
| 【冒頭】日産、崖っぷちの再スタート |
かつて世界トップクラスの販売台数と技術力を誇った日産。
しかし2025年3月期には約6,700億円の純損失を計上し、来期の業績見通しすら出せない異常事態となっています。
この危機的状況を受け、新CEOイヴァン・エスピノーサ氏のもとで始動したのが全社的な改革プラン「Re:Nissan」。
しかしその内容は極めて大胆かつ苛烈であるとして大きな話題となっています。
【日産改革の柱1】人員2万人削減と工場閉鎖
まずは「Re:Nissan」の概要について触れてみると、以下のような徹底的な構造改革が見られ、「もはや生き残りをかけた断行」とも言ってよく、そうとうな出血を伴うものであることがわかります。
そして「合併や提携」という道を捨て、自社による再生を選んだという決意も伺えますね。
- 2024〜2027年度で約2万人の人員削減(正社員・契約社員含む)
- 17工場のうち7工場を閉鎖
- 九州のLFP(リン酸鉄)電池工場の建設計画を中止
開発業務の一部を停止し、3,000人をコスト削減専任へ再配置
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— Nissan Motor (@NissanMotor) April 24, 2025
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【日産改革の柱2】プラットフォームの半減と開発スピードの倍速化
日産は現在13の車両プラットフォームを運用していますが、これを2035年までに7へ削減予定。
さらに「部品点数の70%削減」も掲げており、固定費の圧縮を図る狙いですが、懸念されるのは「品質の低下」。
参考までに、国産車(トヨタ、日産、ホンダ)を使用して輸送業を営む知人の話によると、「日産車の寿命はトヨタ車の半分くらいで、一定の距離を走行してからのメンテナンス費用が桁違いに上昇する」。
つまり日産車は(実際に北米で問題となったように)日産タイマーが一定の走行距離で作動するのだとも考えられ、今後は今以上にそのタイマーの動作するタイミングが「早く」なるんじゃないかということですね。
- 開発リードタイムを現行の44ヶ月→37ヶ月へ短縮
- 将来的には30ヶ月以内での商品化を目指す
【日産の新型車戦略】ターゲットは市場ごとに最適化
Re:Nissanでは、「画一的なグローバル戦略」からの脱却も図られていますが、一部地域では中国製車両の輸入販売も検討されており、従来の日産では考えられない柔軟な動きが特徴。
これについてはルノーとどのようにリソースの配分と平準化を行ってゆくのかということが課題となりそうです。
地域 | 主な戦略内容 |
アメリカ | ハイブリッド強化+インフィニティ刷新 |
日本 | 既存ブランドの立て直し+新型スカイライン投入 |
中国 | NEV(新エネルギー車)推進+コスト競争力強化 |
ヨーロッパ | B/CセグメントSUVに集中 |
中東 | フルサイズSUVに注力、現地ニーズ最優先 |
メキシコなど | コスト重視のグローバル生産再編 |
【日産経営陣の言葉】「ボリューム依存から脱却する」
次にイヴァン・エスピノーサCEOが述べるのは以下の通り。
「量に依存しない収益体質へ。自己改革をこれまで以上の緊急性とスピードで進める必要がある。」
これは「規模拡大よりも収益性重視の転換」を意味し、トヨタやホンダとは異なる道を選ぶ可能性も出てくるわけですが、これまでの日産は「各セグメントごとに1台ないしは2台のみを投入し、コストを抑えることで安価に販売して数を稼ぐ」という方法を採用しています(コンパクトカーであればマーチ、ミニバンであればセレナ、SUVだとエクストレイル、という具合に)。
さらに、北米だと「最も安いクルマを提供するのは日産」という状況が随分前から当たり前となっていて(つまりヒョンデやキアよりも安価)、つまり北米では「安さで買われる」のが日産という一部の認識も。
We took our time designing it so you could do the same admiring it 😌 #NissanMurano pic.twitter.com/cqm2nojqNd
— Nissan (@NissanUSA) February 4, 2025
このスタイルがロールスロイスやベントレー、フェラーリのように「収益性重視」という方向性へと切り替わるということになりますが、正直なところこの新戦略は「相当に高いブランドバリューと、相当に高い商品力」がなければ実現できるものではなく、ぼくとしては「今回の発表の中で最も無理がある部分」であるとも捉えています。※多くの自動車メーカーがここを目指すが、成功した例は記憶にない。最新の挑戦はジャガーである
加えて、ブランド力や商品力を高めるための戦略、そして目標についても公表されておらず、今後の動向に注視せねばならないところでもありますね。
【今後の日産の注目ポイント】次期スカイラインやインフィニティに期待も
Re:Nissanの中で具体的に言及された新型車には以下のものがあり、特にスカイラインは日産復活の象徴となるかもしれませんが、これらをもってしても「数に頼らず収益を得られる構造」を実現できるに足るとは考えにくく、やはり続報を待ちたいところ。
- 次世代スカイライン
- CセグメントのグローバルSUV
- インフィニティの新型コンパクトSUV
【まとめ】Re:Nissanは“背水の陣”か、それとも新生の狼煙か?
日産はこれまでにも「日産リバイバルプラン(NRP)」や「日産ネクスト」など再建を繰り返してきましたが、いずれも結実せず、しかし今回は最も抜本的かつ即効性を求められる局面です。
もしこの計画が失敗すれば、日産というブランドそのものが消える可能性すらあると言っても過言ではなく、しかし、従来の常識やプライドを捨て、“選択と集中”による再構築が成功すれば、新しい日産像が見えてくる可能性も考えられ、文字通りの「正念場」ということになりそうですね。
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参照:NISSAN