| リリースするのは元フェラーリ副社長による「アレス・デザイン」 |
さて、元フェラーリ副社長、ロータスCEOを歴任したのちにコーチビルダー「アレス・デザイン」を立ち上げたダニ・バハー氏。
ちなみに会社はフェラーリやランボルギーニ、マセラティ、パガーニ等が拠点を構えるモデナ地区に設立されていますが、これは「同地域に、スーパーカー関連サプライヤーが集中しており、かつ熟練した職人も多く存在するので、スーパーカーをリリースしやすいから」。
これまでにも同社は「ポルシェ911タルガのGT3 RS仕様」や「フェラーリGTC4ルッソをフェラーリ365風に」といったカスタムを行っています(けっこう多くの作品をリリースしているので、それなりに需要があるようだ)。
そして数年前から取り組んでいるのが「プロジェクト・パンサー」と題されたデ・トマソ・パンテーラの復刻計画で、今回ようやく生産開始の準備が整ったとし、プロダクションモデルの画像と動画を公開しています。
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ただし「パンテーラ」の名は使えない
しかしながらデ・トマソの運営権自体が香港のITV(アポロ・インテンサ・エモツィオーネの発売元)に移ったためにアレス・デザインでは「パンテーラ」の名を使用できず、そこでパンテーラ(イタリア語)の英語版である「パンサー」という名称を用いることに。
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新生デ・トマソ「P72」が搭載するのは、その歴史を反映して”フォードのエンジン”。700馬力以上、トランスミッションは6MTのみの「超高速ツアラー」に
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ただしそのデザインは明確にデ・トマソ・パンテーラを意識しており、リトラクタブルヘッドライトやシャークノーズ、Cピラー内部のフィン、切り上がったリアバンパーなど「デ・トマソ・パンテーラそのもの」。
なお、ベースとなる車体にはランボルギーニ・ウラカンを用いており、しかしパンテーラっぽいシルエットを出すためにAピラーを一旦切断して後ろに移動させたりといった大改装を行っていて、ウインドウ類もすべて新規に作成されているようですね。
エンジンはウラカンと同じく5.2リッターV10、しかし出力は650馬力へと向上しており、トランスミッションは7速デュアルクラッチ、駆動方式は4WD、そして0-100km/h加速は3.1秒、最高速度は325km/h。
ボディサイズは全長4668ミリ、全幅1977ミリ、全高1185ミリ、ボディパネルはカーボン製、限定生産21台のみ、そして価格は約7500万円だとアナウンスされています。
ちなみにアレス・デザインは自動車メーカーとして認可されていないので、この「パンサー」は車検証上だと、ベースとなる「ランボルギーニ」扱いとなるのだそう。
なお、テールランプはおそらくシボレー・コルベット(C7)からの流用で、フロントウインカーはフェラーリから拝借したように見えますね。
エキゾーストシステムは「ハンドビルトによるステンレス製」とのこと。
プロジェクト・パンサーのインテリアはランボルギーニ・ウラカンを継承
インテリアは基本的にランボルギーニ・ウラカンを踏襲しており、しかし微妙に表面を変更することでオリジナリティを演出。
センターコンソール、ダッシュボードのスイッチ類についても配置はウラカンのままで、しかしボタン類にはオリジナルデザインが与えられています。
そのほかステアリングホイールもウラカンからの流用で、ペダルもウラカンと同一ですね。
なお、メーター表示については、以前に公開されたプロトタイプだと「ウラカンそのまま(Lamborghiniの表示もなされていた)」だったものの、今回のプロダクションモデルでは独自デザインへと改められており、インテリア全体としてのマッチングを高めているようです。
シートもやはりウラカンの純正品を流用して表皮を貼り替え。
このプロジェクト・パンサーがスタートした頃は「ウラカン」が当時の現行モデルであったものの、現在は「ウラカンEVO」へとスイッチしており、そのためにプロジェクト・パンサーのベース車両は今となっては「ひと世代前」。
プロジェクトが長引いたためにこういった現象となってしまったわけですが、このパンサーを購入する人にとっては「最新型をベースにして・・・」という思いがあるのかもしれません(ぼくだったらそう思う)。
デ・トマソ・パンテーラはこんなクルマ
なお「デ・トマソ・パンテーラ」はデ・トマソ(1959年設立)がアメリカ市場向けに発売した車で、フォードとの共同開発。
デザインはイタリアのカロッツェリア・ギア(のトム・ジャーダ)、エンジンはフォード由来の5.8リッターV8を採用。
当時バックボーンフレームやスペースフレームを採用することが多かったイタリアンスーパーカーとしては珍しく、量産性に優れる「モノコック」を採用しており、加えてフォードからの流用パーツによって開発コストを抑え、安価な価格設定を実現することでアメリカでは好調なセールスを記録したモデル。※コミック版バットマンでは、バットモービルに起用されたこともある
人物としての「デ・トマソ」はかつてマセラティブランドを所有していたこともあり、その頃に大ヒット作「ビトゥルボ」を世に送り出た人物としても知られます。
なんだかんだで商才には長けていたようで、「パンテーラ」においてもうまくコネを使ってフォードを抱き込んでの開発に成功していますが、自動車人というか車への愛情という点では他メーカーの創業者には劣り、あくまでも自動車を「ビジネス」として見ていた模様。
実際にパンテーラもウエットサンプを採用していたので重心が高く、そのほかにも構造的な欠陥、慢性的なトラブル体質を抱えた車であった、とされていますね。
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メジャーになれなかったスーパーカー、デ・トマソ・パンテーラが競売に。程度良好、メンテナンス済み
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なお、デ・トマソ創業者、アレハンドロ・デ・トマソは人によって評価の分かれる人物でもあり、高くそのビジネス手腕を評価する人もいれば、自動車を「お金儲けの道具」にして色々と台無しにしてしまった、と見る向きも(ぼくは後者)。
ちなみにデ・トマソはマセラティを傘下に収めていた時代があり、その時期に「ビトゥルボ」を発売して大きなヒットを収めているものの、マセラティにとっての「デ・トマソ時代」は黒歴史であったようで、公式サイト上の社歴においても「デ・トマソ」の名が一切見られないことからも、同氏に対する評価が伺えます。