
Image:Pirsche
| ポルシェはあらゆる方面において「記録」を目指す |
現時点、「世界で最も高いところを走ったクルマ」はポルシェ911である
ポルシェ911といえば、サーキットで最速を競うスポーツカーの代名詞。
しかしポルシェは2023年に「速さ」ではなく「高さ」に挑んでおり、チリのオホス・デル・サラード火山にて標高6,734m(最新データ)に到達することで自動車による世界最高高度記録を塗り替えるという偉業を達成しています。
現在、ドイツのポルシェ・ミュージアムでは、この歴史的偉業を成し遂げた2台のプロトタイプ「Edith(エディス)」と「Doris(ドリス)」を主役にした特別展示を開催中だといい、ここでは極限の環境でポルシェが何を証明したのか、そして市販車にフィードバックされる技術について考察してみたいと思います。
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ポルシェが911をポータルアクスル化して「世界最高高度記録」を更新。未だクルマが到達したことのない高みへと合成燃料を使用し到達する
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この記事の要約
- 世界記録の舞台:チリの火山にて、自動車の走行可能な世界最高標高6,734mを達成
- 2台の主役:初期型の「ドリス」と、360kgの軽量化を果たした最終形態「エディス」を展示
- 極限の環境:気温マイナス20度、酸素濃度が平地の半分という過酷な条件下での挑戦
- 未来への燃料:この記録はポルシェが注力する「eFuels(合成燃料)」によって成し遂げられる

Image:Porsche
極限に挑んだ「オフロード911」
ポルシェ・ミュージアムで開催されているこの特別展は「ただ車両を置いているだけ」ではなく、来場者は、エントランスからミュージアムの最高地点へと誘導される動線を通じ、遠征チームが経験した「高度の上昇」を疑似体験できるよう設計されているのだそう。
展示では、ポルシェのワークスドライバーであるロマン・デュマ氏がハンドルを握り、斜度40%という壁のような斜面に挑む様子が大迫力のグラフィックとともに紹介されているといい、そして今回の記録樹立に使用された現行の「992型 911 カレラ4S」をベースにしたプロトタイプです。

IImage:Porsche
究極の個体「Edith(エディス)」の特徴
最も進化した「エディス」には、市販車では考えられないようなカスタマイズが施されていて・・・。
- ポータルアクスル:最低地上高を350mmまで確保し、巨大な岩場を走破可能に
- 大幅な軽量化:プロジェクトマネージャーのイェンス・カイザー氏によれば「ベース車から約360kgもの減量を達成」
- ステア・バイ・ワイヤ:悪路でのキックバックを防ぎ、ドライバーの疲労を軽減
- eFuelsの採用:カーボンニュートラルな合成燃料を使用し、環境負荷を抑えつつ最高性能を発揮
スペック比較表
| 項目 | 911 カレラ4S (市販車) | Edith (記録樹立車) |
| ベースモデル | 911 Carrera 4S (992) | 同左 |
| 最低地上高 | 約120mm | 350mm (ポータルアクスル採用) |
| 重量 | 約1,600kg | 約1,240kg (360kg削減) |
| タイヤ | ロード用スポーツタイヤ | 巨大なオフロード専用タイヤ |
| 使用燃料 | ガソリン | eFuels (合成燃料) |
| 主な戦場 | アウトバーン・サーキット | 標高6,000m超の火山・岩場 |

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「911ダカール」への繋がり
この世界記録挑戦は(911ダカールの)プロモーションのためではなく、ポルシェには「極限状態で得た知見を量産車に活かす」という揺るぎない伝統があり、その伝統を新たなる形で実践したもの。
事実、このプロジェクトで培われたオフロード走行のノウハウは、限定モデルとして発売された「911ダカール」の開発にも多大な影響を与えているといい、「911はどこへでも行けるスポーツカーである」という、フェリー・ポルシェの言葉を文字通り証明した形となります。
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なぜ「合成燃料(eFuels)」だったのか?
今回の記録で特筆すべきは、化石燃料ではなくポルシェが開発を主導する「eFuels(合成燃料)」が使用された点です。
- カーボンニュートラルへの挑戦:空気中のCO2と水から作られるこの燃料は、既存の内燃機関をそのまま使いながら、実質的に排出ガスをゼロに近づけることが可能に
- 極限環境での信頼性:マイナス20度、超低酸素というエンジンの燃焼にとって最悪の条件下でも、eFuelsが問題なく機能することを世界に示す
- 「音」と「高揚感」の維持:電気自動車(EV)への移行が進む中、ポルシェはスポーツカーの魂である「エンジン音」を守るための現実的な解を提示した

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結論
ポルシェ911が成し遂げた標高6,734mという世界記録は、エンジニアリングの勝利であると同時に、内燃機関の未来を照らす希望そのもの。
ドイツ・シュトゥットガルトのポルシェ・ミュージアムでの特別展示は2026年6月28日までだそうですが、もし期間中に渡独の予定があるなら、それは雲の上まで登り詰めた「世界で最もタフな911」をその目で確かめる貴重なチャンスです。
この挑戦を知れば、街中で見かける911が、全く違った頼もしい姿に見えてくるのかもしれません。
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参照:Porsche











