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| 歴史的EV「ルーチェ」へ寄せられる、大物コレクターの本音 |
自動車界の大物が放った「美学と多目的性」への違和感
フェラーリが世界に解き放ったブランド史上初の100%電気自動車(EV)『ルーチェ(Luce)』。
1,000馬力を超える圧倒的なスペックと、アップルの元チーフ・デザイナーとして知られるジョニー・アイブ氏のクリエイティブ集団「LoveFrom」が参画した革新的なスタイリングは世界中で大きな議論を巻き起こし続けています。
そんな中、アメリカの人気自動車番組『ジェイ・レノズ・ガレージ』のホストであり、世界屈指の自動車コレクターでもあるジェイ・レノ氏が、このルーチェに対する極めてシンプルで的確な見解を示し、再び注目を集めることに。
ここでは、ジェイ・レノ氏が著名なフェラーリ・アンバサダーであるデビッド・リー氏との対談で語った言葉の真意や、ルーチェが抱える「フェラーリらしさ」のジレンマ、そしてこのクルマの驚異的なスペックについて再確認してみましょう。

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記事の要点(Discover向けサマリー)
- レノ氏の直球評価: ジェイ・レノはフェラーリ初のEV「ルーチェ」について、「EVには見えるが、フェラーリには見えない」と表現。決して醜い車ではないとしつつも、ブランドのアイデンティティとの乖離を指摘
- 「多目的」への違和感: 5人乗りでハッチバックを備えたパッケージングに対し、「フェラーリはスポーツカーであるべき。何でもできるステーションワゴンのようなクルマは好みではない」と一蹴
- 開発には長い歳月: 対談相手のデビッド・リー氏は、「ルーチェの開発は現在のEV市場の冷え込みに合わせたものではなく、約7年前から綿密に計画されていたもの」とメーカー側の視点を補足
- 異次元のEVスペック: 4基のモーターを搭載し、システム合計1,050馬力を発揮。0-100km/h加速は2.5秒、価格は640,000ドル(約1億円)からという Maranello(マラネロ)の最高峰技術が結集
「EVには見えるが、フェラーリではない」ジェイ・レノが突いた核心
ジェイ・レノ氏は自動車に対して独自の深い審美眼を持つことでも知られ、およそ「カーマニアが欲しがるであろう」クルマのほとんどを自身のガレージに収めていおることでも知られます。
その一方、「フェラーリのクルマは好きだが、フェラーリの販売方法に馴染めない」としてフェラーリを購入しない(珍しい)コレクターとしても有名な人物です。
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そして今回の動画にてジェイ・レノ氏と言葉をかわしているのが高名なフェラーリ・アンバサダーであり起業家のデビッド・リー(David Lee)氏ですが、同氏はフェラーリの「ビッグ5」を唯一「ロッソとジャッロで」集めた人物であり、フェラーリからも公式に特集が組まれた人物でもありますね。
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そして彼との対談において、ジェイ・レノ氏はルーチェについて以下のように語ることに。
「ルーチェは電気自動車のようには見えるが、どうしてもフェラーリには見えない。ただ、これが魅力のない(醜い)車だと言っているわけではないんだ」
ジェイ・レノ氏が違和感を覚えているのは、そのデザインが従来のフェラーリが放っていた「ひと目で脳裏に焼き付くような官能的なスポーツカーのオーラ」とは異なり、どこか未来的でクリーンな、いわば「ハイテクガジェット的」な美学で構築されている点。
彼はこれを、かつてシボレー・コルベットが伝統の丸型テールライトを廃止した際に、往年のファンが一斉に「これはコルベットじゃない!」と拒絶反応を示した歴史的なエピソードに例えていて、さらにジェイ・レノ氏の批判は「車の目的(コンセプト)」そのものにも及ぶことに。
「フェラーリは純粋なスポーツカーだ。そしてステーションワゴンはステーションワゴンだ。半分スポーツカーでありながら、サーフボードも積めるステーションワゴンのようなクルマ……私は、一つの車があれもこれもと多くの役割をこなそうとするのが好きではない。クルマは一つの目的に特化しているべきだ」
この言葉に対し、フェラーリの内情にも詳しいデビッド・リー氏はメーカーを擁護するようにこう付け加えています。
「1台の車を開発し、生産にこぎつけるには何年もの歳月がかかります。だから、自動車メーカーは『今、市場で起きていること(EV需要の減速など)』にすぐさま急対応できるわけではありません。このルーチェの計画が始まったのも、おそらく今から7年ほど前(2019年頃)のことだったはずです」

