| それはシンプルに、マクラーレンF1、そしてブガッティEB110が「ゲームチェンジャー」だったからだと思う |
そして今後、こういった「歴史を変えた」クルマはなかなか出てこないかも
さて、つい先日、ブガッティEB110が「立て続けに2台」予想を上回る2億2000万円以上っで落札されて話題となりましたが、ブガッティEB110は「第二のマクラーレンF1になるんじゃないか」と見られているもよう。
このブガッティEB110は現在のブガッティ・オトモビル(仏)とは異なるイタリアのアウトモビリ・ブガッティが発売していた(1991-1995年)クルマであり、アウトモビリ・ブガッティは自動車好きの実業家、ロマーノ・アルティオーリ氏(ロータスを所有し、エリーゼを送り出したことで知られる)がブガッティの商標権を獲得して創業した会社。
ただしこのEB110を送り出した後に会社が倒産してしまい、その後商標権がフォルクスワーゲンに渡って現在のブガッティ・オトモビル(フランス)が設立、という流れとなっています。
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現在のブガッティは少なからずEB110を意識
ただ、このEB110と現在のブガッティの車は無関係とはいえず、というのも「カーボンコンポジットシャシー、ミドシップ、クワッドターボ、4WD」という共通点があるため。
これは明らかに現在のブガッティがEB110を意識したと思われる部分で、実際のところ、のちにEB110へのオマージュである「チェントディエチ」を発売しています。
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そしてこのEB110はパオロ・スタンツァーニ、マルチェロ・ガンディーニというカウンタックを作り出したメンバーが関わっていたことにも大きな意味があり、ランボルギーニで技術主任を務めてきたマウリッツォ・レッジャーニ氏もここへ参加していたようですね(そしてアウトモビリ・ブガッティ倒産後に、その主要開発メンバーにてパガーニが設立されており、参加メンバーは現在に至るまでスーパーカー業界のキーパーソンとなっている)。
マクラーレンF1の価格は10年ちょっとで20倍に
まずはマクラーレンF1(1993-1998年)の価格推移について触れておくと、こちらは1999年に(イーロン・マスク氏が)約100万ドルで落札したという記録(当時としても安くはない)があり、しかし(リーマン・ショック後には一旦下がるものの)2015年は1400万ドル、そして2021年には2050万ドルで落札され、つまり「13年で20倍以上」へと高騰していることがわかります。
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一方のブガッティEB110ですが、こちらは1990年代後半、2000年代前半は取引が活発ではなく、しかし2005年になってグッディング・アンド・カンパニー主催のオークションにて28万2500ドルで落札されたという記録があり、2010年には50万ドルを超え、2015年には80万ドルオーバー、そして直近だと200万ドル以上で落札されているわけですね。
なぜマクラーレンF1やブガッティEB110は価格が上がるのか?
なお、世の中には様々なスーパーカーが溢れていますが、問題はなぜマクラーレンF1やブガッティEB110の価格がそこまで上がるのか。
もちろん同年代のスーパーカーにはフェラーリF40もあり、これらがフェラーリF40の相場(300万ドルくらい)を超えてまで上がってゆくのはちょっと不思議です。
たしかに生産台数だとブガッティEB110は154台、マクラーレンF1は64台、そしてフェラーリF40は1,311台という数字なので、希少価値でいえばブガッティEB110、マクラーレンF1のほうがフェラーリF40よりも圧倒的に高いと考えて良さそうで、しかし、それでも「天下のフェラーリをさしおいて」というのは通常だと考えにくいかもしれません。
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ただ、マクラーレンF1、そしてブガッティEB110が「通常ではない」のは、「一つの時代を作ったから」だとも考えています。
たとえば、マクラーレンF1は「妥協なき設計思想」によって、センターシートというレイアウトはもちろん、放熱を考慮した「純金張りの」エンジンルーム、軽量性を追求したチタン製車載工具など「常識を超えた」仕様や装備を持っています。
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加えて、市販車における最速記録、ルマン24時間レースにおける優勝など、その思想が実際に「目に見える形で」証明されており、これが「今までのスーパーカーにはなかった、実績を出せるクルマ」という認識に繋がり、スーパーカーにとっての新章を開いたのだと思われます。
そして、新章を開くことになったパイオニアとしての評価が現在の「相場」につながっているんじゃないかということですね。
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そしてブガッティEB110だと、上述の通り現代のブガッティにも通じる要素を持つこと、そして設計者たちが自動車史に名を残す人々であったことが大きく関係しているものと思われ、これもやはり「新しい時代へとスーパーカーが突入するにあたり、ひとつの転機となった」エポックメイキングなクルマであることが相場上昇の理由なのだと考えています。
つまり、マクラーレンF1の登場する前と後、ブガッティEB110の登場する前と後ではまったく事情が変わってしまったということになり、いわゆるゲームチェンジャーという存在だったと言い換えていいのかもしれません。
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