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ポルシェが宣言:「EVもガソリン車も、顧客の選択に優劣をつけません。好きに選んでいただいて結構です」。新しく採用されるデュアル戦略の真意とは

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| これからは「EVを買わねば限定モデルを回さない」がなくなる? |

ポルシェの明確なメッセージ—顧客の選択を「判断しない」

ポルシェは新しいEVモデルの登場によって電動化を加速させていますが、それと同時に内燃機関(ICE)モデルを市場から排除するつもりがないという明確なメッセージを発信。

これはポルシェ オーストラリアの最高経営責任者兼マネージングディレクターであるダニエル・シュモリンガー氏がオーストラリアの自動車専門サイト『Drive』に対して語ったもので、ポルシェは顧客が内燃機関車を購入し続ける限り、ICEエンジンを使い続ける計画であると明言しています。

「私たちは、お客様が電動化の準備ができているか、それとも依然としてガソリンモデルを愛しているかによって、選択の自由を持ちたいと考えています」 「私たちは優劣をつけません。お客様がどのように感じようと、私たちにとっては何ら問題ありません。そして、市場が何を求めているかに対応できる生産体制をとっています」 

ダニエル・シュモリンガー(ポルシェ オーストラリア CEO)

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これまでのポルシェは電動化を強く推進するあまり、EVを購入する顧客を重要視するといった戦略を採用していて、実際に「EVを買わないと限定モデルや少量生産モデルを回してもらえない」といった話もよく聞かれます。

ただ、今回の方針転換によって「EV購入者を優遇する」」という姿勢が幾分緩和されるものと推測されますが、これがどのくらい「現場」に反映されるのかは気になるところでもありますね。

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ハイブリッド技術が内燃機関を延命させる鍵

ポルシェのこのデュアル戦略(EVとICEの並行開発)を可能にしているのが「ハイブリッド・パワートレイン技術への大きな期待」。

シュモリンガー氏は、ハイブリッド技術の導入は、排出ガス規制に対応しつつも、ポルシェの核である「パフォーマンス」をさらに高めるための理想的なソリューションだと強調しています。

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「ハイブリッドや電動化技術は、単に燃料を節約するためだけではありません。それは、車両全体のコンセプトをサポートするものです。私たちはパフォーマンスブランドであり、サーキットで速くありたい。しかし、日常生活では非常に快適でいたい。ハイブリッドと電動技術は、その両立に大いに役立ちます」

特に、911 GTSに採用されている電動アシスト・ターボチャージャーとハイブリッド技術”T-Hybrid”は、排気量の小さい718ボクスターやケイマンといったモデルにも今後採用されてゆくと噂されており、小排気量であってもターボラグのない”瞬時のパフォーマンス向上に”貢献すると見られています。

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一方でカイエンやパナメーラに採用されるハイブリッドシステムは「EVモードでの走行」を可能としていて、高い環境性能とエレクトリックモーターを使用したリニアな加速を実現するという「バランス型」でもあり、今後ポルシェはさらにハイブリッドの選択肢を多様化させてゆくのかもしれません(特許出願は”第三のハイブリッド”の存在を示唆している)。

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EV化計画の修正—718シリーズと大型SUVの延期

ポルシェが内燃機関モデルの継続を決めた背景には、EV化戦略におけるいくつかの計画変更がありますが、これらの変更はEVの「需要が鈍化」しつつある市場の現実と、ポルシェが目指す「多様な顧客ニーズ」への対応を最優先した結果であると考えられます。

  • 718シリーズのEV化延期: 718ボクスターとケイマンの完全電動モデルは、当初の予定より遅れて2027年以降になる可能性。その主な理由は、高性能バッテリーセルの確保に関する課題と、予想よりも遅いEV市場の成長に対応するためだとされる
  • 大型SUVのICE優先: カイエンの上位に位置する新しい大型SUVシリーズも当初は完全電動での計画であったものの、市場状況を鑑みて、当初は内燃機関車およびプラグインハイブリッド(PHEV)モデルとして提供されるよう戦略が修正済み
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ポルシェ、次期718ボクスター&ケイマンにガソリン版を継続投入するもよう。「電動戦略の再編」で718EVに「ガソリンエンジンをオプション設定」?

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最新EVモデルの具体的なスペック情報

ポルシェはICEモデルを継続する一方、EVの開発も着実に進めており、最新モデルだと以下のスペック・特徴を持っています。

カイエン・エレクトリックの驚異的な性能

  • デビュー日: 2025年11月19日(デジタルワールドプレミア)
  • 最高出力: 1,000馬力以上と見込まれている(トップグレード)
  • 航続距離: 推定約560kmの航続距離
  • バッテリーと充電: 113kWhのバッテリーパックを搭載し、最大400kWの超高速充電に対応。10%から80%までの充電が最短16分で可能
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Image:Porsche

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マカン GTS エレクトリックの詳細

  • 最高出力: 通常時509馬力、一時的なオーバーブースト時563馬力
  • 最大トルク: 約955Nm
  • 加速性能:0-100km/h加速3.6秒
  • 特徴: 性能を向上させるためリミテッドスリップデフとトルクベクタリング、アダプティブエアサスペンションを装備

結論:顧客中心の「バランス」戦略

ポルシェは「内燃機関の伝統的な魅力」と「電動化による未来のパフォーマンス」をどちらも犠牲にしないという「バランスの取れた製品戦略」を進めています。

これは、e-fuel(合成燃料)への大規模投資を含む「ダブルe戦略」(電化+e-fuel)とも連携しており、長期にわたり「究極のパフォーマンスカー」を提供し続けるという同社のコミットメントの表れと捉えることも可能です。

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ポルシェが自社で開催するワンメイクレース「スーパーカップ」に合成燃料(Eフューエル)を採用すると発表。ポルシェは燃料においてもイノベーションを目指す
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| ただしガソリンエンジン許容の風潮が拡大したのち、あまり合成燃料に関する話題を聞かなくなったように思う | 現時点では合成燃料に理解を示す自動車メーカーや政府は非常に少ない数にとどまっている さて、 ...

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よって、顧客は自身の好みや環境に応じ、ポルシェの多様な選択肢の中から自由に選ぶことができる時代が続くことになりますが、やはりぼくらとしては「EV購入オーナー優遇政策」の終焉を望みたいところではありますね。

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ポルシェ、商品戦略の最終的な再編を決定。カイエン上位SUVは「EVではなく」内燃機関モデルで登場へ。苦しい財政状況についても明かされる

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参照:Drive

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