| 2台目のマスタング・ブリットがまさかの発見 |
映画「ブリット」で使用され、その後主演のスティーブ・マックイーンが買い取って乗っていたフォード・マスタングが昨年偶然にもメキシコで発見されましたが、今回は同じくブリットにて「スタント用に」使用された別のマスタングが発見。
これはサンフランシスコの坂道にて、ダッジ・チャージャーとのカーチェイスを繰り広げる場面で「ジャンプ」を見せた個体とのことですが、こちらも「偶然発見された」マスタング同様にスクラップにされたと思われていたようですね。
スティーブ・マックイーンが映画「ブリット」で乗ったマスタングがメキシコで発見。フェイク?
フォードが新旧二台のマスタング「ブリット」をグッドウッドに展示。実際に走行も
「マスタング・ブリット」登場。映画”ブリット”に登場しスティーブ・マックィーンがドライブした車へのオマージュ
ずっと放置されていたマスタングがあの「ブリット・マスタング」だった
この「2台目のブリット・マスタング」の発見もまた偶然。
そのストーリーとしては、まずレストア業を営むラルフ・ガルシア氏が、客からレストア依頼のあったポンコツマスタングの情報を得ようと、アメリカで有名なマスタング専門家(フォードのお墨付きで、今回グッドウッドに展示された1台目の”ブリット・マスタング”のレストアにも参加)、ケビン・マルチ氏に連絡。
ケビン・マルチ氏はマスタングの仕様に詳しく、ラルフ・ガルシア氏はそのポンコツマスタングの「本来の姿」をただ専門家に確認したかったようですね。
しかしシャシーナンバーとともに問い合わせを受けたケビン・マルチ氏は直ちにこれが「ブリットに使用されたスタントカー」であると気づき、すぐさまラルフ・ガルシア氏に「そのマスタングが持つ背景を理解しているのかどうか」を聞いたところ、ガルシア氏の答えは「ノー」。
つまりラルフ・ガルシア氏はそのマスタングを「単なる古いマスタング」だと思っており、映画「60セカンズ」に出てくるマスタング”エレノア”にカスタムしようと」と考えていた、とのこと。
そこでケビン・マルチ氏は「エレノアにカスタムするのも、レストアを開始するのもちょっと待ってくれ」と申し入れ、自ら出向いてそのマスタングを調査したところ、車体番号やそのほかの状況からそれが「まぎれもない2台目のブリット・マスタング」であると確証を得たというのが今回の流れで、まさに事実は小説より奇なり。
なぜブリット・マスタングは行方不明に?
その後の調査で明らかになってきたのは、映画作成当時、ビュイックのレーシングカー作成で有名だったマックス・バルコウスキー氏が当時ワーナー・ブラザースから「ブリット撮影用に同じ仕様のマスタングを二台用意してくれ」と頼まれてダークハイランドグリーンの68年式マスタングを二台手配。
一台は撮影中にスティーブ・マックイーンがドライブし、もう一台はスタント用として過激なシーンに使用されることに。
その後撮影が完了し、1台のマスタングはスティーブ・マックイーンに買い取られ、残るスタントカーはバルコウスキー氏の元へ戻ってきますが、その際に同氏のガレージには保管するスペースがなく、彼はマスタングをスクラップ業者に販売した、と記録されています。
その後マスタングはスクラップにされずメキシコへと売られることになり、その後レッドやホワイトへとカラーを変えて乗られるも、大きな事故の後オーナーに見捨てられ、修理されることなく今まで業者の裏庭で朽ち果てるのみだった、とのこと。
その後時は流れて現代。
ヒューゴ・サンチェス氏なる人物がこのマスタングを発見して5000ドルでマスタングを買取り、転売を試みるも買い手がつかず、ラルフ・ガルシア氏の営むレストアショップへ持ち込んでエレノアへと改造しようとしたというのが冒頭の部分ですが、もしヒューゴ・サンチェス氏がマスタングを発見しなかったら、もしラルフ・ガルシア氏がマスタングの専門家に連絡を取らなければ、この「ブリット・マスタング」はその素性が明らかになることなくその人生を終えることになっていたワケで、偶然に偶然が重なった出来事だと言えそう。
それにしても、ブリット公開50周年にあたる今年、映画に使用された二台のマスタングが世に出て来ようとはなんたる偶然。
VIA:Autoclassics