
| マセラティの苦境と中国企業との提携報道が突如として登場 |
ここ最近では厳しい話ばかり報じられる、イタリアを象徴する高級車ブランド「マセラティ」。
最新の報道によると、親会社であるステランティスが中国の通信機器大手Huawei(ファーウェイ)および自動車メーカーのJAC(江淮汽車)とマセラティとの間による新型車の共同開発・生産に向けた協議を進めているとのことで、これは生き残りをかけた「大きな方向転換」ということになりそうです。
本記事のポイント
- 衝撃の提携案: Huaweiの技術、JACの生産能力、マセラティのデザインを統合
- 背景にある危機: 2024年の販売台数が前年比57%減という壊滅的な販売不振
- ブランド戦略の転換: 2018年に掲げた「100%イタリア製」の看板を下ろす可能性
- 今後の注目点: 5月21日の投資家向け説明会でステランティスの新CEOが語るビジョン

詳細:なぜマセラティは「中国の技術」を必要としているのか?
6年前、マセラティは「すべての新モデルをイタリアで開発・設計・製造する」と宣言し、野心的な電動化計画を打ち出しています。
しかしその戦略は実を結ばず、結果として販売台数は激減しているというのが現状ですが、今回、中国メディア『CnEVPost』などが報じた内容によると、マセラティは自社単独での電動化を断念し、中国のハイテク技術を取り入れる方向で調整している、とのこと。
そしてこの報道によれば、このパートナーシップは以下のような役割分担になるとされています。
- JAC(江淮汽車): 研究開発(R&D)の提供および、実際の車両生産を担当
- Huawei(ファーウェイ): 車両の核となる「コア・テクノロジー(車載OS、自動運転技術など)」を提供
- マセラティ: ブランド名および車両デザインを担当

つまることろマセラティはこのプロジェクトにおいては「デザインを行い名前を貸す」「バッジエンジニアリングを行う」ということになりますが、さらに驚くべきことにこの車両は、中国国内では高級ブランド「Maextro(マエストロ)」として販売され、中国国外では「マセラティ」ブランドとして展開される計画なのだそう。※この棲み分けは両者の「取り決め」によるものだとは思われるが、同時に中国では「マセラティのブランド名がもはや販売を有利に進めることができるものではない」ということを意味している
深刻な販売不振と市場での位置付け
これはちょっと驚きのニュースではあるものの、マセラティ、および親会社のステランティスにとって「現状維持はもはや不可能な段階」にも達しており、ある意味では中国ブランドとの提携が「唯一の突破口」なのかもしれません。※あるいは現状の販売台数のまま会社を維持できる体制へと変革を行うか
なお、過去数年の販売データを見るとブランドの存続自体が危ぶまれる状況が浮き彫りになっていることがわかるかと思います。
マセラティの世界販売台数の推移
| 年 | 販売台数(概算) | 備考 |
| 2017年 | 49,000台 | ブランド史上最高のピーク |
| 2023年 | 26,600台 | 衰退の兆し |
| 2024年 | 11,300台 | 前年比57%減の壊滅的数字 |
| 2025年 | 11,127台 | 低空飛行が続く |
かつて4.9万台を誇った販売力はわずか数年で4分の1近くまで落ち込んでおり、ライバルと差別化できる商品ラインナップを構築できなかったこと、富裕層向けの電動化戦略がターゲット層に響かなかったこと、そして中国製EVの台頭による競争激化が主な要因だと見られています。
提携の鍵を握る「Maextro(マエストロ)」とは?
今回の提携先として名前が挙がっている「Maextro(マエストロ)」は中国市場における超高級セグメントのEVブランドで・・・。
- Maextro S800: 1,000万円を超える価格設定ながら、すでに累計生産1万台を突破
- 技術的特徴: 純粋なバッテリーEVだけでなく、レンジエクステンダー(発電用エンジン搭載EV)モデルもラインナップ

マセラティはこのMaextroのプラットフォームを活用することで開発コストを劇的に抑えつつ、遅れていたEVシフトを加速させる狙いがあるものと見られます。
ただ、たとえこのプロジェクトが実現したとしてもそれが「成功するかどうか」はまた別問題であり、これによってマセラティが危機を脱することができるかどうかについては判断ができかねる状況です。※既存ラインアップが継続されるのか、あるいは廃止とともにブランドが一新されるのか、「イタリアの宝石」として輝きを取り戻すのか、もしくは「中国の先進技術を纏った新しいラグジュアリー」へと変貌を遂げるのか、その行方は本当にわからない
結論:ブランドのプライドか、企業の存続か
「イタリアの魂」を売りにしてきたマセラティにとって、中国企業のプラットフォームを採用することは古くからのファンにとって受け入れがたい決断かもしれません。

しかし現在の冷え切った販売数字を見る限り、ステランティスに残された選択肢は多くはなく、ここまで来るとジャガーのように「過去をリセットするくらい」の決断でなければ未来はないのかも。
なお、マセラティは5月21日に投資家向け説明会(インベスター・デー)を開催する予定ではありますが、ここでなんらかの再生計画が発表されるものと見られており、アントニオ・フィローザCEOの発言には注目が集まるところです。
欧州の自動車メーカーはもはやフロントランナーではない
近年、欧州の高級車メーカーが中国企業のプラットフォームを採用する事例(フォルクスワーゲンと小鵬汽車、アウディとSAICなど)が増加していますが、これはソフトウェア開発やバッテリー技術において、中国企業がすでに世界のフロントランナーであるという現実を象徴しています。

マセラティがもしHuaweiのOS(HarmonyOSなど)を採用すれば、車内のデジタル体験が劇的に向上する可能性を秘めており、しかし欧米市場での「中国通信機器排除」の動き、そして追加関税の問題がこの提携の大きな障壁となるという懸念も無視できません。
いずれにしても「メリット」「デメリット」双方が存在するのが今回の話であり、そしてデメリットに比較すると「それを上回る確実なメリット」があるようには思われず、様々な議論を呼ぶことは間違いないものと思われます。
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参照:CarNewsChina, CnEVPost











