
| 環境そしてBMWの実情を鑑みるならば、暫くの間「Z4後継」は期待できないであろう |
Z4の消滅はそのまま「BMWのラインアップからの2シーター消滅」を意味する
自動車の歴史において「駆けぬける歓び」を体現し続けてきたBMW。
そのラインナップの中において、Z4は唯一「純粋に運転の快楽だけ」を追求して生まれた2シーター・オープンロードスターではありますが、ついに後継モデルの計画がないまま公式にその歴史に幕を閉じることとなっています。
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BMWのスローガン「駆け抜ける歓び」は55年も前から使用されていた!どのように変遷をたどり、どう決まったのかが明らかに
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2024年に待望のマニュアルトランスミッション(MT)仕様を追加したことで一時的に販売台数を盛り返したものの、時代の大きな潮流である「SUVシフト」と「電動化への投資」を前にしてニッチなスポーツカーが生き残ることが叶わず、ここで今回の生産終了に関する重要トピックをチェックしてみましょう。

この記事の要約
- Z4の歴史が完全終了: 2025年末での終了予定をMT追加による「13.1%の販売上昇」でわずかに延命したものの、ついに公式に引退が決定。後継車の開発計画はなし
- 2シーター・ピュアスポーツの絶滅: M2やM4は継続販売されるものの、これらは「乗用車ベース」であり、純粋な2シーター・専用設計のオープンモデルはBMWから姿を消すことに
- スポーツカー市場全体の冷え込み: 生活コストの上昇により「趣味の2台持ち」が困難に。絶対王者であるマツダ・ロードスター(MX-5)すら2026年は前年比10%減と大苦戦する中での苦渋の決断
「真のスポーツカー」の定義とは:
通勤や荷物の積載、直線だけの速さではなく、「心身が震えるような運転のエンターテインメント」を最優先に設計された車。歴史的には、妥協のない「2人乗り(2シーター)」のパッケージングがその絶対条件とされています。

MT復活の奇跡も届かず。販売現場のリアルと市場の冷徹な現実
BMW Z4の生産終了というニュースは、多くのピュアリスト(純粋主義者)にとって受け入れがたい現実ではありますが、ビジネスの観点から見れば、BMWの判断は冷徹かつ合理的ともいえるもの。
2024年、BMWはクルマ好きへの“ラブレター”として、3.0リッター直列6気筒モデルに待望の6速MT(Handschalter Package)を(米国市場へと)投入し、エンスージアストたちがディーラーへ駆け込んだ結果、前年比で13.1%もの販売増を記録することに成功していますが、どれだけ絶賛されようとも「年間で約2,000台」というパイの小ささでは将来の安全基準や環境規制に対応するための莫大な次世代開発コストを回収することは不可能であり、結果として今回の「生産終了」という結末を迎えることとなっています。
現在、世界のスポーツカー市場は二極化が進んでいて、実用性も兼ね備えた4人乗りのフォード・マスタングが2026年に前年比40%増と絶好調であるのに対し、純粋な2シーターだと(高い人気を誇ってきた)マツダ・ロードスター(MX-5)でさえ2026年現在は前年同期比で10%の販売減となっており、生活コストの高騰が続く現代において、「1台ですべてをこなせる多目的性」を持たない純粋なスポーツカーは、富裕層のガレージに引きこもる「週末のヒーロー」にならざるを得ないのが現状だというわけですね。
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廃止も囁かれたBMW Z4に救世主?米市場にMTを投入したところ下降傾向にあった販売が13%も伸び、MT比率が65%に達する
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概要と性能:Z3から紡がれた「ロングノーズ・ショートデッキ」の美学と走りの黄金比
BMWのモダン・ロードスターの歴史は、1990年代初頭に登場し映画『007 ゴールデンアイ』でも活躍した「Z3」から始まっており(Z1はその特殊性からここでは除外)、そのDNAを色濃く受け継いだZ4は、伝統的なスポーツカーの黄金比である「ロングノーズ・ショートデッキ(長いボンネットと短いリア)」の美しいプロポーションを3世代にわたって守り抜いたことでも知られます。

