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| 「レクサス」はこれからどこへ向かうのか |
迫られる「変化」—レクサスが恐れるブランドの衰退
1989年の初代LSでドイツ勢の高級車市場に殴り込みをかけ、静粛性、信頼性、品質で独自の地位を築いたレクサス。
しかし、市場の急速な電動化と価値観の多様化が進む今、レクサスは大きな決断を迫られており、その決断とは「ブランドの再定義」。
トヨタは先日、日本のショーファーカーの象徴である「センチュリー」を単なる車種ではなく、ロールス・ロイスと競合する「超高級独立ブランド」へと昇格させることを発表していますが、これによってレクサスの最上級ブランドとしての位置づけが変わる可能性が囁かれているわけですね。
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なお、この「ブランドの再定義」につき、レクサスの渡辺剛プレジデントは「センチュリーのブランド化だけが理由ではない」と強調し、次に語る真の理由は「自動車市場の変化が激しすぎるから」。
そして、この転換を怠ることは「ジャガーの二の舞」とならないように、という強い危機感から来るものだともコメントしています。
ブランドの停滞は死を招く—ジャガーとキャデラックの教訓
ではなぜ、レクサスは今ブランドの「ピーク時」に変革を急ぐのか?
渡辺プレジデントがジャパンモビリティショー(JMS)でカーメディア、Car Expertに語ったところによると、この変革は「ブランドは衰退するのを待ってはいけない」という教訓に基づいています。
- 手遅れな再構築: ブランドの勢いが衰えてからリブランディングや市場シフトを行っても、それは「効果がない」または「切羽詰まった行動」と見なされがち
- 失敗例: 数十年がかりでブランド再生を試みるキャデラックやマセラティの例、そして迷走の末にブランドイメージが薄れてしまったジャガーの例が、レクサスが避けたい「運命」である
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BMWとトヨタは似ている?
レクサスは今、勢いがあるうちに自らのブランドの役割を問い直し、未来へ向けて再構築するという戦略的な「攻めの姿勢」を選んだというわけですが、興味深いことにこれは「成功しているときほど変わらねばならない」とし、その成功にあぐらをかかずに変革を追い求め続けるBMWの姿勢と一致するもの。
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そしてトヨタとBMWは現在の自動車メーカーの中において数少ない「マルチパワートレーン戦略」「水素」を進める会社でもあり、両者の考え方は意外と似ているのかもしれません(実際にいくつかの提携がなされ、GRスープラのような成果物も登場している)。
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センチュリーとレクサス—それぞれの「頂点」と「冒険」
今回のブランド再編によって、トヨタの高級車戦略はより明確に分化しており、それぞれの立ち位置はざっと次の通り。
センチュリー:「ロールス・ロイス級」のショーファー・ラグジュアリー
センチュリーはSUVモデルに加え、JMSで初公開されたクーペコンセプトなどラインナップを拡充し、「トヨタの最高峰」としてロールス・ロイスやマイバッハが君臨する超高級ショーファーカー(運転手付きの車)市場の頂点を目指すことに。
なお、センチュリーのテーマは「One of One(唯一無二)」。
Image:Toyota
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レクサス:「ラグジュアリーの境界線」を押し広げる冒険
一方、レクサスの新しい役割は、「高級車の概念そのものの境界線」を押し広げること。
渡辺プレジデントは、「世界的に自動車の役割に対する認識、人々の価値観が変化している」と指摘し、レクサスがその多様なニーズに応える「冒険的」なブランドになると宣言し、その具体的な例としてJMSでは以下の前衛的なコンセプトカーが公開されています。
- 6輪ミニバンコンセプト(LSバッジ): 従来のセダン型LSとは一線を画し、運転手付きのショーファーカー用途を想定した、これまでにないラグジュアリーな移動空間を提案
- LSクーペSUVコンセプト: スポーツカーとSUVを融合させたような、型破りなデザインスタディ
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360度のモビリティ—。レクサスが描く未来のエコシステム
レクサスの変革は自動車の枠を超えた「モビリティ・エコシステム」の構築にまで及んでおり、最高ブランディング責任者(CBO)のサイモン・ハンフリーズ氏が示した「360度のモビリティ」には、以下の製品が含まれています。
- 電動航空機(Joby社との協業)
- 自律航行型カタマラン(双胴船)
ハンフリーズCBOは、「もはや道路に縛られない時代を予見しており、レクサスブランドの視野を広げる可能性は計り知れない」と述べていますが、レクサスは初代LSがドイツの高級セダン市場に挑戦したときのように、「高級車とは何か」という定義そのものを、EV時代、そして空や海へと広がるモビリティ時代に向け、再び挑戦的に問い直そうとしているのだとも捉えることが可能です。
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レクサスの成功は現代の自動車業界においては「奇跡にも近い」と捉えられることも多く、それはクルマという「物理的な製品」の品質が優れていたからだけではなく、「新しい価値観を追求し創造する」というレクサスの思想も大きく関係していたのだとも考えられ、ここが「高級になろうとしてそうなれなかった」多くのブランドとの明暗を分けたポイントなのかもしれませんね。
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参照:CarExpert














