
| それぞれの「違い」にはそれぞれの「理由」があった |
欧米のナンバープレートの形状の違いには、それぞれの地域の歴史的背景と、初期の段階で確立された「標準規格」の差が大きく関係しています。
現在、アメリカ(北米)では「12×6インチ(約30.5×15.2cm)」が標準ですが、欧州では「520×110または120mm(約20.5×4.3または4.7インチ)」という横長の形が一般的。※日本は33cm×16.5cmで米国に近い
なぜこれほどまでに形が異なるのか、その理由を紐解きます。
この記事のポイント(30秒でわかる要約)
- 1957年の標準化: 北米は「12×6インチ」で合意したが、欧州は独自の「横長」規格を採用した
- フォントの可読性: 欧州の横長プレートは文字を太く大きくでき、スピードカメラや警察が読み取りやすい
- 情報の密度: 欧州(特にドイツ等)はプレートに登録地域や年次情報を含めるため、桁数に対応できる横長が有利
- 日本のナンバープレート形状の決定は1951年: 日本では1951年に現在の規格が制定される
そもそもなぜナンバープレートは「世界共通」ではないのか?
ナンバープレートの歴史は19世紀末のフランスから始まりましたが、当時は各国(あるいはアメリカでは各州)がバラバラのサイズで作っていたという実情も。
ただしナンバープレートにおける転換期となったのは1957年で、この年、自動車メーカーと各国政府、国際標準化機構が協議し、世界的な標準サイズを定めようという話に発展することに。
しかしながら最終的に一つにはまとまらず、主に「北米標準」と「欧州標準」の二つの勢力に分かれたまま現在に至っている、というのが「欧米でナンバープレートの形状がぜんぜん違う」理由となっているわけですね。
欧州型プレートが「細長い」3つの論理的理由
アメリカのプレートが「6×12インチ(縦横比 1:2)」なのに対し、欧州は「110×520mm(縦横比 約1:5)」と圧倒的に横に長くなっており、これには、欧州特有の事情が絡んでおり・・・。
1. 警察やカメラからの「視認性」
欧州の多くの国(イギリス、ドイツ、フランスなど)では、プレートの文字サイズやフォントが厳格に定められ、横に長い形状は、文字を「太く」「横に潰さずに」配置できるため、遠くからでも、あるいは移動中の取締用カメラからも読み取りやすいというメリットが存在する
2. 登録情報の複雑さ
欧州のナンバープレートは数字とアルファベットの組み合わせで多くの情報を示しており、情報の桁数が多くなりがちなため、横にスペースがある形状のほうが適している
- ドイツ: 最初の1〜3文字が登録都市(B=ベルリンなど)を示す
- イギリス: 登録地域と登録年(半年に一度更新)が数字で示される
3. 空力性能とデザイン
欧州車は伝統的にフロントグリルの形状を重視する傾向があり、横長のプレートは、グリルの開口部を塞ぎにくく、空気抵抗を抑えながらデザインを損なわないという設計上の利点もある※たしかに欧州ではBMWの「キドニーグリル」、ブガッティの「ホースシュー」、アルファロメオの「スクデット」など、グリルをそのクルマのアイデンティティとする傾向が強いのかもしれない(反面、米国だと特徴的なグリルを持つブランドは思い浮かばない)。
北米と欧州:プレート規格の徹底比較
それぞれの規格の特徴を一覧表にまとめると以下の通り。
| 項目 | 北米(アメリカ・カナダ) | 欧州(EU加盟国・英国等) |
| 標準サイズ | 12 × 6 インチ (約30.5×15.2cm) | 520 × 110/120 mm (約52×11/12cm) |
| 形状の特徴 | 正方形に近い「ボックス型」 | 極端に平たい「ストリップ型」 |
| デザインの自由度 | 非常に高い(州ごとの風景やロゴ) | 低い(白または黄色に黒文字が基本) |
| 情報の意味 | 基本的にランダム(バニティプレート有) | 地域、登録年、排ガス区分などを含む |
| 主なメリット | コンパクトで取り付け場所を選ばない | 文字が大きく、スピードカメラに強い |
参考までに、シンガポールは「横長」で・・・。
ドバイも横長。
香港も基本的に「横長」ですが・・・。
車両によっては日米の「縦横比1:2」サイズを装着している(その場合は文字が二段になる)ケースも見られます。
そして中国も横長を採用しており、世界的に見ると、アメリカと日本の「縦横比1:2」は圧倒的に少数なのかもしれません。
