| 現代では「もっともレアなポルシェ」の一台となり、販売価格は約8800万円 |
さて、ポルシェ911といえば「カエル顔」で知られますが、実はカエル顔ではない911も過去にはいくつか存在しています。
そのうちのひとつが1994年製、964世代のポルシェ911ターのS 3.6"Flachbau"ですが、今回ビバリーヒルズのエキゾチックカーディーラー、Marshall Goldmanにて、レッドの個体が799,900ドル(約8800万円)にて販売中。
ここでその「珍しい」ポルシェ911がどんなクルマなのかを見てみましょう。
そのルーツは1976年のポルシェ935
この「カエル顔ではない」ポルシェの元祖は1976年にサーキットデビューを果たしたレーシングカー「935(画像は1977年モデル)」。
その後ロードカーの「911ターボ」に対し、1981年からオプションとして用意されたのが、この935風のノーズを持つ「フラットノーズ(スラントノーズ)。
ただ、オプションといえども相当な改装が要求されることになり、このフラットノーズを装着すると、車両価格が1.7倍くらいに跳ね上がったとされるものの、実際にはどうだったのか不明です。
なお、911ターボ「フラットノーズ」はロードカーという性格上、935とは異なってリトラクタブルヘッドライトを持つことが特徴。
このフラットノーズ導入の背景としては、当時「後ろ向きに走ったほうが空気抵抗が少ない」と言われたほどの空力の悪さをカバーするためだと伝えられていますが、一説によると、北米市場でフェラーリと比較され「911ターボは、パフォーマンスが優れるのに対してそのルックスがスーパーカー的ではないので、フェラーリに対抗できるデザインにしてほしい」という北米のポルシェディーラーからの要望によって誕生した、とも。
そして930の次の世代となる「964」ターボにてオプションとして設定されたのが、今回紹介する「Flachbau=フラッハバウ」。
930フラットノーズと異なるのは、928風のポップアップ式ヘッドライトを持つということですが、このオプション価格は当時99,000ドルだった964ターボSの車体価格に対してなんと60,000ドル。
ちなみに「ターボS」は「ターボ」と比較して大きなタービン、ブレーキクーリングダクト、4本出しテールパイプなどが装備され、エンジンも専用にチューンされています。
たぶんこの60,000ドルという価格は「普通の911を購入できるくらい」だったんじゃないかと考えていますが、それだけにこれをオーダーする人は非常に少なく、よって現代では「超希少車」という扱いに。
この964ターボS 3.6 は3.6リッター・フラットシックスエンジンを搭載し、出力は380馬力。
フラッハバウが装着されたのは世界で76台のみ、北米向けでは39台しか存在しないとのことで、非常にレアなポルシェの一台であるのは間違いなさそうです。
走行距離は29,959キロ、コンディションは上々だそうですが、それにしてもこの799,900ドルというのは非常に高価。
ただしほかの964ターボS 3.6フラッハバウが1,017,500ドルで落札されたこともあるそうで、それを考えると「けして高すぎる価格ではない」のかも。
リアフェンダー上のエアインテーク、”ターボウイング”は今見ても強烈そのもの。
ポルシェ911ターボS 3.6フラッハバウのインテリアはこうなっている
そしてこちらが911ターボS 3.6フラッハバウのインテリア。
漆黒のレザーがスパルタンな印象です。
そしてこの「横方向にステッチの入るシート、斜めにステッチの入るドアインナーパネルは、つい先日発表されたばかりの新型911ターボSにも「復刻」されていますね。
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