Image:BMW
BMW Z4(最終型G29スペック)一覧
| スペック詳細 | |
| エンジン形式 | 2.0L 直列4気筒 ターボ / 3.0L 直列6気筒 ツインパワーターボ |
| トランスミッション | 8速オートマチック(AT) / 6速マニュアル(MT・直6のみ) |
| 最高出力 | 255 hp 〜 382 hp |
| 最大トルク | 295 lb-ft 〜 369 lb-ft (約400〜500 Nm) |
| 0-60マイル(約96km/h)加速 | 4.2秒 〜 5.2秒 |
| 駆動方式 | 後輪駆動(FR) |
初代(E85型)の自然吸気(NA)エンジンがもたらしたターボラグのない鋭いスロットルレスポンス。そしてフロントエンジンでありながら前後50:50の完璧な重量配分が生み出す、限界を超えてもコントロールしやすい素直なハンドリング。
歴代Z4はたとえサーキットの聖地ニュルブルクリンクでなくても、自宅近くの何気ないワインディングロードを最高のステージへと変えるマジックを持っていたのではないかと思います(ぼくはZ3に乗っていただけに、その後継であるZ4のライフが尽きるのはちょっと悲しい)。
特に最終型となったG29世代の直6・MTモデルは、現代のハイパフォーマンスカーが「肥大化する電子制御やハイブリッド化」によって失いつつある、機械と人間が1対1で対話するような「ピュアな一体感」を維持し続けた貴重な存在でもあり、今回の「生産終了」は自動車業界における「大きな損失」というべきものなのかもしれません。

Image:BMW
競合比較と市場での位置付け:ライバル不在の寂しさと、BMWが失ったもの
Z4が去った今、米国市場におけるBMWのオープンモデルの選択肢は「4シリーズ・コンバーチブル」のみとなり、しかし4シリーズは重くラグジュアリーな4座オープンという性格を持っていて、Z4のような「俊敏な身のこなし」や「タイトなコックピット感」を求める層を満足させることができないのもまた事実。
市場を見渡しても、メルセデス・ベンツSLK(SLC)、アウディTTロードスターも消滅し、ポルシェ「718ボクスター/ケイマン」も次世代での電動化(BEV化あるいはハイブリッド化)へと舵を切っていて、つまるところ内燃機関(ICE)を搭載した手の届くプレミアムFRロードスターというジャンルそのものが完全に崩壊しつつあるのが現状です。
重いバッテリーや全輪駆動(xDrive)のスタビリティコントロールに頼らず、軽量な車体と後輪駆動、そして自らの手でシフトを操る喜び。Z4の終焉は、BMWの「駆けぬける歓び」の歴史において、もっとも純粋だった一章が閉じられたことを意味します。
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メルセデス・ベンツSLKは今年で誕生30周年。電動メタルトップの先駆者が今「ネオクラシック」として再注目、ボクにとっても記憶に残るクルマである
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今後の展望:次世代プラットフォーム「Neue Klasse」への移行とスポーツカーの未来
しかし、これでBMWのスポーツカーが完全に絶滅したわけではなく、BMWは現在、次世代の完全電動プラットフォーム「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」の開発に総力を挙げています。
将来的にはこの次世代EV基盤を用いた2シーター・スポーツカーが誕生する可能性はゼロではなく、ただし、それは(登場したとしても)ガソリンの匂いも、直6の咆哮も、シフトノブをカチッと叩き込む快感もない100%電気で走る未来の乗り物となり、自動車業界の過渡期において、コストの合わない「ガソリンエンジンを積むスポーツカー」と「エレクトリックスポーツカー」を並行して開発する余裕は、いかに(スポーツカー、そしてガソリンエンジンとMTを愛する)BMWといえども存在しないというわけですね。
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もしBMWが新型Z4を作るなら?「ノイエ・クラッセ」デザインで蘇るロードスターの姿がカッコいい【レンダリング】
Image:Luca Serafini | Z4存続の危機と新たな可能性 | BMWはこのデザインでZ4を復活させるべきである BMWのオープントップスポーツ「Z4」は、近い将来ラインアップから消える ...
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Image:BMW
結論
馬力や加速の数字、あるいは実用性というモノサシだけで測れば、Z4は非効率なクルマだったのかもしれません。
しかし、ルーフを開け放ち、伝統のシルキーシックスの調べを聴きながら、3ペダルを駆使してコーナーを駆け抜ける瞬間の高揚感は、どんな最新のSUVでも代替できない芸術的な体験であったと認識しています。
ハイテクなATやマイルドハイブリッドが当たり前となり、クルマが「移動のためのデバイス」「走るスマートフォン」へと進化していく2026年現在。電子制御に頼らず、ドライバーの五感に訴えかけ続けたBMW Z4は、伝統的なFRロードスターの「輝かしい絶唱(スワンソング)」として、そしてモダン・クラシックの傑作として歴史に刻まれることになるのは間違いなく、新車でこの純粋性を手に入れられる時代が終わってしまったことは寂しい限りではありますが、Z4が残した足跡は、これからの電動化時代にも必ず活かされることになるであろうと信じています。
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参照:BMW











