| これまでにも様々なカスタムフェラーリが登場したが、このメーラS(ミーラS)ほど奇妙なクルマはほかに無いだろう |
もしかすると、相当な高値がつく可能性があるかもしれない
さて、オークションハウス「RMサザビーズ」の開催する競売にて、フェラーリ・メーラS ミケロッティ(Ferrari Meera S by Michelotti)」なる究極の珍車が登場することが明らかに。
これは1972年モデルのフェラーリ365GT4 2+2をベースに、サウジアラビアの王族がカスタムしたもので、その依頼先は伝説的デザイナーのジョバンニ・ミケロッティ。
ジョバンニ・ミケロッティは、まずピニンファリーナの兄が経営するデザインカンパニーにて(デザイナーとしての)キャリアを開始していますが、その後はメキメキと頭角をあらわし、やがては「ステューディオ・テクニコ・カロッツェリア・ジョヴァンニ・ミケロッティ」を設立して独立を果たします。
1980年に没するまでには数々の名車を生み出していて、ブリティッシュ・レイランド、トライアンフ、BMW、ボルボ、ランチア、アルピーヌ、マセラティ、マトラ等の車体をデザインしていますが、BMWノイエ・クラッセ(1961年~1972年)で取り入れた”シャークノーズ”がそのキャリアのハイライトだったんじゃないかと考えています。
フェラーリ365GT 2+2はこんなクルマ
フェラーリ365GT 2+2は、ピニンファリーナによってデザインされたボディを持つ「広い後席スペースを持つエレガントな2+2」で、1972年のパリ・サロンでデビューした後、400シリーズにバトンを渡す1976年まで生産が続けられ、累計521台が世に送り出されています。
デイトナ(365GTB/4)同様にボディを1周するキャラクターラインを持ち、これは連続性を重んじるピニンファリーナならではの手法だと言えるかもしれません。
ボディ形状としてはオーソドックスな3ボックスを持ち全長4810ミリ、全幅1796ミリ、全高1310ミリ、そしてシャープでスクエアかつクリーンなライン、広いグラスエリアが特筆すべき点でもありますね。
搭載されるエンジンは4.4リッターV12(ティーポF 101 AC)、出力は320馬力、最高速度は245km/h。
フェラーリ・メーラS ミケロッティはこんなクルマ
そしてこのフェラーリ・メーラS ミケロッティのベースは上述の通り365GT2+2ですが、その面影はほとんどなく、つまりこれをオーダーしたサウジアラビアの王族は「もともとのフェラーリとは全く異なるクルマを作りたかった」ということになりそう。
なお、中東の王族の資金は事実上「無限」でもあり、これまでにも様々なカスタムカーが製作されていますね。
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このフェラーリ・メーラSのベース車は1972年に製造されているものの、「メーラS」として完成したのは1983年であり、そのためこのフェラーリ・メーラSの年式は「1983」。
ただ、ジョバンニ・ミケロッティ自身は1980年に没しており、このメーラSが同氏によるものだと断じる資料はなく、息子のエドガルド、そしてミケロッティ・デザインハウス・チームの作品である可能性が高いものの、ジョバンニ・ミケロッティ本人がスケッチを描いていた可能性もある、とされています。
デザイン的には「ノーズを低く抑え」「ワイド感を強調した」ようにも見え、そして何よりもサイドのキャラクターラインが直線でなくなっていること、まるで建築物のように立体的なテールエンドが印象的。
フェラーリ・メーラS ミケロッティのインテリアはこうなっている
そしてこちらはフェラーリ・メーラS ミケロッティのインテリア。
まるでカーコンフィギュレーターで作成したかのようにクリーンで美しく、その色合いがなんともゴージャス。
ちなみにサイドウインドウははめ殺しのように見え、ランボルギーニ・カウンタックのように下のわずかな部分が開くのみだと考えられますが、灼熱のサウジアラビアでこの広いグラスエリア、開放できないウインドウを持つというのはかなり思い切った仕様なのかもしれません(どのみち、砂が舞うのでウインドウを全開にするのは難しそうですが)。
こちらはエアコンのスイッチ。
これがちゃんと稼働しないと「致命的」ということになりそうです。
後席も広々。
ルーフ内張りはシートにあわせたアイボリー、シートベルトはセンターコンソールやダッシュボード同様にレッドです。
ステアリングコラムやウインカーなどのレバー(のシャフト)もダッシュボード同様のレッド。
エアコン吹出口もやはりレッドという仕様を持ち、高度にカスタムされた車両ということは間違いなさそう。
この車両について来歴ははっきりしておらず、ミケロッティによって車両が仕上げられた後、すぐに友人に譲られ、その後オランダの麻薬王の手に渡り、さらにその後に押収されたという話もあるもよう。
とにかく「世界でもっとも奇妙なフェラーリ」のひとつであるのは間違いなく、予想落札価格は最高で11万ユーロ(日本円で1400万円くらい)となっているものの、あまりの珍奇さに(最初にこのフェラーリ・メーラSをオーダーしたのと同様)多額のお金を支払う人が出現してもおかしくはないだろう、と考えています。
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参照:RM Sotheby's, Ferrari