どちらが「優れている」わけではない
結局のところ、欧米のナンバープレートにおける形状の相違は「単なる最初に決めたルールの違い」に過ぎず、しかし、この違いは今も自動車ファンを悩ませ(あるいは楽しませ)続けているというのもまた事実。
アメリカの車好きが「欧州風の横長プレート」をアクセサリーとして装着したり、逆に欧州のコレクターが「アメリカサイズのプレート」を求めて台座を加工したり、そして日本のカーマニアが「欧州の横長プレートの上に日本のナンバープレートを装着」するのは”隣の芝生が青く見える”というある種の憧れなのかもしれませんね。
なぜ日本のナンバープレートは現在の形状となったのか
上述の通り、日本のナンバープレートは米国と同じ「縦横比1:2」ではありますが、それよりも少し大きい330mm×165mm(米国は (約30.5×15.2cm)です。
この独特な形状になったのには、戦後の混乱期における視認性の向上と、社会インフラとの深い関わりという2つの大きな理由がある、とされています。
1. 形状のルーツ:1951年「道路運送車両法」の制定
戦前の日本にもナンバープレートはありましたが、その形状はバラバラで、数字のみの横長タイプも存在したという記録も。
そして現在の形状の基礎が決まったのは終戦直後の1951年(昭和26年)だとされ・・・。
- 理由:識別情報の増加
戦後の急速な自動車普及に伴い、「どこの、誰の、どんなクルマなのか」を正確に把握する必要が出てきた - 解決策:2段表示への移行
地名、分類番号、ひらがな、一連番号という膨大な情報を1枚の板に収めるため、横に長くするのではなく、上下2段に情報を分ける「縦幅のある形状」が採用。これにより、遠くからでも文字が大きく、読み取りやすくなる
ここで注意を要するのは、上述の「世界規格を定めようとした1957年」よりも早く日本では規格が決められていること。
1957年の会合に日本が参加したのかどうかはわかりませんが、もし参加していたのであれば、その場で「アメリカは日本式に倣った」のだと考えることも可能です。
2. なぜ今も「横長」に変わらないのか?
なお、欧州車のような横長プレート(欧州規格:520mm×110mmなど)の方が「デザイン的にカッコいい」という声もあり、実際に国土交通省でも規格の変更を検討したことがありますが、以下の理由によって「変えたくても変えられない」のが「実情」です。
- 既存インフラの壁(最大の理由)
日本の道路には「オービス(自動速度取締装置)」や「ETCカメラ」、「Nシステム」など、ナンバーを読み取るためのインフラが数え切れないほど設置されており、これらはすべて「1:2の長方形」を読み取る前提で設計・設置されているため、形状を変えると数千億円規模の改修コストが必要になる - 駐車場の発券システム
コインパーキングふくむ駐車場のの車両判読カメラなども同様で、民間企業を含めた社会全体のシステムがこの形に最適化されているため、変更のハードルが極めて高い
3. 日本のナンバープレート 規格一覧
参考までに、日本のプレートには、車両の大きさに合わせた3つの主要なサイズがあり・・・。
| サイズ区分 | 寸法(縦×横) | 主な対象車種 |
| 大型番号標 | 220mm × 440mm | 大型トラック、大型バス(総重量8t以上など) |
| 中型番号標 | 165mm × 330mm | 普通乗用車、軽自動車、中型トラック |
| 小型番号標 | 125mm × 230mm | バイク(125cc超〜250cc以下など) |
形状は変えられなくとも2018年からは地域独自の図柄を入れることが可能になっていて、これは形状の制約の中で「地域のアイデンティティ」を表現しようとする日本独自の工夫ということになりますね。
Image:国土交通省
結論
こうやって見ると、欧州には欧州の、日本には日本の「詰め込む情報の種類」、そして表示方法の差異がその形状を決定したという歴史がわかるかと思います。
そして日本のナンバープレートが今の形のままなのは、「戦後に情報の詰め込みと読みやすさを両立させた結果」であり、それが現在では「巨大な社会システムの標準」として定着してしまったためだということも理解でき、そして「おそらく今後、この形状が変更されることはないであろう」ということも(残念ながら)推測可能です。
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