
Image:Porsche
| 近年、ポルシェは「キャンプ」に対して情熱を見せる |
高まるアウトドアブームを背景に「新しい顧客層の獲得」を狙うものと思われる
この特許の要約
- ポルシェが「フロントトランク(フランク)を椅子に変える」新特許をドイツで公開
- 背もたれ&レッグレストが展開し、エアクッションで快適な“ラウンジモード”に
- (EVとしての)ライバルであるルシッド グラビティにも類似機能があるが、完成度はポルシェが上
- ただし現行のポルシェEVでは構造的にすぐには採用できない可能性
- フルサイズEVピックアップなら相性抜群?テールゲート文化との親和性も
ポルシェが公開した「フランク・ラウンジチェア」特許とは?
「ポルシェがフロントトランク=フランクを“ラウンジチェア”にする特許を出願した」として話題に。
EVならでは構造を活かし、多くのメーカーがフロントトランクを追加収納、さらにはガソリン車では考えられないような「クラーボックス」としての活用などを提案する中、ポルシェはその空間を“ラウンジチェア”に変えてしまうという革新的なアイデアを提示しています。
ここででは
- 特許の仕組み
- 既存の類似例(ルシッドなど)
- 実際に採用される可能性
- 他メーカーへの応用可能性
を見てみましょう。
なお、ポルシェは近年アウトドアに対して強い興味を示しており、911にすら装着できる「ルーフトップテント」のほか、様々なキャンプアイテムを発表しているほか、中国向けに「アウトドアっぽい」仕様のマカンを投入しており、今回の特許も(中国市場をはじめとする)キャンプブームに対応するためのものなのかもしれませんね。
Image:Porsche
■ 展開式のシート構造
まず、ドイツで公開されたポルシェの特許(WIPO経由)は非常にシンプルかつ合理的な内容でで、フランク底部に2つの可動パネルを配置し・・・。
- 後方ヒンジのパネル → 背もたれに変形
- 前方ヒンジのパネル → レッグレストに変形(バンパー保護も兼ねる)
という2段構造でシート形状を実現します。
■ エアクッション内蔵で“本物の椅子”に
硬いパネルのままでは座りにくい……という問題を解決するため、
- パネル内部にエアクッション(エアバッグ)を内蔵
- 使用時は空気で膨らませ、折りたたむ時は排気して薄く収納
という仕組みを採用し、これによって快適性と収納性を両立させています。
■ リクライニング調整も可能に
特許資料では、背もたれ・レッグレストの角度調整機能も示されており、単なる“簡易座席”ではなく“ラウンジチェア”として設計されており、EVのボディ構造を逆手に取った、非常にポルシェらしい発想です。
ルシッド グラビティの“フロンククッション”との比較
実は、このアイデア自体は完全な「ポルシェ独自のもの」ではなく、ルシッド(ルシード)は2026年発売予定の新型車「グラビティ」にて、「フランクを快適にする折りたたみクッション」を既に提供しています。
しかし完成度はポルシェ案が上
- ルシッド → 床の形状に合わせた薄いクッション
- ポルシェ → パネル展開+エアクッション+レッグレスト+調整機構
Image:Lucid
構造的にも快適性でも、ポルシェの方が“本格的な椅子”として成立している点が大きな違いだといえそうですが、このほか、EVではないもののロールス・ロイスがカリナンに対しラウンジチェアをオプション提供している例、そして中国車でも「後部荷室をチェアとして使用できる」クルマが存在していますね。
Image:Changan
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ただしポルシェEVには“すぐには採用できない”理由がある
上述の通り、この構造は非常に優れた特徴を持っているのですが、問題は「ポルシェの現行EVのフロント構造」。
■ マカンEV・カイエンEVは“深く開かない”
特許図で示されたような
- フロント開口が大きい
- バンパーまで大きく開く
という構造を持つポルシェのEVは現状存在せず、マカンEVもカイエンEVも ボンネット位置が高く、開口部が浅いため、足を前に投げ出す“ラウンジ姿勢”は難しいのが実際です。※画像はタイカン
Image:Porsche
さらに「現行のEVをフランクチェア形状に」改装すると車体強度が大きく下がる可能性もあり、つまり、この特許が採用されるとしても(フランクチェアを前提に設計された)次世代プラットフォーム以降のEVになる可能性が高い、と見られています。
むしろ相性が良いのはフルサイズ・ピックアップEV?
面白いことに、この“フランクチェア”と最も相性が良いのは、ポルシェではなくアメリカのフルサイズEVピックアップ。
- フォード F-150 ライトニング
- シボレー シルバラードEV
これらはフロントフード全体が大きく開く構造を持ち、元々フロンクへのアクセス性を重視しています。
さらに、
- テールゲートパーティ文化
- 車両の大柄なサイズ
- 車載電源による屋外エンタメとの親和性
を考えると、むしろピックアップのほうが “移動式ラウンジ”としては最適と言えるかもしれません。
よってGMやフォードがポルシェの特許技術を(ポルシェの特許を回避しつつ)取り入れる未来も十分に考えられ、もしかするとこのフランクチェアは「アウトドア系EVの常識」となるの可能性も見えてきます。
Image:Ford
結論 ― ポルシェの特許は“遊び心×合理性”の象徴
今回のポルシェの特許は、EVの構造的メリットを最大限に活かした「機能性と遊び心」の両立という点で非常に”ポルシェらしい”発想。
- 現行モデルへの採用は難しい
- しかし未来のEVでは実現可能
- 他メーカー(特にピックアップEV)との相性は高い
という点からも、今後の展開が注目されるアイデアだと言え、ポルシェが“走りだけでないEVの楽しさ”をどう広げていくのか、今後も目が離せない状況です。
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参照:CARBUZZ
















