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ポルシェが長期保管中に発生しがちな「タイヤのフラットスポット」を克服するパテントを出願。コレクターに嬉しい革新的サスペンション特許とは

ポルシェ911のリア(グレー)

| 過去にはフェラーリも「同様の意図を目指した」特許を出願したことも |

いくつかの自動車メーカーはこれを「防ぐ」ためのオプションを発売している

長期間ガレージに保管していた愛車を久しぶりに走らせた際、「ガタガタ」という不快な振動に悩まされたことがあるかもしれません。

それは車重でタイヤの一部が潰れて平らになってしまう「フラットスポット」が原因で、ポルシェはこのほど、アクティブサスペンションを活用して「停車中にタイヤを自動で浮かせて回転させる」という、まさに魔法のような特許を申請しており、長期保管語や冬眠明けのドライブを常にスムーズにする、コレクター必見の最新技術を見てみましょう。

この記事の要約

  • 革新的な特許:停車中にサスペンションがタイヤを1本ずつ浮かせ、自動で回転させて接地面をずらす
  • フラットスポット解消:長期保管によるタイヤの変形を防ぎ、走り出しの振動をゼロにする
  • 対象車種:最新のEVだけでなく、ガソリン車への導入も想定。ただし4WD(全輪駆動)であることが鍵
  • コレクターへの恩恵:特に冬期に車両を保管するユーザーや、多数の車両を所有するコレクターにとって究極の解決策に
ポルシェ911GT3のホイールとブレーキ

ポルシェ流「タイヤを丸く保つ」新メソッド

ポルシェが申請した特許(actively controllable wheel suspension)は、かつてのシトロエンDSが持っていた「片輪を上げる」機能に、現代のデジタル技術を融合させたもので、具体的には、まずアクティブサスペンションが各コーナーの車高を調整し、タイヤが地面とわずかに離れる程度(摩擦が軽減される程度)まで持ち上げることに。

その後、駆動モーターやトルクベクタリングシステムを介して、タイヤをわずかに回転させ、地面と接するポイントを変更して車高をもとに戻し、これを4輪すべてで行うことによって特定箇所への負荷集中を防ぐという仕組みです。※一時話題になった、「クルマをダンスさせる」という手法を応用したもの

新型ポルシェ・パナメーラのアクティブサスが異次元過ぎた。4輪それぞれを自由に伸縮させてボヨンボヨンとダンスを踊る。さらにスマホによってリモート操作も【動画】
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なお、「そう簡単にフラットスポットなんてできないだろう」と考えるかもしれませんが、現代のクルマは非常に重くなっており、EVはもちろん、PHEVであっても「ガソリンオンリー車とは比較にならないほど」重量が増加しているため、今後フラットスポットがクローズアップされるシーンが散見されるようになるのかもしれません。

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参考までに、フェラーリも過去に同様の解決策を(異なる方法で)示した特許を出願しており、そしてランボルギーニはシンプルに「フラットスポットを作らないよう」スポンジを使用したパッドをオプションとして用意しており、つまるところ「けっこうフラットスポット問題は無視できない」ということになるのだとも考えられます。

ランボルギーニのオプション~フラットスポットを作らないようにするためのパッド
フェラーリが市販車にレーシングカー同様のエアジャッキを装備?特許を出願し「乗降が容易になる」「長期保管時にタイヤにフラットスポットをつくらない」
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技術の仕組み

1. なぜ「フラットスポット」は起きるのか?

フラットスポットは、長期間の駐車だけでなく、「高速走行直後の冷えた路面への停車」や「高荷重状態」によっても発生しやすくなり、ポルシェはこれを防ぐため、以下のセンサー群を駆使して「回転のタイミング」を自律的に判断します。

  • 温度センサー(路面およびタイヤ)
  • 圧力センサー
  • 重量計測デバイス
  • タイマー(駐車時間の計測)

2. 駆動方式による制約

このシステムの肝は、「タイヤを回す力」があるかどうか。

  • EV(電気自動車):前後モーターで緻密な制御が可能なため、最も相性が良い
  • ガソリン車:トルクベクタリングシステムやデフのクラッチ、ブレーキを連動させて必要なタイヤにのみトルクを伝達
  • 注意点:駆動系につながっていないタイヤ(後輪駆動車の前輪など)は自ら回ることができないため、この機能は全輪駆動(AWD)モデルで真価を発揮する

ただ、このシステムを作動させるには車両のバッテリーを使用することになるため、保管中の車両を「電源に接続しておく」などの対応が必要になるのかもしれませんね(そう考えるならば、EVやPHEVの充電含め、これからの複数車両オーナー、コレクターには「電源容量の確保」もけっこう大きな問題となる可能性も)。

ポルシェ・タイカンのリア(グレー)

ポルシェの新サスペンション技術 概要一覧

項目内容
技術名称アクティブ・サスペンション・タイヤ・ローテーション(特許)
主な目的タイヤのフラットスポット(平らな変形)の防止
作動原理サスペンションで1輪ずつ浮かせて回転、接地面を自動変更
必要な装備アクティブサスペンション、トルクベクタリング
最適な駆動方式全輪駆動(AWD / e-AWD)
ターゲットコレクター、冬季保管ユーザー、高級車オーナー

競合比較と市場での位置付け

現在、フラットスポット対策としては上で紹介したランボルギーニのパッド、つまり「タイヤドリー(タイヤの形に合わせた台座)」に乗せる、あるいは「空気圧を極限まで高めて保管する」といったアナログな手法が一般的で、しかしポルシェの特許の場合、「あたらしく機能や構造を追加せず、すでに備わる機能の再調整でなんとかなりそう」というところが画期的といえるのかもしれません。

  • 唯一無二の機能:他のスーパーカーメーカー(フェラーリ、ランボルギーニ等)もアクティブサスペンションを採用しているが、「保管中のタイヤ保護」に特化した自動システムはポルシェ独自の視点である
  • ブランド価値の向上:低走行の極上個体がコレクターに好まれるポルシェにおいて、この技術は「車両のコンディションを保つ」というブランドの信頼性をさらに高めることになる
ポルシェ911GT3のリアビュー(グレー)

ポルシェが解決する「贅沢な悩み」

この技術、一般のドライバーには縁遠いものに思えるかもしれませんが、実は「エンジニアリングの極致」とも言える発想です。

特筆すべきは、ポルシェが「スターターモーター」を使ってタイヤを回す可能性に言及している点で、エンジンを始動させずに駆動系を動かすという発想は、メカニズムを知り尽くした”ポルシェならでは”。

また、1986年の「959」登場以前のポルシェはほぼすべて後輪駆動(RWD)であったため、このシステムを空冷などのクラシックポルシェに後付けするのは現実的ではなく、しかし、最新の「911ターボ」や「タイカン」といったAWDモデルに搭載されれば、将来それらが「クラシック」になった際、タイヤの劣化を最小限に抑え、資産価値を守り続ける重要なデバイスとなることも考えられます。


結論

ポルシェのこの特許は、一見すると「誰も気にしないような小さな問題」を解決するものかもしれませんが、しかし、ガレージに並ぶ名車を愛でるコレクターにとって、これほど心強い機能はほかにないのもまた事実。

「タイヤを丸く保つ」という一点にこれほどの情熱と技術を注ぐポルシェの姿勢こそが、彼らを世界最高のスポーツカーメーカーたらしめている理由でもあり、いつか、冬眠から目覚めた瞬間にシルクのように滑らかな走り出しを体験できる日がすぐそこまで来ています。

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参照:CARBUZZ

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