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【試乗:新型トヨタ86】迷ったらこれで間違い無し。現在もっとも純粋な国産スポーツカー

2017/03/23

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トヨタ86のマイナーチェンジ版に試乗。
「マイナーチェンジ」は日本車に対して用いられることが多く、輸入車の場合は「フェイスリフト」となりますが、両者とも意味合いとしては同じですね。
今回の86の場合はこれまでの変更に比べると内容が大きなものとなっており、いわゆる日本的表現だと「ビッグマイナーチェンジ」ということになります。

これよりも前に変更を受けた時は「既存オーナーもメリットを享受できるような変更内容でないといけない」として変更の内容も簡単に交換できるパーツが主流でしたが、今回は比較的大きな内容の変更となっており、列挙すると下記の通り。

・フロントバンパーのノーズが下がり開口部がワイドに。カナードも追加
・ヘッドライトがLEDに
・リアコンビランプもLEDに
・86エンブレムが円形に(空力を考慮しているとのこと)
・ボディ剛性の向上(トランスミッションマウントなど)
・マニュアル車の出力が200馬力から207馬力に
・マニュアルトランスミッションのファイナルが4.1から4.3になりクロスレシオ化
・ライトの中など全体的に「86」ロゴが増えた
・ウインカーがヘッドライト内部に移ったので法規的に-15mm以上の車高ダウンが可能に
・フェンダーガーニッシュ変更
・GTリミテッドではリアスポイラー形状変更
・ステアリングホイールが3ミリ小径化
・GT系にはステアリングスイッチが追加
・MT車にはヒルスタートアシストが装備
・GT系ではメーター変更(タコメーター、マルチインフォーメーションディスプレイ)
・GT系にはパワー、トルク、ラップタイム、Gフォース、アクセル開度、ステアリング操作量がマルチインフォーメーションディスプレイに表示
・油温計追加
・サスペンション(ダンパー、スプリング)設定変更
・スタビライザー変更
・スポット溶接追加
・GグレードにトルセンLSD標準装備
・Gは約14万円、GT系は約8万円の値上げ

全体的にはコンセプトを守ったまま進化したと言え、外観では空力と冷却性能の向上が主なところ。
フロントバンパーは特にダウンフォースを強く意識しているように見え、フロントの接地能力が向上しているであろうことも想像できます。
加えてダウンフォースだけではなく左右の空気の流れまでコントロールし「左右からボディを押さえつける」ことにもこだわったとされ、そのためサイドの「86」エンブレムまでも空力を考慮したと言われており、そこまで追求した中で「例のアルミテープ」が出てきたのはある意味納得ではありますね。

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運動性能で言えばスポット増しやダンパー/スプリングの変更など細かな設定変更が行われ、地味ながらも「真剣」に改良に取り組んでいることがわかりますが、操作系に関してもステアリング径をわずか3ミリだけ小さくしたりと相当に突き詰めた変更内容に。

とりあえず実車確認ですが、第一印象は今までのエッジが目立たなくなったぶんマイルドな印象に。
加えてヘッドライト内部が複雑に、テールランプの形状が立体的になった(ポルシェ911が991→991.2になったような感じ)こともあってかなり高級感が増しているように思います。

なお86は車高を落とすとかなり格好良くなる車で、最低地上高を規制範囲の9センチまでに落とすとほぼフェラーリ488GTBと変わらない全高となります。
しかしながらこれまでは一定以上車高を落とすとウインカーの位置が法規制を満たさなくなるので、「最低地上高的にはまだ落とせるのに」途中でやめなくてはならないもどかしさもありましたが、今回のマイナーチェンジではウインカーの位置を上にずらしてその問題を解決しており、本当に細かいところまで考えてきたなあ、という印象はありますね。

内装はおそらくはオーナーでないとわからないような変更の数々ですが、とりあえずシートに腰を下ろします。
シートの高さは40センチとトヨタ車中で最も低く、感覚的にはポルシェ・ボクスターと同じような位置(もうちょっと高いかも)。
シートポジションやミラーを合わせてペダル類の位置や重さも確認したところでエンジンスタート。
振動や音はかなり小さく、これであれば早朝でも近所に遠慮することはなさそうです。

クラッチペダル(試乗車はMT)は重くもなく軽くもなく「丁度よい」重さで、ストロークは結構深め。
シフトフフィールは素晴らしく、「手首の返しだけで決まる」重さです。
全体的に操作系の印象は良く、おそらくここは相当にトヨタが追求した部分であろうこともわかります。

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アイドリングスタートでも全く不安はなく、車はそのままスルスルと発進。
7馬力とは言えども出力が向上した馬力、そしてちょっとだけ大きくなったトルクがこれに貢献しているように思います。
そのままどんどんシフトアップして加速しますが、けっこう勇ましい音が車内に入ってくるようになっており、ここもマイナーチェンジで改良された部分なのかもしれませんね。
比較的高い速度でのクルージングは快適で、6速がハイギアードになったというものの振動や騒音の増加は無いようで、長距離のツーリングも問題なくこなせそうに思います。

さて、ここでワインディングロードに入りますが、最初に思ったのは「予想したほど曲がらない」ということ(一般的な範疇では良く曲がるのですが、スポーツカーということを想定すると、という意味)。
なぜかと考えたのですが、「ステアリング操作だけで曲がろうとするとアンダーが出る」のですね。
ちゃんとブレーキを踏んで荷重を前輪に乗せて曲がる、加えてリアタイヤにトラクションをかけて駆動力で曲がる、ということを意識しないとクルリと旋回せず、しかしこれらを意識すると気持ちいいほどよく曲がります。

