| もしかすると、宏光ミニEVはGMとWulingとの合弁会社に大きな利益をもたらすかもしれない |
現代の自動車は「単体」での損益を語ることができなくなっている
さて、とにかく中国で「売れに売れている」と言われる宏光ミニEV(Hong Guang MINI EV)。
その理由は「50万円以下」という破格のプライスにあると考えられますが、2021年は年間で40万台を販売するのではないかという予測もあるようです。
なお、この価格を実現するにはさすがに人件費の安価な中国といえど相当な苦労をしたようで、現地での報道によれば、この宏光ミニEV1台あたりの利益はなんと89元(日本円で1500円)。
それでも数が売れれば大きな利益に
この「利益」について、どこまでを原価として計算したものかはわかりませんが、この数字はとてつもなく少なく、「自動車業界でもっとも儲からない」日産自動車の1台あたり利益平均である11,000円すら下回る水準です。
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ただ、40万台も売れるとなると「6億円」の利益総額となるので、1台あたりで儲からなくとも、トータルではかなりな利益になるのかも(加えて、オプション販売や、納車後の整備等はプラスアルファでの収益となる)。
現在中国では「損して得を取る」ビジネススタイルが主流であり、とにかく利益を削ってでも数を販売し、市場での認知度を向上させるスタイルが好まれる模様。
これがメインストリームとなった理由としては、「市場(人口)が多い」ため、利益単価の少なさを数でカバーできるからだと思われ、ここは人口が限られる日本とは圧倒的に異なるところです。
宏光ミニEVの狙いは別のところに?
なお、中国でも欧州や米国同様に「環境クレジット」が導入されており、これは「環境を汚染するクルマを販売した分だけクレジットを失い(罰金を払い)」、「環境に優しいクルマを販売すれば、その分クレジットをもらえる」というもの。
ただ、もらうぶんのクレジットは「現金」ではなく、しかし「失うクレジット」に充当(差し引き)でき、これも欧州や米国同様に他社へと販売することも可能です。
現在、この宏光ミニEVを精算するのは中国のWulingとGMとの合弁企業ですが、ここで販売するクルマは「クレジットをプラスマイナスすると」現在マイナスであり、そのマイナス分クレジットを補填して罰金を支払わなくてもよくするためにテスラからクレジットを購入している、とも報じられています。
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そこで考えねばならないのが「クレジットの価値」で、報道によれば「1クレジットは3000元(約5万円)に相当する」とのこと。
つまり、宏光ミニを売れば売るほどクレジットが加算され(宏光ミニ1台につき、2クレジットを獲得)、GMとWulingの合弁会社が支払う罰金、およびテスラから購入するクレジットの金額が少なくなるということを意味します。
さらには、この宏光ミニが売れまくれば「クレジットが余る」可能性も大いに出てくることになり、この余ったクレジットはもちろん他社へと販売することが可能なので、GMとWulingにとっての新たな収益源となる可能性も。
そうなると、ますます「損して得を取る」という性格が強まることになり、宏光ミニの価値は企業にとって「かなり高い」という判断もできそうですね(これに限らず、各社がEVを売りたいと考える背景にもクレジットが大きく関係している)。
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参照:Xcar