特許を出願、これは様々な面でメリットがありそう

ポルシェ911カレラRS「ナナサンカレラ」のモデルカー

| ポルシェはこの特許をノスタルジーのために出願したわけではない |

内容を見ると「軽量化」「効率化」に繋がる画期的な特許であるといえるだろう

1998年、最後の空冷モデル993型がラインオフして以来、ポルシェファンは「空冷」と「水冷」という2つの時代に分断されてしまっていますが、今なお空冷エンジンを愛する熱狂的な純粋主義者も唸るような「驚天動地の特許」がポルシェによって申請されることに。

簡単に言えば「空冷エンジンの魂」を現代の技術で再定義した、全く新しい空水冷ハイブリッド冷却システムともいえるもので、なぜポルシェは今、あえて空冷の要素を取り戻そうとしているのか?その核心にある「空力の最適化」と「究極の効率化」について、エンジニアリング的視点から考察してみましょう。

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この記事の要約

  • 革新の「エンジン・イン・ボックス」:エンジン全体を特別なダクト(筐体)で包み、強制的に冷却
  • 空冷フィンの復活:クランクケースに冷却フィンを設け、水冷と空気を併用して冷やすハイブリッド構造
  • 超強力なファン:往年の空冷モデルの2倍以上(毎分5,800立方フィート)の風量で熱を吸い出す
  • 最大の目的は「空力」:ラジエーターを小型化し、前面投影面積を減らすことで空気抵抗を極限まで削減
ポルシェ911とボクスター

エンジンを「箱」に入れる!?ポルシェが描く新世代の冷却メカニズム

今回の特許の最大の特徴は、エンジンそのものを大きなハウジング(ダクト)の中に密閉する点にあり、これまでの「走行風がエンジンルームを通り抜けるのを待つ」という受動的な構造から、「ファンで強制的に空気を引き込み、熱を奪い去って排出する」という能動的なシステムへと進化していて、つまり「取り入れた風をそのボックスの中に逃さず流し込み、その風を無駄なく使うことで効率的にエンジンに風を当てて冷却する」というもの。

これによって「無駄な風」がなくなり、さらには「必要な風」を取り込んで「流速を速め、他に行かないよう」流せるようになるというわけですね。

1. 懐かしの「冷却フィン」と最新「水冷」の融合

驚くべきことに、ポルシェはこの新型エンジンのクランクケース表面に、かつての空冷モデルのような「冷却フィン」を追加しようとしていて、水冷による内部冷却を継続しつつ、外側からは強力な気流で熱を逃がすという「二段構え」の設計に。

さらに、この気流は過酷な熱にさらされるターボチャージャーやエキゾースト系の冷却にも利用される、とのこと。

2. 爆風を巻き起こすスーパーファン

冷却の要となるのは、エンジン後部に設置される巨大なファンであり、ポルシェの目標値は毎分5,800立方フィートだとされ、これはクラシックな空冷911のファンの2倍以上に相当するのだそう。

空冷ポルシェ911のエンジンルーム

このファンには専用の「クラッチ」や「多段トランスミッション」まで備えることが想定されており、エンジンの負荷に応じて最適に制御されることとなるようですね(空冷システムでは熱の上下に対し精密的に対応することが難しかったが、このシステムだと熱に応じて風量=クーリングパワーを調節できる)。

これらを見ると、「ファン」に関するデバイスと制御が必要になるものの、ラジエターが小型化し、冷却水の両も減り、循環のためのポンプやプーリーも小さくなり(抵抗や慣性が減る可能性)、もしかするとエンジンブロック外周のウォータージャケットが減少することで(無くなることはなさそう)「シリンダー内の爆発音」がダイレクトに聞こえるようになる可能性も考えられ、かつての空冷ポルシェのフィーリングが復活することになるのかもしれません。


この「空冷と水冷とのハイブリッド」はどの車種に採用される?

技術の狙いとスペック

このシステムは、フラット6(水平対向6気筒)を搭載する911や718といった、リアあるいはミッドシップモデルへの採用を前提に設計されており、これが実現すれば「フロントバンパーの形状が(ラジエターが小さくなるので)変更される」「ファンを収めるためのスペースが必要になる」「吸気のためのダクトが必要になる」など車体デザインそのものが変わってくる可能性も。

ポルシェセンター北大阪にて、ポルシェ911の額入り写真(空冷、フロント)

項目内容
システム名称アクティブ・ファン冷却式ハイブリッドシステム(仮)
主な冷却媒体冷却水(LLC) + 強制吸引空気
ファンの風量5,800立方フィート/分(従来比200%以上)
主なメリット前面ラジエーターの小型化、空気抵抗(ドラッグ)の低減
副次的効果車外へのエンジン騒音低減(ハウジングによる遮音)
対象レイアウトリアエンジン(911)、ミッドシップ(718)

ただ、補機類を装着することで「巨大化」してしまったエンジンを多少なりともコンパクトにすることができる可能性もあるため、ファンを含めたとしても「リヤセクションをスリムに」できるのではとも考えており、かつての「空冷ポルシェ」に近いルックスを期待したいところでもありますね。

市場での位置付け:なぜ今、この技術なのか?

現在、ポルシェは「eFuel(合成燃料)」や「ハイブリッド化」によって内燃機関の延命を図っており、しかし、パフォーマンスを高めれば高めるほど「冷却」が課題となるためフロントのラジエーターは巨大化し、空力性能を阻害するという(そして重くなるという)矛盾した側面も。

しかしこの新技術によってフロントの開口部を最小限に抑え、空気抵抗を減らすことができるならば、燃費向上と最高速度のアップを同時に達成でき、これは、フェラーリやランボルギーニといったライバルに対する、ポルシェ独自の「機能美」への回答といえるのかもしれません。

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純粋な「空冷」への回帰ではない

この特許を見て「空冷911が戻ってくる」と喜ぶのは少し早計で、この特許は実際のところ「水冷エンジンの効率をさらに高めるための空気の積極活用」。

しかし、注目すべきは「音」への影響で、エンジンをボックスに閉じ込めることによって車外に漏れる騒音が抑えられる一方、この音を乗員へと(騒音規制を回避しつつ)届けることが可能となるのかもしれません。

加えて、補機類がコンパクトになること、エンジンブロックが「薄く」なること、さらにはファンが追加されることで、車内には往年の空冷ポルシェのような「シュイーン」という独特の音が響き渡る可能性、そしてあのカミソリのようなレスポンスが(多少なりとも)復活する可能性があり、ポルシェはいまの電動化時代において、失われつつある「機械的な高揚感」を、この”ファン・システム”によって演出しようとしているのだとも考えられます。

ポルシェ911の額入り写真(空冷と水冷911、リア)

結論

今回出願されたポルシェの新しい特許は過去へのノスタルジーによるものではなく、未来のスポーツカーが生き残るための「エンジニアリングの極致」ともいえるもの。

前面の大きなグリルを廃し、リアスポイラーの下に隠された小型ラジエーターと巨大なファンだけで熱を制御する——。もしこれが実現すれば、911のデザインはより洗練され、バウハウス的な美学に磨きがかかることとなるのかも。

「空冷か水冷か」という不毛な議論を終わらせる、ポルシェの新たな挑戦。その第一歩が、この特許には刻まれているようにも思えます。

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参照:CARBUZZ

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