| 量産スポーツカーでフラットプレーンクランクV8を採用するのはフェラーリ以外に存在しない |
複数のFacebookユーザーが相次ぎサンディエゴにて偽装の施されたC8コルベットを目撃したという報告が。
このコルベットはおそらくハイパフォーマンスバージョンのZ06だと見られていて、レーシングカーの「C8.R」に積まれる5.5リッターV8エンジンをデチューンして搭載していると推測されています。
そしてこのエンジンにはフラットプレーンクランクが採用されていることが最大の特徴。
なお、フラットプレーンクランクとは耳慣れない言葉であり、多少の解説が必要だと思われるので、ここで簡単に触れてみたいと思います。
フラットプレーンクランクにはこういった特徴がある
まず、フラットプレーンクランクはシンブルプレーンクランクとも呼ばれ、この対義語がクロスプレーンクランク。
ここではV8エンジンについて解説してみたいと思います。
簡単に言うとクランクシャフトの形状が両者では異なるということで、フラットプレーンクランクの場合はクランクが文字通り「平坦」。
クランクシャフトについて、それぞれ中心から180度の角度に上下(反対側)へクランク形状が伸びているという形状を持っています。
これが何を意味するのかということですが、点火が「等間隔」で行われるということで、「ひとつのシリンダーで爆発が起きて排気を行う」という行程がスムーズに行われる(抜けがいい)わけですね。
一方クロスプレーンだと、クランクシャフトの中心に対してクランクの角度が(正面から見て)90度づつ伸びています。
これが意味するところは、フラットプレーンクランクの(シリンダー内)爆発が「180度ごと」に行われるのに対し、クロスプレーンクランクでは「90度ごと」に行われるということに(不等間隔)。
これは「エンジンの(シリンダーごとの)爆発タイミングが分散される」という意味では振動やノイズを低減できるというメリットがあるものの、ひとつのシリンダーからの排気がなされている間に別のシリンダーからの排気も出てくるので、それらがぶつかって排気干渉が発生します。
よって排圧が高まって高回転化が難しく、パワーという観点からは不利ということになりますね。
やはりフェラーリは一味違う
フラットプレーンクランクを採用するメリットとデメリット(クロスプレーンクランクのメリット/デメリットはその反対)はざっくりと下記の通りですが、その自動車メーカーが「そのクルマをレーシングカー同等とみなしているならば」そのV8エンジンにはフラットプレーンクランクを採用し、「快適性を考慮した乗用車だと考えているならば」クロスプレーンクランク採用だと考えて良さそう。
なお、市販車でクロスプレーンクランクを持つV8エンジンを採用しているスポーツカーはフェラーリくらいだと言われ、現行のF8トリブート/ポルトフィーノに採用されるV8エンジンもフラットプレーンクランクが組み込まれています(フェラーリ製エンジンのサウンドが優れる理由、振動が大きい理由はここにある)。
■メリット ・高回転化できる ・チューニング効率がいい(等長エキマニの効果が出やすい) ・音がいい ■デメリット ・NVH(ノイズ、バイブレーション、ハーシュネス)が大きい ・エンジンの寿命が短くなる |
VIA: 3D Performance Tech
シボレーがコルベットにかける意気込みは半端ではない
こういった理由もあって「シボレーが市販モデルのコルベットにフラットプレーンクランク採用」ということに全米が熱狂しているわけですが、まさに「フェラーリに対抗できるアメ車」の登場を人々が期待しているとも言えそう。
ちなみにシボレーがフラットプレーンクランクをコルベットZ06に採用する理由はもうひとつあり、それは「ホモロゲーション」。
つまりレーシングカーであるコルベットC8.RにフラットプレーンクランクV8を積むには、最低でも300台の「同じ構造を持つエンジン」を搭載した市販車を販売せねばならず、これをクリアするためという側面もあるようですね。
現時点ではシボレーから正確な情報が語られたわけではありませんが、C8.Rに搭載されるフラットプレーンクランクエンジンは500馬力を発生し(おそらくリストリクターによって制限)、市販モデルのコルベットZ06に積まれる際には600馬力にまでパワーアップされるのでは、と言われています。
そしてこちらがフラットプレーンクランク採用V8エンジン搭載と思われるコルベットのサウンドを収めた動画。
そしてポルシェ911GT2RSを比較用として用いている(と思われる)画像も。
とにかくシボレーはC8世代のコルベットについて「世界の覇権を握る」ということを意識しているようで、Z06はもちろん、その後に登場するであろう究極コルベット、ZR1についても大きな期待がかかるところです。
VIA: Motrolix, Jim Lill, Brandon Byers