
Image:BMW
| 伝統の「M」が電動化で到達する、未だ誰も見ぬドライビングプレジャーの領域 |
ビッグネームの「完全電動化」に注目が集まる
スポーツセダンの絶対王者として40年近くにわたり君臨し続けているBMW「M3」。
その次世代モデルがいよいよ100%電気自動車(BEV)として産声を上げようとしており、BMWはル・マンでの正式発表に先駆け、同週末に決勝を迎える「ル・マン24時間レース」のパドックにおいて次世代EVセダンの最高峰、通称「iM3」を予感させるコンセプトモデルのティーザー動画を公開することに。
「EVのスポーツカーなんて、重くて退屈なのではないか」――そんな世界中のエンスージアストの不安に対し、BMW M部門が出した回答は非常に明確で、「エレクトリックモーターだからこそ、ガソリン車では絶対に不可能だった『物理法則を書き換えるハンドリング』が可能になる」。
ここでは、ル・マンの現場から発せられた最新情報、そしてニュルブルクリンクでの開発ドキュメンタリーから判明した新型M3の概要に触れてみたいと思います。
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記事の要点
- ル・マンでの電撃テーィザー: BMWが伝統の「ル・マン24時間レース」のパドック内特設ファンゾーンにて、次世代の100%電気自動車(BEV)セダンの最高峰「iM3(仮称)」を示唆するコンセプトモデルをガラスケース内に展示
- 驚異の4モーター独立制御: 各ホイールに1基ずつ、計4基の電動モーターと独立したギアボックスを配置。これまでにない超高精度なトルクベクタリングを実現
- 「アンダーステア/オーバーステアを消し去る」異次元の走り: ニュルブルクリンクで約8,000kmにおよぶ過酷なテストを敢行。コーナーで「外に膨らむ」ことなく、車体が磁石のようにイン側へ引き込まれる驚異の旋回性能
- ガソリン版M3(次世代G84)との共存: EV化を悲しむピュア内燃機関ファンに向け、現行の直6ツインターボを熟成させた次世代のガソリン版M3も開発中。電動とガソリンが同格のフラッグシップとして並び立つ
ル・マンのパドックに現れた謎のガラスケースとニュルで鍛え上げられた4つの心臓
現在、ル・マン24時間レースのサーキット内に設置されたBMWの特設ファンゾーンには、ガラス扉のついた巨大なコンテナが鎮座しており、その中に新型「iM3」のプロトタイプ、あるいはそれに極めて近いサーキット仕様のコンセプトカーが格納されていることが目撃され、ネット上で大きな話題となっています。
そのスタイリングは、すでに発表されている次世代EVセダン「ノイエ・クラッセ(Neue Klasse)」のフロントフェイスを踏襲しつつ、フェンダーは圧倒的にワイドに広げられ、四角く変更されたLEDデイタイムランニングライトが凄みを利かせていることが報告され、それらは今回公開されたティーザー動画と「完全一致」。
さらに、サイドミラーには現行の「Mミラー」のどれとも異なる、まるで本物のレーシングカーのようなシャープな空力ミラーが装着されていることもスクープされており、このモデルがただのEVではないことを雄弁に物語っています。
BMWが公開したいくつかの開発ドキュメンタリーによると、この車両はすでに聖地ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェ(北コース)にて、4,970マイル(約8,000km)を超える「拷問」のような過酷な全開テストを完了しているとされ、最大の特徴は4輪のそれぞれに独立したモーターと個別のギアボックスを配した「クアッドモーター(4モーター)システム」の採用で・・・。
「新しい電動化技術は、車両運動力学の限界をさらに押し広げる。コーナーの立ち上がりで、どのホイールが最も効率的に路面へパワーを伝えられるかを瞬時に計算し、タイヤのグリップ限界(スリップ領域)のギリギリを攻めることができる」
これにより、ドライバーはクリッピングポイントを通過するよりも遥か手前から迷わずアクセルペダルを床まで踏み込むことが可能になり、従来のFRや一般的な4WDのように「アンダーステアで外に膨らむ」ことも、「オーバーステアで破綻する」こともなく、4つの車輪が路面を掴んで車体をコーナーの奥へと「引き込み、そして押し出す」という、ガソリン車では絶対に真似できない異次元のコーナリングフォースを発揮するというわけですね。
新型BMW M3:車種概要
新型iM3はBMWが次の100年を見据えて開発したEV専用プラットフォーム「ノイエ・クラッセ」をベースとした初のハイパフォーマンス・本格Mモデルとなり、その概要は以下の通り。
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新型BMW M3(コンセプト)想定スペック表
| 項目 | 次世代電動Mセダン(iM3 / 開発コード名:ZA0想定) |
