GQにて、トヨタ社長、豊田章男氏とヴォルフガング・ポルシェ氏 (ポルシェAG監査役会会長)との対談が掲載に。
トヨタとポルシェは縁が深く、古くは90年代に苦境に陥ったポルシェがトヨタ式「カイゼン」を取り入れて復活したことに始まり、昨年のル・マンではディフェンディングチャンピオンでもあるポルシェをトヨタが終始リード。
ただ、そのあっけない幕切れに関し、ポルシェは非常に心を痛めたようで、レースに二週間後に豊田章男氏あてにポルシェCEO、オリバー・ブルーメ氏とヴォルフガング・ポルシェ氏(ポルシェAG監査役会会長)とが連名で「トヨタの健闘を称える手紙」を送っていたそうです。
ライバルに塩を贈る行為に感動した豊田章男氏の要望によって今回ポルシェ氏との対談が実現したとのことですが、この組み合わせはかなりな驚きではありますね。
なお豊田章男氏、ヴォルフガング・ポルシェ氏ともに「創業者の三代目」という共通項もあり、「豊田の名字を持つということ(一生ぼくら平民にはわからない)」「ポルシェの名字を持つということ」や、それぞれの生い立ち、車作りの姿勢など通常のインタビューでは見ることができない、この二人同士だからこそ出てきた話題が盛り沢山。
2016年のル・マンにおいて、最後のほうでポルシェは「どうやってもトヨタに勝てない」と考え、豊田章男社長は「勝利に備えお祝いのコメントを考えていた」ということも語られています。
なお下記がポルシェから豊田章男氏に送られた手紙。
そこにはトヨタが強力なライバルであることに対する敬意、今後もいい戦いを続けたい、という意図が記されています。
ポルシェは(そのカタいイメージに反し)過去にもホンダがNSXが開発用に911GT3を購入した際にも「こっそり」エンジンにメッセージを書き込んだり、アウディがル・マンを撤退する際にも復帰を期待するメッセージを動画で公開したり、となかなか面白いことをする会社のようですね。
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最後のわずか3分で、それまでずっと1位を走っていたトヨタTS050がストップし、そのおかげで2位を走っていたポルシェ919ハイブリッドが優勝となった今年のル・マン。
もちろん24時間も全力で走りながら1位との差わずか数分とのころまで詰めていたポルシェの努力あってこその結果ですが、「え?」という結果ではありましたね。
トヨタがここまでやるとは正直驚きで、残り10分を切った時点で「これはもうトヨタの勝利だろう」を完全に確信。
ぼくはポルシェ党なのでポルシェに優勝して欲しいのはヤマヤマですが、同時に日本人でもありますので、ここまで来たらトヨタに勝って欲しいと考えていたのが正直なところです。
残り6分あたりで中嶋一貴選手の無線から「ノーパワー」が連発されトラブルが発生したことが確実となり、残り3分を切ったところで完全にマシンがストップ。
トヨタとしては18年のル・マン参戦においてようやく優勝に王手というところだったために「天国から地獄」状態となり、ほぼ確実だった優勝を逃したことで「2位でも喜べない」雰囲気だったかも、と思います。
一方ポルシェは最速ラップを出しながらもトヨタTS050に敵わず、最後まで望みを捨てなかった(残り30分を切ってもペースを上げ続け、安定走行に入るトヨタとの差を縮めていた)わけですが、勝利を思いがけない形で手に入れたということになります。
こちらも手放しでは喜べない状況かもしれず、トヨタは「試合に負けたが勝負に勝った」と考えても良いかもしれません。