これにはちょっとびっくりで、曖昧乗り味が多く、誰がどう操作しても、燃料が満タンでも空っぽでも同じ動きをする車ばかりを作るトヨタがここまで操作に忠実な車を作るとは、という感じ。
ぼくは86について何度か購入を検討したことがあり、登場したばかりの頃、そして今回のマイナーチェンジ直前にもレンタカーを借りて一日中テストをしたことがあるのですが、正直なところマイナーチェンジ後の86の出来の良さには驚かされっぱなしです。

ブレーキもよく効き、一般道だとまず問題はなさそうなレベル。
トヨタにしては珍しく「カックン」ではなく、踏んだ分だけしっかり効くのでコントロールもしやすそうです。
サスペンションについては(オプションのザックスではなく)ノーマル仕様ですが、比較的よく動く足回りで不穏な動きもなく、ダブルレーンチェンジを行っても揺り戻しなど無く、ピタリと揺れが収まります。
ただ、初期のあたりがきつくてちょっとゴツゴツした印象があり、不正路はちょっと苦手な印象も。
ただしボディはそのような状況でもまったく捩れている印象はなく、ボディ剛性がここまで高いのであれば、より高性能なサスペンションに交換したほうが良いかもしれません(もし86を購入するならばオプションのザックスか、車外品でビルシュタインのサスペンションキットを選びたい)。
もうちょっとあたりが柔らかく、ダンピングが強く、伸び側が長いサスペンションのほうが運転しやすいようにも思われ、このあたりはボディの補強などとあわせて考えたいところ(ただし普通に乗るのであれば問題はない。86の完成度が高いのでついついもっと高いレベルを求めてしまう)。

はっきり言って「スポーツカー」としての86のレベルは非常に高いところにあり、徳大寺有恒氏がポルシェに対して表現した「ポルシェという車は、そこへ行こうと思ったときには、すでにそこにいる車だ」というものに近いように思います。
普通に道路を走っていて標識を見落とし、あわてて車線変更をしなくてはならないような場面でも思いどおりの場所に入ることができ、カーブでもブレーキ、ステアリング、アクセルの操作が一致すれば面白いように曲がる車。

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言うなればFRポルシェ(944あたり)に近いフィーリングを持っており、「走る、曲がる、止まる」がしっかりできる稀有な日本車と言えるでしょう。
そして、それら操作を学びたいと考える人にとっては最適な車であり、オプションパーツも豊富なのでそれらパーツを装着することでどう車が変わるのかを知ることができる「教材」としても優れているように思います。
要は「ドライバーと一緒に成長できる車」で、強くお勧めできる車であり、同時に自分自身に対してもかなり購買意欲をそそられる車でもあります。
なお操作に対するリアクションが正確であり、ちゃんとした操作をしないと思ったとおりに(速く)走れないのも86の特徴で、そこもポルシェ(とくに911)に似ていますね。

先日試乗したアバルト124スパイダーも非常に優秀なスポーツカーですが、そちらはターボエンジン採用とオープンレシオで比較的おおらかな味付けとなっており、それはブレーキやハンドリングも同様。
一方86はけっこうシビアであり、NAエンジンのパワーバンドをクロスレシオを駆使してキープし、同時にアクセルとステアリング操作もビシっと一致させなくてはならないという「スイートスポットの狭さ」があります(とくに1-2速はかなりローギアードに思えるのですが、そのあたりのギア比がこれまでと変更されているのかどうかは不明。低速トルクが増したのでそう感じるだけなのかもしれない)。

その意味で86は「かなり狭いところ」を狙ってきたなあという印象があるのですが、現代においてはどの車もマイルドになってしまい、クルマ本来の挙動や操作に対する反応が曖昧になってきているので、そこは86の独占市場なのかもしれません。
とにかく現代において、これだけ「ピュア」な車も珍しいと思われ、そこは新鮮な驚き以外のほかはない、と言えますね。
これまでの86に比べてもその「ピュア」さは際立っており、一番変わったのは「ドライバーの操作に対する反応と、意のままに操れる基本性能の高さ」と言えそうです。
ここはトヨタが86の既存オーナー像/市場での86の捉えられ方を研究し、いたずらに高級や快適路線にシフトせずにしっかりと86のポジションを認識し、よりユーザーが86求めている内容を反映させてきたと想像できるところ。

トヨタは86にターボエンジンを搭載しないことについて「ターボは安易な解決策」と論じており(実際はターボを押し込むだけのスペースが無いだけなのかもしれない)、それを身をもって体感することが出来た試乗で、「パワーよりももっと重要なものがある」ということを思い出させてくれた試乗でもあったと思います。

なお前後重量配分はドライバーと助手席に人が乗った状態で53:47なので空車状態だとフロントの荷重がけっこう重いということに。
しかしながらこれはほかにFRスポーツカーを持たないトヨタとしてはよく頑張ったと褒めるべきですが、逆にここまで車の出来が良いと「トランスアクスルにして空車状態にて50:50まで持ってきていれば」完璧だったのになあ、とも考えます(そのぶん価格も高くなり、そうなると簡単に手が出なくなるのでやはり難しい)。

将来的に速く走る技術や知識を身につけたいのであれば、そして走る楽しみを知りたいのであれば、マイナーチェンジを受けたトヨタ86は強力に推薦できる車と断言します。

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