| 現実には「リトラクタブルヘッドライトは”絶滅した”技術 |
おなじみコンセプトアーティスト、Khyzyl Saleem氏が日産スカイラインGT-R(R34)をリトラクタブル(ポップアップ)ヘッドラアイトへとバーチャルカスタムしたレンダリングが登場。
これに伴い、フロントがやや低く、そしてフロントフェンダーやボンネットの形状も変更されることとなっています。
リトラクタブル(ポップアップ)ヘッドライトとは1970〜1980年代にスーパーカーやスポーツカーに採用されていた、「パカっと開く」ヘッドライト。※色々な展開方法がある
このヘッドライトが採用された理由としては、「車高が低く、かつウェッジシェイプ形状を保つスーパーカー/スポーツカーに普通のヘッドライトを採用すると基準(ヘッドライトの地面からの高さなど)」を満たせず、かつ(当時の時術では)水平に近い角度でのライトで地面を照らすことが難しかったため」。
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リトラクタブルヘッドライトは「苦肉の策」から生まれた
その時代の技術だとヘッドライトの光量はハウジングの大きさに左右されるところが多く(昔の車のライトが大きかったり、ラリーカーがランプをいっぱいつけているのはこのため)、そして現代のように高い効率を保つ光源が存在せず、大きなヘッドライトをスポーツカーの正面に取り付けることがスタイルや空力上難しかったわけですね。
ではうまくライトにカバーを取り付けてボディと一体化させればいいじゃないということにもなりますが、この「カバー」について、スーパーカーのメインマーケットであったアメリカでは長らく禁止されていたのでそれも不可能。
さらに、ヘッドライトを規定の高さに取り付けたとすると、十分に前方に向かって光を照射できず、これまた法規に適合しないということに。
そこで「規定の高さに取り付け、樹脂レンズでカバーせず、しかも前をちゃんと照らすことができる」解決策がリトラクタブルヘッドライトであったということですね。
なぜリトラクタブルヘッドライトは消滅したのか
そこでなぜこのカッコいいリトラクタブルヘッドライトが消滅したのかということですが、大きな理由は「デイタイムランニングランプ」。
これが法律として義務化されたためにリトラクタブルヘッドライト装着車は「昼間でもライトを上げて走らなくてはならない」ということになり、リトラクタブルヘッドライトがまったく無意味に。
加えて、モーターを内蔵するという構造上、重く複雑であり、スポーツカーとしては致命的な「フロントオーバーハングを重くする」という問題、さらには本来「空気抵抗を削減するために考案された」のに、ずっとライトを上げっぱなしなので空気抵抗が増してしまい、よって各メーカーはリトラクタブルヘッドライトを廃止する方向に動いたわけですね。
なお、フェラーリF355→F430のようにモデルチェンジに合わせて設計変更ができたクルマはまだ幸運だったものの、ランボルギーニ・ディアブロのように「モデルチェンジするまで時間があった」モデルはフェイスリフトにてヘッドライトを変更することになり、しかし基本構造を変更できなかったためにヘッドライトだけを入れ替えることになりますが、もともと「その角度で前を照らせるライトを作る技術がなかったのでリトラクタブルヘッドライトにした」という経緯があり、この改修は難航。
そこで白羽の矢が立ったのが日産フェアレディZ(Z32)のヘッドライトだったわけですが、これはディアブロユーザーが実際にフェアレディZのヘッドライトを装着していたことにヒントを得たと言われます。
ランボルギーニは日産に対し、ディアブロ用に仕様を変更したヘッドライトアッセンブリーのOEM生産を依頼したとされ、しかし日産がこれを断ったのでランボルギーニは「NISSNロゴ入りの」ヘッドライトをパーツとして購入するより他なく、そしてNISSANロゴを隠すためのプレートがライトに貼られることに(つまり、当時はその角度で前をちゃんと照らせるヘッドライトを作ることができたのは日産くらいしかなかった)。
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日産は1989年までリトラクタブルヘッドライトを作っていた
そしてその日産だと、リトラクタブルヘッドライト採用車としてまず思い浮かぶのは「180SX」。
これは1989年〜1999年まで生産されており、日産としては「最後」のリトラクタブルヘッドライト採用車となっています。
ちなみに、上述の通り「電動アッシー含むヘッドライトユニットが重いので」ノーズを(リトラクタブルヘッドライトではない)シルビアのものへと入れ替えたのがいわゆる「シルエイティ」で、それくらいフロントオーバーハングの重さは「気になる要素」ということですね(この改造を行なったのは、最高速を気にする必要がない、しかしコントロール性にシビアな、峠をメインにした走り屋だった)。
参考までに、インテグラ・タイプRでも「HIDユニットのバラストが重いので」ハロゲンに戻すという人たちも多く、それを考えると、軽量でコンパクトな現在のLEDヘッドライトシステムは「夢のよう」。
そして、よりコンパクトなサイズでも十分な光量を確保でき、取り付け位置や角度に(ほぼ)影響されず法規を満たすヘッドライトが作れるようになった今、こういったリトラクタブルヘッドライトは「すでに不要となった技術」ということになりますが、やっぱりぼくは「スーパーカー/スポーツカーにはリトラクタブルヘッドライトだろう」という認識を捨て去ることができません。
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VIA:Khyzyl Saleem