| パワートレイン | クアッドモーター(4モーター)独自開発駆動システム |
| 最高出力 | 1,000 hp ~ 1,340 hp(想定) |
| シャシー制御 | 各輪独立ギアボックス内蔵、統合型ビークルダイナミクスシステム |
| デザインのベース | 次世代EVセダン「ノイエ・クラッセ(Neue Klasse)」 |
| 主な特徴 | ワイドトレッド化、レーシングスペック空力ミラー、角型LEDライト |
| テスト実績 | ニュルブルクリンク北コースにて、8,000km以上の耐久・全開走行テストを実施 |
| 市場での位置付け | テスラ「Model S Plaid」やポルシェ「タイカン」に対するBMWの決定打 |
■ 市場でのポジショニング:ポルシェ、テスラへの宣戦布告。そして「ガソリン版」との奇跡の共存
新型M3(あるいはiM3)の最大出力は最大で1,340馬力(1メガワット)に達するとも言われており、これはテスラ・モデルSプラッドやポルシェ・タイカン・ターボGTといった、現在EVハイパフォーマンス界の頂点に立つライバルたちを完全に射程圏内に収めるスペックです。
そしてBMWの真の凄みは「既存の顧客を切り捨てない」戦略にあり、BMWはこの圧倒的な性能を持つ電気自動車のiM3をデビューさせる一方で、ガソリンエンジンを愛するピュアなファンのために現行の3.0L直列6気筒ツインターボ「S58」エンジンを次世代の排ガス規制に適合するようにリファインした、次世代のガソリン版M3(開発コード:G84)も並行して開発していることを明かしています。
しかも驚くべきことに「1000馬力の電動M3と、550馬力のガソリンM3は、ほぼ同等のプライスタグ(価格帯)で販売される」とも報じられ、これによりユーザーは、性能やステータスの上下ではなく、「EVの異次元の加速と未来感」か「直6ツインターボの咆哮と伝統のドライビング」かを、純粋な好みだけで選べるようになるというわけですね。
なぜBMWはEVの「1,000馬力」を単なる直線番長にしないのか?
現在の自動車トレンドを分析すると、EVハイパフォーマンスカーにおける最大の課題は「直線が速いだけのクルマはすぐに飽きられる」という点にあり・・・。
① 「0-100km/h加速」のコモディティ化(平凡化)
エレクトリックモーターは(回転数に依存せず)最初から最大トルクを発生できるため、今やファミリー向けのEVや中国製の新興EVであっても、3秒台の0-100km/h加速力を簡単に手に入れられるようになっており、結果として「直線が速い」ことのプレミアム価値は急速に薄れているというのが現在地。
BMWが今回のドキュメンタリーで、加速力ではなく「ニュルブルクリンクでの8,000kmにおよぶコーナリングの調律」をアピールしたのは、彼らが「Mのバッジを付ける以上、直線が速いだけの退屈なクルマは絶対に作らない」という強い意志の現れと受け取ることが可能です。

② 4モーターだからできる「究極の重量配分とレスポンス」
EVの弱点はバッテリーによる「車重の重さ」であることは周知の事実ですが、しかし各輪に配置された4つのモーターを1000分の1秒単位で制御できれば、その重さを「強力なグリップ」へと反転させることが可能です。
内燃機関採用車では、どれだけ高度な4WD(xDriveなど)を使っても、エンジンの回転がシャフトを通じて路面に伝わるまでに物理的な遅延(タイムラグ)が発生し、しかしダイレクトにタイヤを回すクアッドモーターであれば、ドライバーの脳の命令とほぼ同時にミリ単位での理想的な駆動配分が可能となり、これこそが、次世代の「駆けぬける歓び」のコアテクノロジーだと説明されています。
電動化を「進化の武器」に変えたBMWの勝利。次世代M3はスポーツセダンの未来を照らす
多くの自動車メーカーがEVへの移行に苦戦し、その計画を後退させる中にあって、BMWは電動化という「ピンチ」をM3の走りを次の次元へと引き上げる最大の「チャンス」へと昇華させてみせようというのが現在の状況。
確かに直6ツインターボの乾いたエキゾーストノートが聴けないのは寂しいかもしれませが、ル・マンのパドックでベールを脱ぎかけたそのワイド&ローな戦闘的なシルエット、そしてニュルを「アンダーステア皆無」で駆け抜ける4モーターのテクノロジーを知れば、これが紛れもなく「本物のM」の血統を受け継ぐ挑戦者であると理解することが可能です。
そして何より、ガソリンエンジンのM3も並行して生き残るという選択肢を用意してくれたBMWの懐の深さには世界中のファンが拍手を送るはずで、今週末のル・マン24時間レースにおいて、この怪物がどんな姿でぼくらの前に現れるのか。そして正式発表でどんな驚きをもたらしてくれるのか。スポーツセダンの未来を大きく変える歴史的な瞬間を、固唾をのんで見守りたいと思います。
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参照:BMW











