| ランボルギーニが最初のEVとして選択したのはスーパースポーツではなくGTである |
現時点ではまだ富裕層が納得できるピュアエレクトリックスポーツを作ることは難しい
さて、約5年前にランボルギーニは「全ラインアップのハイブリッド化」を行うという決定を下し、ピュアエレクトリック化への移行までに一呼吸置くという決断を下していますが(同じフォルクスワーゲングループ傘下のベントレーは完全電動車への移行を目論んでいた)、これによって”EVのみが唯一の未来”だと信じていたフォルクスワーゲンから放出される寸前といったところまで状況が進んでいたわけですね。
結果的にランボルギーニの採用した戦略は「正解」であった
ただしその後EVの需要減少によって「ハイブリッド、PHEV」が脚光を浴び、贅沢で大排気量を持つ内燃機関(ICE)搭載車への需要がかつてないほど高まっているのが現在の状況で、つまりランボルギーニの行なった決断が正しかったことが証明されていることとなりますが、今回最高技術責任者のルーヴェン・モール氏は改めて「ランボルギーニのピュアエレクトリックスーパーカーは今のところ成功しないだろう」という見解を述べています。
「今の時点では、少なくともスーパースポーツカーとしてのEVの市場投入は適切な時期ではありません。市場にはあまり成功していない電気自動車が多く見られます。」
-
ランボルギーニCEO「今のところ、売れているエレクトリックハイパーカーは存在しません。もしかしたらその時代は永遠に来ないかもしれません」
| 少し前の「エレクトリックこそ未来」という風潮とは異なり、現在は急激にエレクトリックが敬遠される傾向にある | 特に消費者はピュアエレクトリックカーに「そっぽを向いている」と言っていい さて、ランボ ...
続きを見る
実際のところ、エレクトリックハイパーカーをいち早く発売したリマックCEO、メイト・リマック氏ですら「ピュアエレクトリックスポーツはもはやクールではなく、富裕層が求める製品ではない」とコメントし、あれだけ「完全電動化ラインアップを目指す」としていたベントレーも「もはや誰も高級エレクトリックを欲しがらない」とも。
一方でランボルギーニは全モデルをハイブリッド化し、成功のための完璧なポジションを確保しており、現在はV12エンジンを搭載したレヴエルト、V8ツインターボエンジンを積むテメラリオ、やはりV8ツインターボを採用するウルスSEという3モデルすべてに何らかの電動アシスト(PHEV)が搭載されており、競合他社が遅れを取る中で理想的な立ち位置にいます。
「ハイブリッド化されたラインアップに非常に満足しています。これで次の10年間生き延びることができます。しかし将来的に、ランボルギーニはエレクトリックパワーへの移行が必要だと思います。マインドセットが変わるのは時間の問題だからです。」
実際のところランボルギーニはその時期が迫っていることを理解しており、2028年には初の全電動車「ランザドール」を発売する計画を持っていて、これは”スーパーカー”ではなく、SUV型の”2+2グランドツーリングカー”。
この選択につき、ルーベン・モール氏は「大多数の似たようなEVの中で際立つことが最大の課題であった」と述べ、「製品の明確さ、定義、ブランドDNAの維持が重要です。ランボルギーニの完全電動車には興奮の要素が必要です。それは最大の出力や加速だけを指すものではありません」。
さらにルーベン・モール氏は、初の電動ランボルギーニは「同ブランドのガソリン車と同様の荒々しさや興奮」を持つべきだとも述べ、「初の電動ランボルギーニを持ち出す際には、ブランドの特性を慎重に管理することを確約します。標準的な電気自動車、1メガワットのパワーを持つものを持ち出そうとは考えていません。違いが必要です」とも。
ランボルギーニもヒョンデ アイオニック5 Nを高く評価していた
なお、”興奮”を感じさせるEVとして思い浮かぶクルマの一つがヒョンデ・アイオニック5 Nですが、この興奮のひとつの理由はMT車をシミュレートしたパドルシフトトランスミッションのおかげだと考えられ、しかしルーベン・モール氏はその革新を評価しつつも、それがランボルギーニブランドには合わないと考えているもよう。
「彼らがこの点に取り組んでいることには全幅の敬意を表します。私にとって、電気自動車における感情的なつながりについて語る正しい方法です。それは加速だけの問題ではなく、彼らはこのような形で最初に取り組みました。一方で、シミュレーションされたギアがランボルギーニブランドに適しているかと言われれば、あまり適していません。私たちの視点からすると、一歩進んだものを求める必要があります。内燃機関を模倣するのはおそらく今のところは正しい答えでしょう。しかし、電動運転の体験が内燃機関では得られない何かであると顧客に納得させる必要があります。そうでなければ、感情的なバイヤーを電動に留めることはできません。」
同氏がそう語る理由はよく理解でき、というのもガソリン車を真似するだけではガソリン車を越えることができないばかりかガソリン車の下位互換でしかなく、しかし「いまEVには興味を示さない富裕層の目をEVに向けるには」ガソリン車以上の存在で無くてはならないためで、ランボルギーニとしてはそれを「実現できない限り」ピュアエレクトリックスーパースポーツを発売しても意味はないと考えているのかもしれませんね(半端なものを発売するとブランドイメージを毀損することにもなりかねない)。
合わせて読みたい、ランボルギーニ関連投稿
-
ランボルギーニ・ランザドールはなぜ「あの奇抜な」ボディ形状なのか?「現在持たない車種を投入する必要があったが、セダンは2つの理由からNOになった」
| 色々な理由やタイミングが重なり、そこでこのボディ形状が誕生したようだ | この「新種」を考えだしたのは”さすがランボルギーニ”といったところである さて、ランボルギーニは「初のピュアエレクトリック ...
続きを見る
-
ランボルギーニが今後10年の計画を発表、2029年にはランザドールに続く「二台めのピュアEV」を発表するとコメント。2024年にはウラカンとウルスの後継モデルも
| ランボルギーニのラインアップは今年「すべてPHEVに」、その後にはピュアエレクトリックカーを投入 | ウラカン後継モデルは3月に発表される可能性が高いと目される さて、ランボルギーニが今後10年の ...
続きを見る
-
ランボルギーニ・ランザドールに積まれるモーターは自社開発ではなくグループ内から調達。なぜランボルギーニはフェラーリのようにモーターを内製化しないのか?
| ランボルギーニは、エレクトリックモーターそのものよりも、それが発生するパワーをどう使うかを重視している | たしかにランボルギーニはウラカン、ウルスともにグループ内でパワーユニットを共有しているが ...
続きを見る