
| ただしこれはトヨタのみの事情ではなく、自動車業界全体の流れである |
そしてどこまで「柔軟に状況に対応できるか」が明暗を分けるであろう
さて、現在は「EV需要の低迷」に伴い各自動車メーカーとも戦略の見直しが要求されているという状況ですが、今回はトヨタが「バッテリー工場の建設を延期する」という報道。
もちろんこれは予想を下回るEV需要の成長を受けたもので、日本国内におけるバッテリー工場の建設を延期することとなるもよう。
新しいバッテリー工場は福岡県に建設される予定であったが
トヨタは、日本の主要なEVインフラプロジェクトの一つであるバッテリー工場の建設を計画しており、しかし今回の報道によると、その計画を「少しだけ減速」。
この工場は日本の福岡県に建設される予定で、地元知事によると、正確な場所の合意は4月に最終決定される予定であったものの、このスケジュールは「秋にずれ込む」。
つまりは半年ほど計画が(今の段階で)後ろ倒しとなりますが、この施設は当初の計画だと2028年に稼働を開始する予定であったものの、今回の延期によりその日程も遅れる可能性が生じます。
トヨタはこの施設の建設に引き続きコミットしつづけることにかわりはなく(つまり工場建設の計画そのものは維持される)、しかし同社は今後何を製造するかについて再評価しているとも報じられ、つまり「工場は建設するものの、そこで製造するものは、当初予定していたバッテリーではなくなるかもしれない」という選択肢も浮上しているわけですね。※当初、この工場はトヨタの次世代EVのためのバッテリーを製造することを目的としていて、その中には最大1000kmの走行距離を目指す車両の製造も含まれていた
この方針変更はトヨタのEVに対する野心を広く再調整するもので、世界的な電気自動車の販売は依然として増加する一方、予想していたほど加速していないという実情もあり、この予測と現実とのギャップによりトヨタは目標を見直すこととなっています。
そしておそらくは、今回の「延期」につき、ドナルド・トランプ大統領が導入する25%の輸入車関税もたぶんに影響しているのかもしれません。
トヨタはEV販売目標を引き下げる
2022年、トヨタは2026年までに年間150万台のEVを販売する目標を発表したものの、2023年にはその目標を100万台に引き下げ、最近では80万台に再び調整されています。
ただしトヨタはEVを放棄したわけではなく、しかしこれは市場が初めに予想されたほど単純ではなく予測しづらいことを踏まえて期待値を調整しているのであって、これはトヨタ以外の自動車メーカーでも見られる対応であり、「自動車業界全体としての動き」でもありますね。※現在の状況において、計画に固執することのほうが危険である
そして多くの自動車メーカーは「EVよりもハイブリッド、あるいはPHEV」という方針へと転換しているものの、トヨタはすでにこの分野にて圧倒的な強さを持っており、よって今後トヨタは「EVの販売目標を引き下げたうえ、強みを持つハイブリッドとPHEV分野においては他社からの猛攻にさらされる」という苦境に立たされることになるのかもしれません。
しかしもちろん、トヨタとて攻撃の手を緩めるわけではなく、中国ではレクサスの現地生産向けに新しい子会社を設立し、中国の工場にてEVとバッテリーを開発・製造することを発表するなど、新しい市場と顧客を獲得する計画を推進しています。
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参照:Nikkei Asia