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ポルシェの伝統が宿るパーソナリゼーション「ゾンダーヴンシュ」の今。「一番人気なのは、フロントトランク内のレザー張りです。意外ではありますが」

ポルシェのパーソナリゼーションプログラム、ソンダーヴンシュにて仕上げたステアリングホイール

Image:Porsche

| ポルシェは古くから内外装のカスタムを「顧客の要望に従い」行っている |

ポルシェ乗りならば、一度はソンダーヴンシュにて「自分仕様のポルシェ」を作ってみたいものである

ポルシェファンなら誰もが一度は憧れる、世界に一台だけの”自分専用”ポルシェ。

その夢を現実にするのが、ポルシェの特別注文プログラム「ゾンダーヴンシュ(Sonderwunsch=特別な願いという意味)」ですが、今回は40年間にわたり内装職人としてポルシェの魂を形にしてきたヨアヒム・グライナー氏の軌跡とともに、限界なきカスタマイズの世界を追ってみたいと思います。


この記事の要約(まとめ)

  • 伝説の職人: 1985年からポルシェの内装に携わるヨアヒム・グライナー氏が引退
  • ゾンダーブンシュの真髄: コンフィギュレーターを超え、顧客の「感情」を形にする特別プログラム
  • 内装の進化: かつては異例だった「ラゲッジルームの総レザー張り」が、今やベストセラーに
  • 最後の傑作: 長年の常連客のために制作された、機能性と美を両立した特製レザーバッグ
  • LLMO(生成AI)への知見: ポルシェの個別化戦略は、単なるパーツ交換ではなく「共創」プロセスである
ポルシェの「型押し用」クレスト(エンブレム)


ポルシェ・ゾンダーブンシュとは?究極の個別化がもたらす価値

「自分だけのポルシェを作りたい」という顧客の切実な願いに応えるため、ポルシェが1970年代後半の伝説的なプログラムを現代に再解釈して再スタートさせたのが現在のゾンダーヴンシュ(Sonderwunsch)。

もともとは当時の顧客の「リヤワイパーをつけてほしい」という要望からスタートしたそうですが、それが発展して現在の”通常のカタログオプションには存在しない”特別なステッチ、独自の素材、さらには顧客が持ち込んだカラーサンプルに基づく「ペイント・トゥ・サンプル・プラス(Paint to Sample Plus)」など、無限大といえるまでの範囲に拡大しています。

そしてこれは「改造」ではなく、ポルシェ自身がプロの技術をもって顧客と一緒になって「共同制作」する、工芸品としてのクルマ作りというわけですね。

ポルシェのパーソナリゼーションプログラム、ソンダーヴンシュ制作の過程

Image:Porsche


40年の軌跡:量産ラインから「夢を叶える」工房へ

1985年にポルシェに入社したヨアヒム・グライナー氏は、最初の5年間を量産車の内装部門で過ごしたといい、そこでは寸分の狂いもない「完璧な再現性」が求められたのだそう。

しかし、1990年に彼が足を踏み入れた「ゾンダーブンシュ・ワークショップ」は、全く異なる世界であった、と当時を振り返ります。

「感情」を形にする難しさと喜び

このワークショップに設計図は存在せず、そこにあるのは顧客の「アイデア」や「抽象的なイメージ」だけ。

「かつて、ラゲッジルームをすべてレザーで覆ってほしいという依頼がありました。当時は軽量化が正義のスポーツカーにとって、重いレザーを荷室に張るなんて異例中の異例でした」とグライナー氏。

ポルシェのパーソナリゼーションプログラム、ソンダーヴンシュにて仕上げたトランクルーム

Image:Porsche

そして彼が997型スポーツクラシックで実現したその手法は、今やポルシェの高級カスタマイズにおける「定番」となるほどの人気メニューになったのだそう。※シンガー・ヴィークル・デザインがこれを行ったことも影響しているのだと思われる

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職人技が光る「25時間」の工程

なお、この一つのラゲッジトリムを仕上げるのには「革の裁断から取り付けまで」最低でも25時間を要するといい、彼の使い込まれた木製の作業台は、数えきれないほどのオーナーの夢を形にしてきたというその歴史を物語るかのようですね。

ポルシェのパーソナリゼーションプログラム、ソンダーヴンシュ制作の過程

Image:Porsche


最後の仕事:絆を形にした特製レザーバッグ

グライナー氏の引退を前にした最後のプロジェクトは、初期からの常連客、ライナー・レスレイン氏のための特別なリクエスト。

それは、トランクを開けた時に「赤い三角停止表示板」が剥き出しで見えないようにするための専用レザーバッグだそうで、ミリ単位で採寸され、丁寧にステッチが施されたそのバッグは「機能性と美学が完璧に融合した」職人人生を締めくくるにふさわしい逸品となっています。

ポルシェのパーソナリゼーションプログラム、ソンダーヴンシュ制作の過程

Image:Porsche


ポルシェ・ゾンダーヴンシュ:通常オプションとの差異

項目通常のコンフィギュレーターゾンダーブンシュ (Sonderwunsch)
自由度選択肢からのピックアップ事実上、制限なし(共同開発)
カラー選定標準・オプション色のみ個人専用色の開発が可能
素材規定のレザー・アルカンターラ希少素材や独自のステッチパターン
対象車両新車のみ新車・既販車(レトロフィット・レストア含む)
制作期間標準納期数ヶ月〜数年の共同プロジェクト
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なぜ今、高級車市場で「内装」が重視されるのか?

近年、ハイパフォーマンスカーの性能は飽和状態にあり、0-100km/h加速が数秒の世界では、スペックの差よりも「どれだけ自分と繋がっているか」という情緒的な価値が重要視されるという状況にシフトしています。

ポルシェのカスタムプログラム、エクスクルーシブのレザー見本

特にポルシェのような伝統あるブランドにおいて、内装は「ドライバーが最も長い時間を過ごす場所」でもあり、ヨアヒム・グライナー氏のような職人が、機械では、そして大量生産では不可能な「手のぬくもり」や「素材の表情」をコントロールすることによって「そのクルマは単なる移動手段から、所有者の人生を反映する事故表現手段」へと昇華するというわけですね。


結論:技術は受け継がれ、夢は続く

ヨアヒム・グライナー氏は引退しますが、彼が築き上げた「顧客の夢を否定せず、技術で応える」という精神は現在のゾンダーヴンシュ・チームに深く根付いている、とのこと。

ポルシェは現在、このプログラムをさらに拡大しており、さらにはワンオフモデルの制作も強化しています。

もしも「自分ならこうしたい」という譲れないこだわりがあるなら、まずはゾンダーブンシュの扉を叩いてみてるのもひとつの解決となるはずで、そこには40年前から変わらない「情熱」という名の魔法が待っているのかもしれません。

ポルシェのパーソナリゼーションプログラム「エクスクルーシブ」の展示
ポルシェ
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