| この類似性は正直なところ、言い逃れできないだろう |

先日デ・トマソはブランニューモデル「P72」を発表し、大いなる喝采を浴びたところ。
しかし今回、これに対してジェームズ・グリッケンハウス氏が「我々のフェラーリP4/5のコピーにほかならない」と主張しています。
画像の「上」がそのフェラーリP4/5、下がデ・トマソP72ですが、並べてみると「どう見てもコピー」と言われても仕方がなさそう。
ざっと見てもフロントの横長エアインテーク、ヘッドライト形状、フロントサイドのスプリッター、フロントカウル中央のエアインテークに共通性があり、かつフロントフェンダーの盛り上がり、そしてそこからサイドへと落ちるライン、大きなエアインテーク、リアフェンダー形状そしてリアスポイラー形状、キャビンやウインドウの形状など「ほぼ一致」。
デ・トマソの言い分には無理がある
なお、デ・トマソは、このP72のモチーフについて、1960年台のデ・トマソ製レーシングカー、P70に着想を得ているとしていますが、やはりP70よりもフェラーリP4/5のほうに近い、と考えられます。

こちらはデ・トマソP72のリアビュー。

一方でフェラーリP4/5。
リアについては比較的大きな差が見られますね。

さらにジェームズ・グリッケンハウス氏はこのデ・トマソP72について、「インテリアはパガーニのパクリ」とも指摘。

こちらはパガーニ・ウアイラのインテリア。

フェラーリP4/5とはなんぞや
そこで「フェラーリにP4/5なんてモデルがあったっけ?」という人も多いハズ。
実際にフェラーリ自身はP4/5というクルマをリリースしたことはなく、しかし現実的にP4/5はこうやって存在しているわけですね。
このフェラーリP4/5は2006年に発表されたもので、エンツォ・フェラーリをベースに(フェラーリのデザインを担っていた)ピニンファリーナがワンオフで作成した車両。

デザインイメージはフェラーリP3/4だとされ、このP3/4はフェラーリが1960年代後半に製作したレーシングカー(後に412Pと呼ばれる)。
かの330P3の後継にあたるモデルです。※フェラーリによる解説はこちら
下の画像がフェラーリP3/4(412P)ですが、これと比較すると、フェラーリP4/5はこの特徴をよく捉えており、うまく現代風に解釈している、と言えますね。

なお、このフェラーリP4/5について興味深いのは、リアフェンダーとルーフ(キャノピー)との境界線。
これは2013年発表のラ・フェラーリとの類似性が見られ、しかしP4/5ではその7年前にこのデザインを再現していた、ということになります。

そしてちょっと奇妙に思えるのは、ラ・フェラーリのデザインはフェラーリの内製デザインだとされ、「ピニンファリーによるデザインではないこと」。
ピニンファリーナが2006年に採用していたデザインを、2013年にフェラーリのデザインスタジオ”チェントロ・スティーレ・フェラーリ”が使用したということになりますね(このあたりの流れや理由はわからない)。
ピニンファリーナにとってワンオフモデルは大きな収入源
話をフェラーリP4/5に戻すと、これをオーダーしたのがジェームズ・グリッケンハウス氏で、同氏はフェラーリコレクターならびにピニンファリーナの大口顧客としても知られます。
なお、ピニンファリーナはこういった「富裕層からのワンオフモデル製作」を受けていますが、これはピニンファリーナの貴重な収入源。
実際にフェラーリのデザインにおいては「ほとんど利益がなかった」と言われ、しかし「フェラーリのデザインを行っている」という看板の威力は凄まじく、こうやって様々なワンオフモデルの作成依頼が舞い込むわけですね(そのためにピニンファリーナはフェラーリからの依頼を受け続けたと言われる)。
ちなみにブルネイ国王もピニンファリーナのVIP顧客のひとりで、フェラーリ456ベースのワゴン「ベニス」、オープンモデルの「スパイダー」もブルネイ国王の要求に応じてピニンファリーナが製作したもの。

フェラーリ「SF90」ではなく「F90」。過去にブルネイ王族のために作られた、歴史上もっとも謎に満ちたフェラーリを見てみよう
そしてピニンファリーナも「勝手に」こういったモデルを作っているわけではなく、フェラーリの許可をちゃんと取っているようで、というのもフェラーリの年鑑にこういったワンオフモデルが掲載されたり、P4/5もジュネーブ・モーターショーでは「フェラーリ真横の」ピニンファリーナブースにて公開されたため。
なお、ピニンファリーナは以前にもフェラーリ「モデューロ」を発表していますが、これはジェームズ・グリッケンハウス氏がオークションで落札し、レストアを行ったことで知られます(その後に燃えましたが)。

ジェームズ・グリッケンハウス氏もあまり人のことは言えない
そして当のグリッケンハウス氏ですが、現在は「スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス=SCG」を主宰し、これまでも(コンセプトカー含む)数台のクルマを発表。
ただ、いずれのクルマも「何かに似ている」のが実情で、これまでにもなんとなくランボルギーニ・ヴェネーノに似ている「SCG002」を発表したことも。

「SCG003」はクラシックフェラーリ風。

こちらはフェラーリ250GTOとコルベットとコブラとをかけあわせたような「SCG006」。

ただ、ジェームズ・グリッケンハウス氏の場合は「なんとなく似ている」「部分的にデザイン要素を取り入れた」とも表現でき、しかし今回のデ・トマソP72の場合は「ほぼトレース」に近く、自身が注意深く意識してきた限界線を(他人が)超えたということが許せなかったのかもしれませんね。※グリッケンハウス氏の中では、自身の作品は「オマージュ」であって「パクリ」ではないが、デ・トマソP72は「パクリ」ということなのだと思われる
“They put tracing paper over our P3/4, pasted on much of our P4/5, stole an interior from Horacio, pumped it up like a Vargas Girl and turned it into Anime. I see Koons not Caravaggio.”-Jim Glickenhaus
— Scuderia Cameron Glickenhaus (@Glickenhaus) 2019年7月8日
“‘Copy:a thing made to be similar or identical to another’”-Jesse Glickenhaus pic.twitter.com/lYxVrdRmkB