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フェラーリ ルーチェ:車種概要、性能・デザイン・スペックなどの特徴
フェラーリ・ルーチェは、これまでの同ブランドのどの系譜にも属さない、全く新しいパッケージングを採用したフラッグシップEVです。
- エクステリアと構造: 4ドア、そしてフェラーリ史上初となる「5人乗り(5シーター)」を採用。リアには実用的なリフトゲート(ハッチバック)を備えており、SUVの『プロサングエ』よりも全高は低いものの、スペース効率を最大化したキャビンフォワード(客室を前寄りに配置する)なシルエットが特徴
- デザインの挑戦: ジョニー・アイブとマーク・ニューソン率いる高名なデザイン集団「LoveFrom」が参画。極限までシャットライン(パネルの継ぎ目)を減らした滑らかなボディは、空力性能においてフェラーリ史上「最も空気抵抗が少ないロードカー」に仕上がっている
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フェラーリ・ルーチェ(Luce)主要スペック
- パワートレイン: 独立型永久磁石同期電気モーター × 4基(各輪に1基配置、強力なリアバイアス駆動)
- システム最高出力: 1,050 hp (システム合計最高出力)
- 0-100 km/h 加速: 2.5 秒
- 0-200 km/h 加速: 6.8 秒
- 最高速度: 310 km/h 以上
- バッテリー容量: 122 kWh (シャシーの構造材を兼ねる構造用バッテリー)
- 駆動レンジ(航続距離): 500 km 以上(WLTP基準)
- 充電アーキテクチャ: 800Vシステム、最大350kWのDC急速充電に対応
- 車両重量: 2,260 kg
- ベース価格: 7623万円(税込み、日本国内価格)
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現代の自動車トレンド的観点から考えると、この「フェラーリ・ルーチェ」を巡る議論の本質は、パワートレインの電動化だけでなく、「デザインの主導権がどこにあるか」という点に集約されているかのように思います。
① 「エモーショナル」から「インテリジェント・ミニマリズム」へ
従来のフェラーリは、咆哮を上げるエンジン(V8やV12)を包み込むために、うねるような有機的でフェミニンなラインでデザインされていましたが、これは自社デザイン部門や往年のピニンファリーナが得意とした手法です。
しかし、ルーチェに採用されたのはジョニー・アイブらが得意とする「iPhone」や「Apple製プロダクト」に通じる、隙のない緻密なミニマリズム(引き算の美学)であり・・・。
- フロントのダックビル(アヒルのくちばし)風のフローティングノーズ
- 完璧に計算された極小のパネル隙間
- アルミニウムの塊から削り出されたダッシュボード構造

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一部のカーデザイナーやコアなファンの間では、「物理的なクオリティは驚異的だが、フェラーリ特有の『狂気や情熱(エボカティブな魅力)』が削ぎ落とされ、オーバーインテリジェント(理詰めに寄りすぎている)だ」という声が上がっているわけですね。
ただ、フェラーリはこれまでの経験から「ファンが泣いて喜ぶような」フェラーリらしいデザインを実現することもできたはずで(主導権はフェラーリにあり、LoveFromではない)、しかしルーチェがこのデザインを持つということは、フェラーリは「初の電気自動車につき、フェラーリらしいデザインを意図的に採用しなかった」ということに。※ヴィジョン・グランツーリスモ、あるいはF76のようなデザインも採用できたはずである
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② 求められる「1台万能」というラグジュアリーの罠
ジェイ・レノ氏が指摘した「何でもできるステーションワゴン」という批判は、現在の超富裕層向けマーケティングのジレンマを突くもので、ポルシェが『タイカン』でEVスポーツのジャンルを確立したように、フェラーリも単に2シーターのスポーツEVを作るのではなく、「5人が乗れて荷物も積める、日常に溶け込む超高級インテリジェントモビリティ」としての役割をルーチェに与えています。
しかしこれが、ジェイ・レノ氏のように「フェラーリには実用性ではなく、スーパーへの買い物など無視した圧倒的な不便さと速さ(フォーカス)を求める」という純粋主義者との間で大きな認識のズレを生む原因となっていることは間違いなく、これについはぼくもある意味で同意しており、フェラーリはこのギャップを調整するためになんらかの対策を取らなければならないのかもしれません(もちろんフェラーリは事前にこの乖離を認識していたものと思われ、しかしそれでもルーチェをこの姿で投入したということは、明らかに”挑戦”を行うという意思表示である。そしてその意志が消費者にうまく伝わっておらず誤解されている)。
ルーチェはフェラーリの未来を切り拓く存在か、それとも迷走か
今回の「EVに見えるが、フェラーリには見えない」という言葉は、決して悪意のある批判ではなく、一人の偉大なクルマ好きが覚えた「アイコンに対する戸惑い」を率直に代弁したものだと考えられます。
4つのモーターで1,050馬力を叩き出し、0-100km/h加速2.5秒で駆け抜けるルーチェの動力性能は、紛れもなく世界最高峰のハイパフォーマー。
しかしぼくらが長年「跳ね馬」に求めてきたものは、スペックの数字だけでなく、エンジンが奏でる音楽、そしてどこか浮世離れした美しいプロポーションであるのもまた事実。
アップルの遺伝子を持つLoveFromのクリーンなミニマリズム、そしてマラネロの熱い走りの血統が融合したこの意欲作が新しい世代の富裕層に「これこそが未来のラグジュアリーだ」と受け入れられるのか、あるいはレノ氏の言うように、万能さを求めた結果としてブランドの純度が薄まってしまうのか。
デビッド・リー氏が言う通り、7年もの歳月をかけて生み出されたこの挑戦的なEVの真価は2026年末から始まる実際のデリバリーの後、公道を走る姿を見て初めて歴史が証明することになるのかもしれません。
なお、「EVに見えるが、フェラーリには見えない」という率直な意見は、ある意味でフェラーリが期待していたものである可能性も高く、というのもルーチェは「これまでのフェラーリの顧客層以外に訴えかけるため」に作ったクルマだと考えられるからで、それには「今まで通りのフェラーリ、そしていかにもガソリン車っぽい、そしてレーシングカーのようなデザイン」では意味がないから。
よって「EVに見えるが、フェラーリには見えない」という言葉は、フェラーリからすると「ニヤリ」なのかもしれませんね。
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