| フェラーリ288GTOはF40へと繋がる道を作った「初のスペチアーレ」 |
今見ると、過去と未来とを結びつけるデザイン要素がいくつも見られる
さて、フェラーリ288GTOはのちのF40等につながる「元祖スペチアーレ」ですが、今回RMサザビーズ主催のオークションへと「程度良好な」一台が登場予定。
このフェラーリ288GTOは1985年6月にレイクフォレスト・スポーツカーズから新車で納車された米国仕様で、現在の走行距離はわずか8,000km(直近の22年、同一オーナーに保管される)。
レッドとブラックのデイトナシート、エアコン、パワーウインドウを装備しており、フェラーリのクラシックカー部門「フェラーリ・クラシケ」の認定そしてレッドブックや保証書、取扱説明書、整備手帳が付属し、もちろんシャシー、エンジン、トランスミッションは「マッチングナンバー」というあまりに理想的な個体です。
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フェラーリ288GTOはこんなクルマ
そこでこのフェラーリ288GTOについて振り返ってみると、これはフェラーリがFIAの規定するグループBに参戦するために開発・生産したクルマで、フェラーリは同シリーズのホモロゲーションモデルとして(量産規定の最低ラインであった)200台を生産することを決定します。
1980年代に導入されたグループBはヨーロッパを中心に絶大な人気を誇っており、フェラーリもこの戦いに参戦する予定であったものの、開発が開始された直後にグループBは(事故多発のため)廃止されてしまい、結果的に参戦するシリーズがない状態に。
しかしながら、フェラーリファンの288GTOの発売に対する要望が非常に大きく、たとえレースに出ることがなくとも、フェラーリはこのクルマを発売することとなったわけですね。
なお、このGTOとは「グラン・ツーリスモ・オモロガータ」の略であり、GTカテゴリーのホモロゲーション車という意味がありますが、この「GTO」はかの有名な250GTO(1962年)に採用された伝統の3文字で、フェラーリにとっては特別な存在意義を持っています。
フェラーリ288GTOの外観は、同世代の308や328と近いものの、ボディワークの大半はコンポジット素材とケブラーで成形され、ドアやデッキリッドには軽量なアルミニウムが使用されています。
さらには直線的なラインの中にも250GTOを連想させるマッシブなブリスターフェンダーや・・・。
やはり250GTOを連想させる3本スリットも。
搭載されるエンジンは(グループBの規定に合わせて開発された)レース用の2.8リッターV型8気筒エンジン、そして2つのターボチャージャーはIHI製。
最高出力は400馬力、最高速度は時速305キロに達し、発表当時としては史上最速のロードカーとなっています。
0-100km/hまでをわずか4.8秒、160キロkm/hまでを10.2秒でこなすという加速性能は、当時のロードカーとしてはまさに驚異的なもので、その暴力的とまで言える瞬発力はそのままF40に引き継がれたと考えていいかもしれません。
288GTOのインテリアはその生い立ちからすれば驚くほど豪華で近代的な設備が充実しており、ケブラーフレームのバケットシートにはレザーが張られ、エアコン、パワーウインドウ、AM/FMラジオ/カセットステレオがオプションで用意されるなど、十分な日常性を持っていると評されています。
ちなみにメータ指針や文字は同時代のフェラーリとは異なる「レッド」で、当時からフェラーリはスペシャルモデルに対して細かく差別化を行っていたということがわかりますね
この288GTOはフェラーリの顧客から大きく支持を得ることになり、生産終了までにFIAグループBのホモロゲーションに必要な台数を25%以上上回る272台が製造されていますが、この実績によってフェラーリは「ハードコアモデルは大きなビジネスチャンスである」と捉え、これが後のスペチアーレへと発展することに。
なお、ポルシェの「RS」モデルも同様であり、当初ポルシェが911カレラRS (ナナサンカレラ)を発表した際、「まず売れないだろう」と踏んでいたものの、結果的には大反響とともに迎えられ、今日にまで続くサブブランドへと発展したことは面白い、と思います。※よく見るとAピラーがブラックにペイントされており、ヘルメットルーフっぽい印象が演出されている
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今回オークションに出品されるフェラーリ288GTOはこんな背景を持っている
そこで今回出品されるフェラーリ288GTO「シャシーナンバー56773」を振り返ってみると、ボディカラーはロッソ・コルサ(おそらくこの1色しか生産されていない)、ブラック・レザーのキャビン、デイトナ・スタイルのシートにはオプションにてレッド・クロスが貼られるという仕様。
1985年5月3日にフェラーリの工場から出荷され、仕様地はアメリカ向けで、、そしてエアコンとパワーウインドウをオプション装着するもののラジオは「レス」。
北米のフェラーリ代理店による(合法に登録するための)連邦化手続きを経て、イリノイ州の納入業者であるレイクフォレスト・スポーツカーズに到着し、そこでフロリダ在住の最初のオーナー、ドナルド・シャフ氏へと(1985年6月10日に)納車されています。
その後1991年8月、同氏はこのクルマを手放すことになり、カリフォルニアのウォルナットクリーク・フェラーリ社から売りに出されることになりますが、この際の3,388kmという記録が残ります。
1993年にはまたオーナーが変わり、フェラーリの専門家であるマルセル・マッシーニのレポートによると、4月にニューヨーク州ディキシーヒルズのカヴァリーノ・インポートに売却されたことが記されており、その後この288GTOは1996年にカリフォルニア州サンカルロスにあるダニ・インベストメントの3代目オーナー、デニス・ファーレイ氏の所有となったことも明らかに。
デニス・ファーレイ氏はこのシャーシナンバー56773を4年間保持し、2000年4月8日のフェラーリ・マーケット・レターにて、オドメーターが4,517kmであることを明示して売りに出し、ここでこのフェラーリ288GTOは(2001年に)4番目のオーナーへと売却されます。
この新しい所有者(匿名)のもとで、このフェラーリ288GTOは定期的な点検を受け、それに伴う走行距離の記録、さらには詳細にわたる請求書がファイルに用意されており、2020年7月31日に完了した大規模なサービスも記載されています。
この際の整備を担当したのはイリノイ州ヒンズデールにあるコンチネンタル・オート・スポーツで、すべてのフルードを抜いて交換し、同時にカムベルト・サービスを実施し、新しいウォーターポンプとスパークプラグ、新品のピレリPゼロ・タイヤを取り付けるなどした結果、かかったコストは総額で18,000ドル以上。
直近の整備は2022年1月31日に(同じく)コンチネンタル・オート・スポーツにて行われ、オイルおよびブレーキフルードの交換と油圧計センサーの交換が行われた、という記録が残ります。
このクルマは上述の通り、フェラーリ・クラシケの認定を受けていますが、認定を受けるに際して(アメリカに輸入されるに際して交換された)マイル表示のスピードメーターがもともとの「キロ表示」へと戻されており、この記録もコンチネンタル・オート・スポーツの請求書(2022年8月22日)に記載されているのだそう。
この1985年式フェラーリ288GTOは、現時点でわずか7,989kmしか走っておらず、今回の出品はフェラーリの最も魅力的なロードカーの一つであり、もっとも希少なスペチアーレでもある大きなチャンス。
フェラーリ・クラシケの証明書、そして保証書に取扱説明書、定期的な整備履歴、オリジナルのツールキットが揃うなど、およそコレクターが望みうる条件のすべてを揃えていると考えてよく、激しい争奪戦となることは間違いないものと思われます。
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