| 未だにブレーキ鳴きを完全に解消できないことにもある意味では驚かされる |
EV時代になれば回生ブレーキが主流になるため、ブレーキ鳴きもある程度は減ってゆくのかもしれない
さて、フォードが「ブレーキの鳴き」をほぼ完全に押さえ込むことができるという特許を登録。
これは米国特許庁に出願されたもので、その内容としては「ブレーキパッドの外縁に切り込みを入れる」というシンプルな解決策ではあるものの、これによって劇的に「鳴き」を改善できるのだそう。
なお、ブレーキ鳴きというのは、主に共振周波数がブレーキローターを特定の方法で振動させることで発生するそうですが、過去にはポルシェがそれを解説する動画を公開し、「ブレーキ鳴きは仕方がないもので、悪くはないんですよ」と主張したことも(それだけブレーキ鳴きに関するクレームが多かったのだと思う。動画ではブレーキ鳴きのメカニズムが紹介されている)。
フォードの「ブレーキ鳴きをほぼ抑える」特許はこうなっている
ブレーキローターが大きいクルマでは、パッドの表面積もかなり大きく、そして摩擦面積が大きければ大きいほど、より多くの摩擦を発生させることができ、クルマをより速く強力に減速させることができるわけですが、その反面「鳴き」の可能性も増加することになるわけですね。
従来のブレーキパッドは、長方形で外周が湾曲しており、ブレーキディスクの端にまでフィットして有効摩擦面積を最大化するのが一般的で、これは当然ながら「ブレーキローターのサイズに比較して最大の制動力を得るため」。
しかしフォードの新しいブレーキパッドでは、そのカーブしたエッジ部分を削っているのですが、フォードによればディスク外周は「接線方向のモーダル変位が大きく、つまりブレーキ作動時にパッドが(ローターに)接触すると、ブレーキ鳴きの原因となる振動数の影響を受けやすく、これはブレーキローターの直径に比例して大きくなるため、直径が大きければ大きいほどブレーキ鳴きが発生する可能性が高くなる」。
フォードのシミュレーションでは、ノーマル(標準装着)のブレーキパッドが平均して88デシベルの音量を出すのに比べ、ブレーキパッドに7mmの深さの切り込みを入れた(今回の特許の内容を反映した)ブレーキパッドを装着すると、(一般にうるさいかどうかという基準となる)70デシベルを超えるブレーキ鳴きが発生する可能性が大幅に減少することがわかっています。
さらに、この切り欠きをわずかに大きく(10mm)することで、7mmの際の切り欠きで発生した2件の鳴きを回避できるだけでなく、最大音量を54デシベルにまで大幅に低減することができるのだそう。
なお、フォードでは、ブレーキの鳴きを抑えるためには、8mm以上の切り欠きが理想的であるとしていますが、この切り欠きによってブレーキパッド全体の強度が下がることも考えられ(そこを境にボロっと割れそう)、しかしもちろんフォードもそのあたりは考慮済みなのかもしれません。
ただ、ブレーキ鳴きの原因はブレーキローターの共鳴のみではなく、パッドの摩耗やローターの劣化、(パッドとローターの)クリアランスの問題など様々な原因があり、今回の特許で解決できるのはそれらの「一部のみ」ということなのかもしれません。
そして「ブレーキ鳴き」は多くの顧客からクレームとして申し入れられているはずですが、未だに「完全に解決できていない」のが実情だと見え、ということは、これを解消することは相当に難しいのだと思われます(人類にとっての大きな悩みである”風邪”を簡単に治せないのと似たようなものかもしれない)。
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参照:CARBUZZ