| フェラーリに「グリーン」はかなり珍しい |
希少モデルに希少カラーの組み合わせということでコレクション価値は非常に高い
さて、フェラーリの歴史の中でも特別な存在である「ディーノ」。
もともとはサブブランドとして発足しつつもわずか数年でフェラーリに統合されることになっており、しかしなによりフェラーリのファンにとっては、「ディーノ」というブランド名が、フェラーリ創業者であるエンツォ・フェラーリの愛息の愛称から取られたことに共感を覚えるかもしれません。
そんなディーノですが、1950年代後半に1.5リッターのF1用として誕生した65度V型6気筒エンジンを2リッターに拡大して搭載した206GT、そのエンジンをさらに2.4リッターへと容量アップし搭載した246GTそしてそのオープントップ版である246GTSへとラインアップを拡大しています。
ディーノ246GTSはもっとも「ホット」なヴィンテージ・フェラーリ
フェラーリにおいて「オープンモデルの価値が高い」のはよく知られた事実ですが、それはこのディーノ246においても同様で、究極の進化系とされるディーノ246GTSは特段の人気を価値を誇っており、多くのコレクターの羨望の的となっています。
今回オークションに登場したのは美しいグリーンのボディカラーを身にまとうディーノ246GTSディーノで、落札まで2日程を残し、すでに8000万円くらいまで価格が上昇中。
ちなみにこのボディカラーは「ヴェルデ・メディオ・ニジンスキー(Verde Medio Nijinsky)だと紹介されており、1970年に35年ぶりにイギリスクラシック3冠を達成したカナダのサラブレッド、「ニジンスキーII」にちなんだものだとされています(ニジンスキーII以降、3冠馬は今まで登場していないそうだ)。
このカラーはフェラーリの工場にてペイントされた「純正色」ということになりますが、ディーノ246GTSでこのカラーを持つのは「わずか3台のみ」。
フェラーリにグリーンというのはあまり馴染みがないものの、ディーノ246GTSのボディラインによくマッチしているように見えますね。
ボディデザインはもちろんピニンファリーナ(ただし、この後のディーノ308GT4ではベルトーネがデザインを担当している)。
ドアオープナーは目立たないように装着されており、こういったところがやはり「イタリア車」を感じさせるところ(現代に至るまで、イタリアの自動車メーカーの多くはドアハンドルをうまく隠そうと努めてきた)。
ボディやホイールセンターキャップのエンブレムは「ディーノ」。
特筆すべきはインテリアで、明るいブラウン、そしてデイトナシートのストライプはブラック。
このディーノ246GTSはこういった経歴を持っている
そこでこのディーノ246GTS(シャシーナンバー08454)の来歴を見てみると、246GTSの最終生産シリーズ25台のうちの一台として1974年5月に完成してアメリカへと出荷され、ハリウッドのソーシャライト、サンドラ・ウェストがハリウッド・スポーツカーズを通じて新車で購入したと記録されています。
サンドラ・ウェストはハリウッドのソーシャライトであり、亡き夫の遺産であるテキサスのオイルマネーを相続した人物だといい、1970年代半ばからハリウッドのセレブリティ・タブロイド誌にたびたび登場し、その優雅な生活がなにかと話題になることが多かったもよう。
このディーノ246GTSのほか、330アメリカなど数台のフェラーリを所有しており、彼女が記した遺書には「彼女の遺体をお気に入りのナイトガウンに着替えさせ、330アメリカのハンドルを握らせ、コンクリートで固めて埋葬してほしい」という記載があり、こちらも全米で大きな話題となったとされています(これが実行されたかどうかは定かではない)。
当時の走行距離は1,700マイルにとどまり、その後サンドラ・ウェストの弁護士であるジョン・バレンタインが購入したとされ、その後1979年にオレゴン州ポートランドのロイ・ファーリスに売却されています。
このとき、ディーノ246GTSはフライ・イエローにペイントされ、その直後にはネバダ州リノのグランド・ツーリング・インポートで販売されることに。
その後サハラ・タホやミントのカジノに展示されたり、ラスベガスの伝説的経営者、ウィリアム・ベネットが1984年にこの246GTSを購入したこともあったそうですが、同氏は自身の所有期間中、ボディカラーをレッドに塗り直し、カジノ内に展示した、とも伝えられています(はじめてラスベガスに行ったときには驚いたが、射幸心を煽るためにカジノ内のあちこちに高級車やスーパーカーが展示されていた)。
さらに時は流れて1988年、この246GTSはロサンゼルスのチェッカーフラッグ・インターナショナルが買い取って映画プロデューサーのカミーユ・テイラーへと売却し、2年後にはテキサス州シャディショア在住のJ・R・モジエに売却されていますが、同氏はその後約25年間このクルマを所有しています。
2014年になると、このディーノ246はオリジナルのカラーコンビネーションにてレストアされ、その後ロサンゼルスを拠点とするフェラーリ・コレクターが購入したのち、エンジンのコンプリート・リビルドとディテールアップ、足回りのレストアが施され、メカニカルなリフレッシュが施されることに。
さらに後の2016年にはRMサザビーズを通じて現オーナーが入手しており現在に至るそうですが、よくここまで細かい履歴を拾えたものだと感心させられますね。
とにもかくにも、このディーノ246GTSは工場出荷時の仕様へと戻され、フェラーリ・クラシケの認定書が付属するほか、様々な書類や工具が付属すると紹介されており、数々の著名人が所有してきたという経歴からするに、まだまだ価格が上がるのかもしれません。
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