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ポルシェが進めてきたEV戦略の落とし穴:中国の競争と柔軟性の欠如が生む危機。ポルシェは「EV化へのギャンブル」に負けたのか?

ポルシェ

| ポルシェのEVへの賭けは“早すぎた”のか? |

「柔軟に未来に対応したはず」の柔軟な戦略そのものに柔軟性が足りなかったという「皮肉」

ポルシェはテスラに続き、プレミアムブランドとして最も早くEV化に舵を切ったメーカーの一つであり、フル電動モデル「タイカン」は世界的に注目を集め、今後は「718」シリーズや3列SUVのEV化も進める計画「であった」ことが報じられています。

そしてこの計画は以前から「ギャンブル」であるとも目されており、その先進的すぎる戦略が今になって逆風に晒され、ポルシェは「賭けに負けた」という声が聞かれはじめているわけですね。

ポルシェの「ガソリン版のマカン、ケイマン/ボクスター廃止、後継モデルはEVへ」という戦略は危険な賭け?販売台数の1/3を占めるこれらをEVに切り替えるリスクとは
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【ポルシェの現状】販売不振と巨額赤字の危機

まずポルシェの現状を見てみると、ドイツ国内ではすでに1,900人の研究・製造職が削減され、さらに8,000人の雇用が危機に晒されているという報道も。

2025年の売上目標は約30億ドル(約2,200億円)引き下げられたということも報じられていますが、その原因は主に「3つ」だと分析されています。

  1. EV需要の伸び悩み(特に欧米)
  2. 中国市場での販売42%減(前年比)
  3. 柔軟性のない商品戦略
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【ポルシェの問題点1】柔軟性を欠いた商品構成

ポルシェは2030年までに80%の電動化(BEV)比率を目指すと明言してきましたが、アナリストのファビオ・ヘルシャー氏(Warburg Research)はこれを「硬直的」と批判。

PHEV(プラグインハイブリッド)を軽視したポルシェの戦略は、電動化が失速した今、裏目に出たと断じています。

「BMWのようにPHEVや共有プラットフォームを活用すれば、市場の変化に柔軟に対応できたはず」

【ポルシェの問題点2】中国の驚異的EV競争

特にポルシェにとって厳しいのは中国市場。

2024年第1四半期の販売は前年比で42%減少となり、CEO自らが「中国市場撤退の可能性」に言及したことも記憶に新しく、中国ではシャオミ SU7ウルトラやBYD傘下のヤンワン U9などが1,000馬力級のパフォーマンスと高度なサスペンション技術、さらには優れたインフォテイメントシステムを手頃な価格で提供しており、これらの影響もあってポルシェの立ち位置が危うくなっているというのが現在の状況で、Gartnerのペドロ・パチェコ氏は以下のようにコメント。

「ポルシェ最大の問題は中国市場だ」

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【打開策】経営陣の刷新と方向転換はあるか?

ポルシェはすでに社内体制を見直し始めているとされ、VWグループ開発部門出身のミヒャエル・シュタイナー氏を執行役会の副会長に据え、財務・販売部門も2月に刷新済み(これまで表に出ていたルッツ・メシュケ氏の姿がまったく見えなくなったので、おそらくは更迭されたのだと思われる。このあたりVWグループの人事は容赦ない)。

今後はブランド力とモータースポーツの伝統を背景に、新世代EVの登場までの数年間をどう乗り切るかが最大の焦点だと見られていますが、当面の利益を稼ぐため、「ブランニューモデル」ではなく、既存の開発済みモデルをベースとし「モータースポーツのDNAを反映させた」「過去のヘリテージを視覚化した」限定モデルの大量投入を行うという話も聞かれ、しかしそれは近年の傾向を見る限り「ありうる」戦略なのかもしれません。

【まとめ】ポルシェの本質は“適応力”にあるか?

ポルシェはもともと、911のように時代に合わせて進化しながら本質を守ることで評価されてきたブランドで、EV化という挑戦も、もともとは持続可能性を掲げた未来志向の決断(これからやってくる未来への順応という判断)ではありましたが、この「柔軟に対応したはずの」戦略そのものに柔軟性を欠いていたというのは皮肉な話。

今まさにその「タイミング」と「柔軟性」の重要さが問われていますが、フルEV一辺倒からの軌道修正、PHEV戦略の再構築、中国市場との向き合い方──。

この数年の動きが、ポルシェの未来を大きく左右することは間違いありません。

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JUN

2013年より当ブログを運営中。 国産スポーツカー、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ等を乗り継ぎ現在に至ります。 単なる情報の記載にとどまらず、なにかしら自分の意見を添え、加えてクルマにまつわる関連情報(保険やメンテナンスなど)を提供するなど「カーライフを豊かにする」情報発信を心がけています。 いくつかのカーメディアにも寄稿中。

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