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| 巨大企業の割に動きが軽い、それがフォードである |
この記事のポイント
- 戦略的パートナーシップ: フォードがハイブリッド車(HV)用バッテリーの供給契約について中国BYDと最終調整中
- 脱・純EVへの舵切り: 需要鈍化を受け、フォードは純EVへの投資を抑制しHV/PHEVを販売の柱へ据える戦略へ転換
- 中国技術の活用: すでに中国版「ブロンコ」にはBYD製バッテリーを搭載。その高いコスト競争力を世界展開へ
かつて「EV一本足打法」を目指したフォードではあるものの、現在大きな転換期を迎えており、今回は「世界最大のEVメーカーであるとともにバッテリー界の巨人でもあるBYDとの提携交渉が最終段階にある」と報じられています。
これは単なる部品調達にとどまる話ではなく、米中の自動車メーカーが「実利」で結びつく、新たな時代の象徴かもしれません。
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フォードはいまボクがもっとも注目するアメリカの自動車メーカーである
なお、フォードは(お膝元の米国で)乗用車から撤退して「トラックとSUV、マスタングしか販売しない」という方針を決め、その一方ではF1参戦、そして各種モータースポーツにも参加を決めるなどこれまでのイメージを大きく変えようとしています。
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フォードが2027年にル・マンへと復帰すると発表。「1960年代にフェラーリに挑み、勝利した場所に戻ります。私たちがレースをするとき、目指すのは勝利だけです」
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そして今回は「宿敵」ともいえる中国の自動車メーカーと手を取り合うという柔軟性を見せており、新興自動車メーカーですらびっくりするほどの速度にて変わりつあるわけですね。
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フォードCEO「うん無理。トヨタには勝てない」。大衆車市場から撤退し、趣味性の高いクルマに特化する“感情に訴える”新戦略について語る
Image:Ford | フォードCEO、ジム・ファーレイ氏は「思い切った戦略」でも知られる人物である | 今の時代、これくらい「割り切ってないと」生き残れないのかもしれない この記事のポイント(要約 ...
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そしてこういった「変わり身の速さ」は現在のCEO、ジム・ファーレイ氏の手腕によるところが大きく、フォルクスワーゲンとの提携についても、VW側では「2ヶ月」協議にかかったところ、フォードでは「わずか15分」でこれを決断。
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フォードとVWとの「商用車における」提携に際し、フォード側で協議に要した時間は15分、しかしVWでは「2ヶ月」。この差が現在の状況の「差」を生んだのかも
Preproduction model shown. Available early 2025. Image:Ford | フォードは今でも創業者一族が最高の権限を持ち、意思決定のルートが集約されてい ...
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さらにジム・ファーレイ氏はわざわざシャオミSU7を米国に輸入してまでその性能を試すなど中国勢に対しても「軽視しない」姿勢を保っており、こういった動きもあって、ぼくはフォードにつき「現在もっとも注目すべきアメリカの自動車メーカーであると捉えています。※現在のビジネスにおいて、もっとも重要なのは計画にこだわることではなく、状況に応じて計画をあっさり捨てるほどの柔軟性である
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フォードCEOが半年間シャオミSU7を運転し、「手放したくない」と語る。「通常は他社製品を褒めないのですが、このクルマは本当に素晴らしいと認めざるをえません」
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なぜフォードは「宿敵」BYDの手を借りるのか?
ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、フォードはHVモデル向けのバッテリー供給についてBYDと交渉を進めていて、この動きの背景には、かねてより報じられる通りフォードが直面している「EV需要の冷え込み」という厳しい現実があるとのこと(EV一本の戦略を破棄してEVとPHEVに注力)。
- コスト削減の至上命題: BYDは世界屈指の低コスト製造能力を持ち、特に「ブレードバッテリー(LFP)」は安全性とコストで圧倒的な優位性を誇る
- 供給網のグローバル化: 米国本土での製造は政治的制約があるものの、欧州や東南アジアなどの海外拠点向けにBYD製バッテリーを導入することで早期のHV拡充を狙っている
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フォード・ハイブリッド戦略の最新スペックと展望
フォードは2030年までに世界販売の約半分をハイブリッド、PHEV、またはEVにする目標を掲げていますが、その中核を担うのがBYDの技術です。
主要な戦略指標と採用実績
| 項目 | 詳細・実績 |
| 主な供給元 | BYD(子会社のFindreams経由含む) |
| 採用車種(中国) | フォード・ブロンコ EV / PHEV |
| HV販売実績 | 前年同期比18%増(直近第4四半期) |
| 戦略転換のコスト | EV事業の再編に伴い約195億ドルの損失を見込む |
| 将来目標 | 2030年までに電動化比率50%(HV/PHEV含む) |
注目すべきは、すでに中国で発売された「ブロンコPHEV」にBYD製バッテリーが搭載されている点で、今後はこの成功例を他のグローバルモデルへと広げていく計画というわけですね。
参考までに、「Findreams(ファインドリームス)」はBYDのバッテリー製造部門が独立した子会社で、テスラやトヨタにもバッテリーを供給しており、今や「世界のバッテリー供給網のハブ」と言われるほど。
フォードがこの巨大組織と直接繋がることは「バッテリー調達コストの大幅な削減」を意味していて、いまや避けて通ることが出来ない道であるとも考えられています(フォードがプライドよりも合理的判断を優先させたのは賢明である)。
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【市場の視点】米中対立の中でも止まらない「実利」の結びつき
現在、米国政府は中国製バッテリーに対して厳しい関税や規制を設けています。
しかし、フォードのこの動きは「中国(BYD)のバッテリー技術なしでは、競争力のあるHV/EVは作れない」という業界の本音を映し出しており・・・。
- 米国内の状況: 米ミシガン州にはCATLの技術ライセンスを受けた工場を建設中で、しかし共和党議員などからの政治的圧力も受けている
- 海外市場での勝ち筋: 米国以外の市場(欧州やブラジルなど)では、BYDの安価で高性能なバッテリーを採用することがテスラや中国メーカーに対抗する唯一の手段となりつつある
結論:フォードの「現実路線」は成功するか?
195億ドル(約2.9兆円)もの巨額損失を計上してまでEV戦略を修正したフォード。
その決断は「敗北」ではなく、変化の激しい市場で生き残るための「高度な柔軟性」であり、そしてスピードを優先して進むためには「時間のかかる自社開発」を諦め、欧州市場ではルノー、商用車ではVWなど「その道の得意な会社」と手を取り合うという戦略を取っています。
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そしてバッテリーに関してはBYDという強力なパートナー(あるいはライバル)の力を借り、得意のトラックやSUVを「最強のハイブリッド車」として再生しようとしているわけですが、フォードの第2章が今まさに始まろうとしているわけですね。
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参照:The Wall Street Journal, Ford
















