| 中国がついにあの悪名高い規制を撤廃へ |
中国が「自動車分野における外国企業の出資制限」を2022年までに順次撤廃、と発表。
この「外国企業の出資制限」はかなりやっかいな規制で、早い話が、中国内で会社を作ろうと思うと、現地企業に株式の過半数を持たせねばならない、というもの。
たとえばホンダが中国に進出し、現地法人を作ろうとすると、「100%ホンダの子会社はダメ」ということで、中国企業をパートナーとして(50%以上の株式を持たせて)会社を作る必要があるわけです。
中国現地法人を作るメリットは?
よってホンダは華南地区だと「広州汽車」をパートナーに選び、「広州本田」なる現地法人を作っていますが、これにはメリットとデメリット双方が。
メリットとしては、中国内で生産するため、作ったクルマは「中国車」として扱われ、関税を回避できることに。
逆に中国で生産せずに日本から中国へと輸出すれば、中国側では「輸入車」となってしまい、高額な関税が課され、それだけで「車の価格が倍くらい」に。
そうなるともちろん現地の中国メーカー、そして他に合弁で展開している海外自動車メーカー(VWやフォードなど)が中国で生産するクルマとの価格差が大きくなり、「全く売れない」わけですね。
しかしながら「合弁」にて現地での生産を行えば「安く」売ることができますし、合弁相手の中国企業も「売ってナンボ」なので自国内でたくさん売ろうと努力することに。
逆に中国現地法人を作るデメリットは?
中国企業を相手に合弁会社を作り、現地生産を行うにはデメリットも。
それはズバリ「技術の移転」。
現地でクルマを生産するということは、そのための設備や設計に関するノウハウがそのまま流出してしまうということで、これはかなり大きな問題だと言えます。
相手企業は50%以上の株式を持っているので「議決権」があり、つまりは情報を知ることができ、そういったノウハウを中国相手に「隠す」のはまず不可能。
だからといって主要技術を中国に持ってゆかず、古い技術だけでクルマを生産すれば「ライバルに勝てない」ことになり、よって渋々「最新技術を」中国へと持って行って、それを使って現地生産することになりますが、そうなるともちろん情報はダダ漏れ、ということになります。
ただ、「漏れる」だけならまだ実害は少なく、しかし問題は「その情報を使って勝手にクルマを作られる」こと。
上述の「広州本田」だと、ホンダから技術を移転させた中国側の自動車メーカー「広州汽車」は今度自分たちの会社で、独自のクルマを作り出すわけですね。
ホンダとの合弁であれば何かと制約も多く、ホンダに利益を渡さないといけないということになりますが、自分たちだけでクルマを作って得れば「丸儲け」。
端的に言えば、中国政府の狙いはここにあり、「外国企業の持つノウハウを、短期間で中国に移転させる」ことを目的に外国企業の出資制限を設けている、ということに(中国急成長の大きな理由はこれ)。
もちろん外国の自動車メーカーはこれに従わずに「輸出」という選択も取れますが、そうなると「売れない」ので、やむなく中国政府に従っているというのが現状です。
今後どうなる自動車業界?
今回、この外国企業の出資制限が撤廃される理由については2つあると考えていて、ひとつは諸外国からの突き上げ。
現在アメリカと中国とは、多くの製品で関税をお互い引き上げるなど「泥沼化」していますが、このもと(のひとつ)となったのが米国企業に対する中国企業の技術開示強要で、トランプ大統領がこれに大きく反発したわけですね。
加えて欧州各国も中国の方針に抗議するなど「中国に対する風当たり」が増してきたことを鑑み、中国政府としては「段階的に規制撤廃」という動きに出たのだと考えられます。
そしてもう一つは「おおよそ技術移転が完了した」であろうこと。
ガソリン車に関する主要技術について、中国の自動車メーカーはほぼ取得してしまった可能性が高く、そしてこれからガソリン車の未来がないということを考えると、「規制を撤廃しても問題はない(それで諸外国の批判を躱せるのであれば)」という判断に動いた可能性が大。
さらに「これからは電気自動車」の時代であり、電気に関しては諸外国の自動車メーカーよりも中国のほうが(先端技術はともかく)強みを持っていて、むしろこれからのエレクトリック化時代で「損」をするのは中国側の可能性がある、ということ。
つまり諸外国の自動車メーカーは「もう用済み」ということですね。
ただ、外国企業の出資制限が撤廃されたとしても、外国企業が販売に不利になるような”新たな”規制を中国政府が設けるのは目に見えており、今回の決定については「額面通り受け取ることはできないだろう」と考えています。
なお、海外自動車メーカーと中国自動車メーカーとの合弁状況は下記の通り。
もちろんポルシェやフェラーリ、ランボルギーニ(アストンマーティン、マクラーレン、マセラティも)は中国メーカーとの合弁にて「中国生産」は行っておらず、しかしそれでも現地では「売れまくっている」ので、やはりブランド力というのは重要なんだなあ、と思ったりします。
ポルシェの2018年第1四半期は記録的スタート。当然中国はNo.1、日本の存在感は空気に
第一汽車(FAW)・・・フォルクスワーゲン、トヨタ、ダイハツ、マツダ、アウディと合弁を展開
上海汽車(SAIC)・・・フォルクスワーゲン、アウディ、GM、セアトと合弁を展開。ローバーブランドを保有
東風汽車(DFM)・・・日産、ホンダ、プジョー/シトロエン、キアと合弁を展開
長安汽車(CHANGAN)・・・フォード、スズキ、三菱と合弁を展開。イヴォークのパクリ車を製造するLANDWINDブランドを保有
奇瑞汽車(CHERY)・・・合弁はなく自社ブランドのみで企業活動を行う珍しいパターンビッグ5以外(一部)
北京汽車(BAIC)・・・メルセデス・ベンツ、ヒュンダイとの合弁を展開
広州汽車(GAC)・・・ホンダ、トヨタ、フィアット、三菱と合弁を展開
吉利汽車(GEELY)・・・ボルボ、ロータスを買収、新ブランドLynk&Co.を展開
長城汽車(GREATWALL)・・・BMW(MINI)と提携しアメリカに工場建設
比亜迪汽車(BYD)・・・メルセデス・ベンツとEV生産で合弁
華晨汽車(BRILLIANCE)・・・BMWと合弁
浙江衆泰控股集団(ZOTYE)・・・ポルシェ・マカンほかのパクリメーカー。フォードとEV生産で合弁設立
江淮汽車(JAC)・・・フォルクスワーゲンとEV生産で合弁
一汽轎車・・・マツダと合弁