ヒョンデの高級ブランド「ジェネシス」がカリフォルニアにデザイン拠点を新規開設。なぜ自動車メーカーは「カリフォルニアでデザインを行いたがる」のか？

Image：Genesis

｜　カリフォルニアはアメリカの中でも「もっとも販売が期待できる」地域であり、文字通り現地の風景の中では「すべての見え方が異なる」　｜

そして多くのメーカーがデザイン拠点を構えており、ジェネシスは「スカウト」もしやすくなるだろう

さて、ヒョンデの高級ブランド、ジェネシスが「アメリカの顧客にさらにアピールするため、カリフォルニアに新しいデザインスタジオを開設する」と発表。

この施設は2025年第1四半期に開設予定だそうですが、80,000平方フィートの広さを持ち、最大45人のチームメンバーが勤務する予定だとアナウンスされています。

なお、この「カリフォルニアにデザインセンターを開設する」ことのメリットはいくつか存在し、ひとつが（最大の目的でもあると思われるが）「北米の顧客にアピールできること。

現在北米はジェネシスにとって最重要市場に成長していますが、北米（そして最も販売が期待できるカリフォルニア）では日差しが欧州やアジアとは異なり「クリーンで強い」ため、自動車の見え方が他地域のそれとは異なって見えるといい、よって「もっともクルマを売りたい」カリフォルニアでデザインを行うことは理にかなっていると思われます。

参考までに、マツダRX-7（FD3S）のデザインコンペはカリフォルニアで開催されたそうですが、日差しが強かったために「丸いデザインでも陰影が美しく見え」、その結果として曲線と曲面を多用した案が採用されたのであろうと（当時のデザイナーが）語っていて、同時に「もし（マツダ本社のある）広島で開催されていたら、別の（直線的で角張った）案が採用されたかもしれない」とも述べており、つまりはそれくらい「カリフォルニアでは見え方が違う」ということになりそうです。

参考までに、こちらはGoogle本社を訪れた際に撮影した画像ですが、これを見ても分かる通り「影がくっきり」出ていて、日差しそのものは中東や東南アジアのほうが強いように思えるものの、湿度や大気中に交じる不純物の関係か、カリフォルニアのほうがずっと色々なモノの陰影が明確に出るように思います。

こんな感じでプレスラインも明確に出るわけですね。

さらにジェネシスはデザイナーの獲得が容易に

そしてもう一つの利点が「ジェネシスがデザイナーを（他社から）獲得しやすくなるであろう」ということ。

ヒョンデ、そしてジェネシス、さらに傘下にあるキアは欧米の著名デザイナーを獲得する傾向が強く、過去にはランボルギーニ、ブガッティ、ジウジアーロ、ベントレー、BMW等のデザイナーをこれまでに獲得したことが報じられていますが、多くの自動車メーカーが（上にあげた理由と同じく、主要市場の北米での車両デザインを重視し）カリフォルニアにデザインセンターを持っており、よってジェネシスはそういった「他社のデザインハウス」からデザイナーを引き抜くことが容易になるのかもしれません。

つまり、現地には有能なデザイナーが溢れていて、そしてそういったデザイナーにとって「韓国よりはカリフォルニアの方が魅力的（文化的違いもあり、欧米人にとって韓国への移住となると躊躇する場合も少なくはないであろう。加えて重要なポジションにあるデザイナーであれば、年齢的に家族を持っている可能性も高い）」に感じられるであろう、ということですね。

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ジェネシスのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるルク・ドンカーヴォルォケ氏は「ジェネシスは自動車デザインのリーダーです。私たちは常に革新を追求し、日常生活からインスピレーションを得ることを誇りに思っています。ロサンゼルスの気候、文化芸術、そして自動車シーンは、自然と光を取り入れたダイナミックで魅力的な作業体験を作り出す可能性を提供してくれました」とコメントしていますが、同氏もまたランボルギーニのチーフデザイナーからの転身組であり、その数々の魅力的なデザインを生み出しジェネシスを成功に導いたことから現在では「要職」にある人物です。

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この新しいスタジオは、温かく自然で落ち着いた雰囲気を持つよう設計されており、従来のオフィス空間よりも創造性や集中力を高めることを目指しているとのことで、静かな孤独を求める人のためのエリアや、ハイテクなデジタルデザインラボなど、さまざまなスペースが提供される予定なのだそう。

そのほかスタジオ内には、色・素材・仕上げを行うスタジオ、クレイモデル制作のためのワークショップ、ライブラリー、オープンなコラボレーションエリア、そして複数の会議室が含まれるほか、ジェネシスはこの施設をイベントや食事の場としても活用する予定だとされ、ロビーには韓国の伝統を反映したモダンなティープラットフォームも設置されることについても言及されています。

現在、ジェネシスはドイツ、アメリカ、韓国にデザインスタジオを構えるにいたり、この新しいカリフォルニアのスタジオは今後ジェネシスのグローバルなデザインネットワークを補完することになりますが、ニューヨークにあるジェネシス・ハウスは「専用のデザインスタジオではない」ものの、顧客向けの体験を提供する場として機能しており、食事、イベント、ティー・パビリオンなどを楽しめるなど、拠点によってそれぞれ性格が異なるようですね。

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